2017年2月1日、THE ORAL CIGARETTESが3枚目のアルバム『UNOFFICIAL』をリリースする。
前アルバム『FIXION』発売からのこの約1年間、BLUE ENCOUNT・THE BAWDIESらを迎えた対バンツアーや地元・奈良での初ホールワンマン、夏に「DIP-BAP」秋に「5150」と建て続けてのシングルリリースなどストイックすぎるほどの活動量と成長を重ね、着実かつ確実に強靭になった彼らの今と変化を、『UNOFFICIAL』から紐解いていく。
TEXT_Misaki Nonaka
――今回ミーティア初登場ということで、まずはTHE ORAL CIGARETTESについてのお話を。2010年の結成以来、大規模オーディションでのグランプリ獲得や度重なる山中さんの入院、コンスタントなリリースやライブの規模拡大など、すごく駆け足で進んできたバンドだという印象があります。
山中拓也(Vo/Gt) : 周りにも「ペース良く登りつめてきたね」ってよく言われるんですけど、俺らからしたら全くそんなことなくて。THE ORAL CIGSRRETESって、ずっとコンプレックスを抱えてきたバンドなんです。デビューするってなったときも、同世代のバンドが先に売れていたりしたので。ただ、そのコンプレックスに引っ張られず、俺らには俺らのやり方で急がず地道に、いつかひっくり返していこうぜって決めていて。
あきらかにあきら(Ba) : 僕ら昔から“BKW(番狂わせ)”の精神を掲げていて。オーラルの音楽で世間にも音楽シーンにも番狂わせを起こしていきたいなと。
山中拓也 : 焦って無理矢理ライブの動員を増やすより、お世話になったライブハウスや先輩に恩返しするとか、まだ行けていない地方に行くとか。そうやって自分たちのペースでやってきたからこそ、すごく濃い時間を過ごせているんじゃないかと思っています。周りに言われるがままやっていたら、こんなに濃密な日々は送れなかっただろうなって思うし。
――そんな日々の積み重ねは、作品にも確実に反映されているのではないかと。昨年1月にリリースされた2ndアルバム『FIXION』は、オーラルの世界観やアイロニックな面が際立つ作品でしたが、今作『UNOFFICIAL』は、世界観やサウンドの深化を感じさせる一方で、より枠外のオーディエンスにも歩み寄る度量のようなものも感じました。
山中拓也 : 自分たちでも1枚目、2枚目と比べて成長したなあと感じています。
実は去年、初めて生みの苦しみというものを経験したんです。2ndアルバム『FIXION』以降、ひとつのシーンに組み込まれていることがコンプレックスで、ここから抜け出すためにはどうしたらいいのかって考えていて。そんななかで「DIP-BAP」っていう自分のルーツを落とし込んだ曲を8月にリリースしたんですけど、次になにを提示したらいいのかわからなくなっちゃって。「俺は何を表現したいんだろう」とか「お客さんはいい意味で裏切られることを期待してくれているんじゃないか」とか、すごく悩んで。
――スランプ、ですね。
山中拓也 : なんにも浮かばないし、音楽を聴いて気を紛らわそうとしても全然カッコいいと思えない。で、それまでこんな経験をしたことがなかったから、この心境を詞にだけでもしておこうかなと思って。そうやって書いたものは、すごく弱くてリアルな内容のものだったんですけど、昔から直接的なものとかリアルな心境を書くのは恥ずかしいというかニガテで。でも、去年声が出なくなったときもファンのみんなはそれを受け入れてくれたから、今の自分の弱さも音楽にすることで強さに変えたいという想いで曲を作りました。それが、11月にリリースした「5150」です。この曲をライブでやったときに、お客さんから「ロックシーンの一部としてじゃなくオーラルが好きなんだから、自由にやって」っていう意思をすごく感じて。その瞬間、詰まってた蛇口をひねったような感覚でしたね。
あきらかにあきら : うん、「5150」が出来たことでタガが外れた感覚があった。
山中拓也 : そこから今回のアルバムのコンセプトもハッキリして、曲もどんどん出来ていって。もっと好きにやっていこうっていうテンションに切り替えられたし、もっと追求したい音楽だとか伝えたいことを思う存分やっていいんだって思えましたね。
――受け手を信頼して弱さをさらけ出したことが突破口につながったんですね。今作『UNOFFICIAL』のリリースに寄せて、拓也さんはブログで「オーラルは個人の価値観、絶対的評価を以ってそれぞれのリスナーとの関係値を築きたい。より内面的(UNOFFICIAL)な言葉で綴った歌とメロディーで勝負します」と語っていらっしゃいますね。
山中拓也 : 僕、すごく感情の起伏が激しいんですけど、それをリアルに出せたらもっと良くなるんじゃないかと思えたし、自分を押し殺したりなんかしなくていいんだよっていうのを伝えたくて。俺は自分のコンプレックスを越えて前に進めたけど、君はどうする?って。そういうことを訴えられる人と人とのやりとりができるバンドになりたいというのは、ずっと思っています。
――個人的に『UNOFFICIAL』というアルバムには、セラピー的な要素というか、あらゆる角度から聴き手の心に触れようとしてくるというか……自問のキッカケを与えて最後にちゃんと手を差しのべてくれる作品だなという印象を抱きました。
山中拓也 : ああ…僕、歌詞書いているとき自分のセラピーをしているような感覚なんですよ。デビュー当時なんかは、自分の暗さとか憎悪とか妬みとかを全部ステージで吐き出して強がっていたんですけど、日が経つにつれてそれはただの自分勝手やなって思うようになったんですよね。もっといろんな感情を吸収したうえで繰り出す一撃だったり優しさのある言葉のほうが強いんだなって。
――その極地が、今作のラストを飾る「LOVE」なのかもしれませんね。
あきらかにあきら : …どツンデレやな(笑)。愛おしいとかいう話を最近よくするんですよ。胸キュンですよ。
山中拓也 : (笑)光を見せてあげることが出来ない奴が尖ってワーワー喚いてるのってただのガキだし、そこに説得力は皆無だと思うんです。それは、いろんな人と接したり応援してくれている人と一緒にステージを作ったりしていくうちに気づけたことで。僕らは、すごく人にも恵まれているなと思いますね。そういうのも成長が出来た要因のひとつかもしれないです。
――その言葉の説得力をより強固なものにしているのが、サウンドなのではないかと思います。音作りはどのように進められたのでしょうか?
山中拓也 : 僕がアコギで作った曲を元にして、各パート任せています。ドラムだったら雅哉がデータで持ってきてくれるんですけど、僕が一番歌っていて気持ちいいところを考えて作ってくれたりしますね。録りながら変えたりもするし。ときどき、ミスったけどそれがすごくよくて「今のもう一回やってみる?」みたいな(笑)。
あきらかにあきら : ミスの再現な(笑)。オーラルの楽曲は拓也の歌声としげのリードギターが主軸なので、そこを生かせるアレンジにこだわっています。曲によってアレンジのエピソードが違っていて、何が起こるかわからないなかでやってたりしますね。
山中拓也 : そういう化学反応みたいなものも楽しみながら、表現したい世界観のためには何が必要で何が必要でないのかをバランスを見ながら作っている感覚ですね。
――そうやって緻密に練り上げられた楽曲の世界観をライブで体感できるのが楽しみです。3月21日からはワンマンツアー「UNOFFICIAL BRUNCH TOUR 2017」「UNOFFICIAL DINING TOUR 2017」が始まりますね。
山中拓也 : 出来たアルバムがアルバムなので、甘え抜きのツアーにしたいなと。絶対にごまかしが効かないんで。今はもう勢いだけじゃどうにもならない粋に達しているし、ひとつ上のステージに立った僕らのショーを見せたいですね。「オーラル、こんなこともできるようになったんだね」って母親のような目線で見守ってほしいです(笑)。
――そして6月16日には、日本武道館での公演も決定しています。バンドとして大きなターニングポイントになるかと思いますが、決断は決して簡単ではなかったそうですね。
山中拓也 : 6月の武道館を決めるより先に「武道館やらない?」っていうお話をもらったんです。でも、まだ行けてないところもあるし、やり残したこともたくさんあって。こんな状態でやってもいいものにはならないだろうし流れでやったと思われるのもイヤだったので「絶対的な自信が持てるようになってからやりたいです」ってお断りしました。
中西雅哉(Dr) : 周りのバンドとも武道館の話をすることがあるんですけど、やっぱり与えられるのではなく自分でたどり着くべき場所だし、用意されたステージに立ったことで後悔しているっていうような話を聞いたりもしていて。そこに立つまでにはバンドそれぞれにストーリーがありますけど、僕らは地に足つけて泥クサくやってきたからこそ、そのスタンスで武道館に立つことに意味があるし、お客さんも一段飛ばしで行くことを期待しているわけじゃないだろうと。行くべきタイミングをしっかり見定めることが大事だと思ったんですよね。
山中拓也 : その後の対バンツアーで地方をまわって今まで行ったことのないところにも待っていてくれる人がこんなにいるんだってことがわかったし、そこから愛のようなものを感じるようになったんです。「俺らに付いてきてくれるなら、とんでもないところに連れてってやるよ」っていう気持ちも芽生えたし、お世話になっているライブハウスの人たちも背中を押してくれて。ファンの人たちとの信頼もちゃんと出来あがっている。その確信が持てたので、改めて6月の武道館を自分たちで取りにいきました。
――行くべきタイミングは、今だったんですね。どんな景色を見せてくれるのか、期待が高まります。昨今、ライブの動画配信なども当たり前なものになりましたが、その反面ライブそのものの価値も上がっていると言われています。オーラルはライブバンドとして定評がありますが、現在のライブシーンというものをどう見ていますか?
あきらかにあきら : うーん……昔よりライブが重宝される時代になっているというのも感じるし、そのなかで、もしかしたらライブがアミューズメント的な感覚のものになってきているのかなっていう気はしますね。みんなで同じ空間で同じ音を共有しながら同じ動きをするのが楽しかったりするというか。フェスにしたって音楽を聴きにいくというよりレジャー的な側面のほうが楽しまれている面もあるんじゃないかなって。
――ライブそのものより参加する側の感覚が変化しているのではないか、と。
山中拓也 : あきらはそれ、どう思ってるん?
あきらかにあきら : そう聞かれると難しいけど……たとえばフェスで一度ライブを観ただけで「オーラル観たことあるよ、あーだこーだ」って言われるのはムカつくんですよね。ワンマンにも来たことないくせにって思う自分もいるし。でもその反面、それがその人の音楽との付き合い方だったり人との共有の仕方だったりするかもしれない。自分も一回しか観てない映画をどうのこうの言ったりとかするし(笑)。だから、僕らと僕らのお客さんとの関係だけは、周りのバンドからうらやましがられるようなものにしたいなって。
山中拓也 : ……すばらしい回答や。大人になったなあ(笑)。
あきらかにあきら : (笑)もちろん動画であとあとまで映像がアーカイブで残るっていうのも楽しみ方のひとつだし、いろんなかたちで音楽が残っていくのはいいことだし必要なことだと思うんです。けど、ステージに立つ側にとってライブを続ける理由は、今を生きていることの証明というか。だから一生ライブはしていたいですね。
【初ワンマン終了!】
今年初ワンマン、終了しました!
お越し頂いたみなさん、タワーレコードさん、ありがとうございました!!2/1リリースのNew AL「UNOFFICIAL」をよろしくお願いします!! pic.twitter.com/51EHpouKPW
— THE ORAL CIGARETTES (@oral_official) 2017年1月20日
(初ワンマン後のツイート)
山中拓也 : 動画配信に関して言えば、ライブには確実に敵わないと思うけど、映像は映像で芸術作品としてすばらしいものだと思うんですよ。自分たちの映像にしたって後から見返して「このとき俺こんなに目が潤んでたんだ」とか、映像じゃなきゃ見えないこともあったりするし。なので、一概に動画配信がイヤとかそういうことはないですけど、そこにちゃんとこだわりを乗せてやりたいなと思っています。
――では、最後に。ミーティアでは毎回「運命の出会いとは?」という質問をしています。みなさんにとっての運命の出会い、今ここにいるために必要だったことって何でしたか?
あきらかにあきら : 僕は、雅哉の加入ですね。前ドラムが抜けて雅哉が入ってくれることになって、そこから拓也が人に甘えていいんだっていう感覚を覚えたんですよね。僕らにとってお兄ちゃんみたいな存在の雅哉が入ってくれたことで役割分担もハッキリして、やるべきことが見えてきたというか。このバランスでこれからも持ちつ持たれつ楽しみながらやっていけたらと思いますね。
中西雅哉 : 俺にとっての運命の出会いは、THE ORAL CIGARETTESとの出会いですね。前にいたバンドが解散して、サポートで入って、今の事務所のオーディションを受けるタイミングで正式加入して。だけど、覚悟が決まらないというか何かずっとモヤモヤしていたんです。あるとき、前のバンドのボーカルから「雅哉もがんばってるから、俺も一人で歌がんばるわ」って電話がかかってきて。振り返ってみれば、俺もそいつもそれぞれ頑張る道を見つけたあの瞬間に全てが廻りだしたような気がしますね。
鈴木重伸(Gt) : 僕は、今事務所でついてくれているチーフマネージャーさんとの出会いですね。入った当時「お前らはZepp止まりじゃなくて武道館くらいやれよ」って言われたことがあったんですよ。そのときは、まだワンマンすらしたことなかったんですけど。それで、ちょうど昨日思い出話をしていたら、実は彼自身もZeppでイベントを取り仕切ったことすらしたことなかったし完全に未知数のなかでふっかけてきてはって(笑)。「当時ああやってふっかけたけど、まさか武道館が現実になるとはね!」って。まあでも、なんにも知らない僕らにいろいろ教えてくれたチーフマネージャーの存在は大きかったなと思います。調子乗るんで本人いる前では絶対言わないですけど(笑)。
あきらかにあきら : ふふふっ。キュンときた。ぐっときたわ。
山中拓也 : (笑)最後、きれいに締めますよ。なにひとつ欠けちゃいけなかったんです。全部、全部必要だった。それは喉のポリープのこともそうだし、本当に全部。どんな困難がふりかかってきてもそれは運命だし、僕らに与えられた試練なんだろうなって思えるんです。頑張っていればちゃんと見てくれているし、ちゃんと進むべき道を示してくれるはずだから。自分たちさえブレずにがんばっていれば、これから先も必然的に道は開けていくものだと思っています。
<最新リリース情報>
◎2017.2.1 リリース
New Album「UNOFFICIAL」
初回盤:¥3,000(tax out)
通常盤:¥2,500(tax out)
収録曲:
1.リコリス
2.CATCH ME
3.悪戯ショータイム
4.5150
5.WARWARWAR
6.エンドロール
7.DIP-BAP
8.Shala La
9.不透明な雪化粧
10.LOVE
<初回盤DVD内容>
2016年11月22日に行われたZepp Tokyoでの「THE ORAL CIGARETTES唇ワンマン2016」ライブ&ツアードキュメンタリーを収録(約90分収録)
<ライブ情報>
■ THE ORAL CIGARETTES唇ワンマンツアー UNOFFICIAL BRUNCH TOUR 2017
3月21日(火) 大阪 BIGCAT
3月22日(水) 愛知 名古屋ダイアモンドホール
3月28日(火) 東京 赤坂BLITZ
チケット代:前売 4,500円(税込・ドリンク代別途必要)
チケット一般発売日:3月04日(土)
■ THE ORAL CIGARETTES唇ワンマンツアー UNOFFICIAL DINING TOUR 2017
4月6日(木)岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
4月8日(土)高松 festhalle
4月9日(日)高知 CARAVAN SARAY
4月11日(火)札幌 PENNY LANE 24
4月12日(水)札幌 PENNY LANE 24
4月16日(日)仙台PIT
4月23日(日)新潟 LOTS
4月27日(木)福岡 DRUM LOGOS
4月28日(金)福岡 DRUM LOGOS
4月30日(日)広島 CLUB QUATTRO
5月4日(木・祝)Zepp Nagoya
5月12日(金)大阪 Zepp Osaka Bayside
チケット代:前売 4,000円(税込・ドリンク代別途必要)
チケット発売中
<UNOFFICIAL DINING TOUR 2017追加公演>
6月16日(金)東京 日本武道館
開場17:30 開演 18:30
全席指定4800円(税別)
一般発売日:2017年04月01日(土)
<INFORMATION>
THE ORAL CIGARETTES オフィシャルHP
THE ORAL CIGARETTES オフィシャルTWITTER
公式LINEアカウント https://line.me/ti/p/%40oral_official
SHARE
Written by