台湾では昔はライブのチケットはCDの販促物
つまりチケットはタダだった。
――寺尾さんにお聞きするんですが、台湾のバンドはどんな活動の仕方をしてるんですか?日本との違いでもいいんですけど。
寺尾 : そんなに違わないと思うんですけどね。サークルでバンドを始める人も多いだろうし。ライブハウスに出て、そこで活動を続けていくわけなんですけど、レーベルとか会社の規模とかシステムがまたちょっと日本とは違うので、音楽を職業として続けていける人の人数も日本よりは少ないのかなと。なので、ある程度、成功するとか、自分で食っていく道を見つけるのがちょっと日本より難しい気がします。
――事務所が給料あげて活動できるようにっていうのはあるけど?
寺尾 : あるけど少ない。だから多分、続ける人も少ない。30代以上のミュージシャンとか特に。バンドは解散したりすることが多いんですけど、そういう業界の環境がちょっとまだ整ってないから、サバイブしにくいのかなと。売れてるバンドは別として。
――そういう環境の中で宇宙人の皆さんはどういう活動の仕方をしてきたんですか?
ファンキュー : 一言でいうとラッキーだったと思う。最初の頃はこんなに長く続くとは思ってなくて。ファンが支えてくれてることはすごく重要だし、周りを見ても一瞬売れてもすぐ解散に至ってしまう人たちも数多く見てきているので、そういう意味でも会社を含めた周りがバックアップしてくれてることに関してはラッキーだと思います。
――寺尾さんの言ってることもわかる?
シャオユー : 台湾の事情をすごく細かいところまで見てくれてるなと思います。今の新しいバンドたちは自分たちでマネージメントや管理をしていて、それはすごくいいことだと思うんだけど、やっぱりある程度のところまでいくと自分たちではできないところはある。資金やバックアップが必要になってくるので、それらを支えられるだけのものがあるかどうかがポイント。でも今はだいぶ良くなってきてるなとは思います。
――それはシーンが成熟してきたということ?
アークェ : オーディエンスもだいぶ変わったなと思います。ライブを聴きたいからお金を出してでも聴きたいって人が増えてる。
シャオユー : 自慢ではないんだけど、自分たちが今でもステージに立ち続けてることで、例えば若い子が新しい音楽を始めるときに、「ああ、これだけやり続けてる人がいるんだ」と思ってもらえるだけでも、みんなの心の支えのひとつになるんじゃないかと思っています。目標にされるバンドという意味ではなくて、あくまでもそこで音楽をやり続けてることの精神を見せたい。あともうひとつは、やっぱりバンドを続けられるのはメンバーがすごく大事ということ。バンドをやって音楽を極めれば、ってよく言うけれど、やっぱり人としての関係性だと思う。そこでお互いのケミストリーみたいなものがステージで見せられるから、もしかしたらそれが自分たちがファンに気に入ってもらえてるところなのかなと思う。
――なるほど。「お金を払ってわざわざライブに行くのはわりと最近のことなんですか?
寺尾 : 補足すると、CDが売れてた時代は、CDの販促でライブはタダだったんですよ。それは正規版のCDを売るためで、ライブはプロモーションという位置付けだったんですけど、それを長期に渡ってやっていたがために誰もチケットを買わなくなった。でもCDが廃れるのも台湾はすごく早かったので、そこから10年、15年ぐらいの巻き返しで今に至るという。
――今までCDを買ってた分、チケット代に回そうと?
寺尾 : そうですね。それが最初難しかったと思うんですよ。今までタダだったものをじゃあチケット代いくらのものを買ってくださいっていうのが。すごい難しいのをクリアしていったんだと思うんですけど。
――じゃあ行かないって人も多かった?
寺尾 : そうですね。最初は有料であることに抵抗あったでしょうね。
ファンキュー : まさに僕らはその頃を経験してる。自分たちでチケット売りをしなきゃいけない時代だったんです。その時はどうやってチケット売るかというと、まず最初にライブハウスと契約して、何枚のチケットを幾らかで先に自分たちで買い取らなきゃいけない。で、買い取ってからは1枚をいくらで売るかを自分たちで決めるんです。一番酷かった時は10枚しか売れなかった時もありました。赤字になることももちろんあったし。でもその時はきついとは思わなかった。他のみんなも同じ状況だったから。
<補足コラムその一>
宇宙人より若い世代で、よりインディペンデントなバンドも続々、ワールドワイドに活躍中。中でも去年のフジロックでも最高なライブを見せてくれたSunset Rollercoaster(落日飛車)は日本のシャムキャッツやミツメ、Yogee New Wavesと共演したり、高雄出身のマスロックバンドElephant Gym(大象體操)はTyler, The Creator主催の「Camp Flog Gnaw Carnival」に出演したり、日本のLITEとUSツアーを敢行。Youtubeはもちろん、サブスクリプションサービス登場以降の台湾発バンドのスタンスと言えそう。2バンドとも1月の来日公演はソールドアウトするほど。評価の高さを証明しました。
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