『Life In A Day』というドキュメンタリーが好きです。のっけから私事で申し訳ないのですが、少しだけ本作について触れさせてください。
『Life In A Day』は、「2010年7月24日に撮影されたビデオ」を世界中から募り、映像作品として編集されたドキュメンタリーです。作中、特別なことは何も起きません。古今東西のあらゆる人々が、ごく普通に生活をしている映像が淡々と続きます。母親を亡くした父子家庭、人生初の髭剃りにチャレンジする15歳、父親に自身がゲイであることを告白する青年、プロポーズに成功する男性、結婚50周年を迎える老夫婦…。それぞれの映像に繋がりは一切ありませんが、圧倒的にドラマチックなのです。YouTubeに字幕付きの本編がありますから、ぜひご覧ください。
Life In A Day
Tempalayの新作EP『5曲』に収録されている『New York City』のMVもそんな感じ。「全ての人に訪れる最高の瞬間」がコンセプトの、年末のニューヨークを舞台にしたドキュメンタリータッチの映像作品です。
Tempalay – 『New York City』
本作を担当したのは、ニューヨークを拠点に活動するクリエイティブチーム『Margo’s DeaD』。彼らは以前よりTempalayと親交があり、MVに限らない様々なアートディレクションを手がけています。ちなみに昨年リリースされた1stフルアルバム『from JAPAN』に収録されている『LOVE MY CAR』のMVも、Margo’s DeaDの作品です。
Tempalay – 『LOVE MY CAR』
サイケに輝く3ピースバンド、Tempalay。
さて、遅ればせながらここからが本題です。何せこれはTempalayの記事。
以下、プレスリリースより。
2014 年の結成から僅か1 年でFUJI ROCK FEESTIVAL’15「ROOKIE A GO-GO」出演、SXSW2016を含むUS ツアーを行い、国内でも多数の野外フェスに出演、ビーチ野外フェス『BEACH TOMATO NOODLES』を自ら開催し、デビューアルバム『from JAPAN』はその優れた作曲センスと脱力感のある独特のローファイ・サウンドが高い評価を得てロングセラーとなる等、自由奔放にシーンを駆け巡っては常に話題の
絶えない3 ピース・バンド(小原綾斗< Vo&Gt >、竹内祐也< Ba >、藤本夏樹< Dr > & サポートメンバーAmy)。
そして今年の2月27日、彼らのルーツとなったUnknown Mortal Orchestra(以下UMO)と待望の初共演を果たします。インタビューでも度々UMOからの影響には言及していますが、彼らの音楽を聴くとそれがよく分かります。
UMOはサイケデリックなサウンドを本域とするポップバンド。アメリカのポートランドに拠点を置いています。2015年にリリースした『Multi-Love』は各音楽メディアから軒並み高い評価を得て、NMEはその年の年間ベストアルバムにて本作を第10位に選んでいます。彼らは特定のジャンルに根ざしたスタンスは取らず、その時々でブラックミュージックの方法論を採用したり、それこそローファイな質感を目指すなど、様々なアプローチを試みています。Tempalayは、ここに可能性を感じたのでした。
Unknown Mortal Orchestra – 『Ffunny Ffrends』
Tempalay – 『Festival』
果てしなく無国籍。HIPHOPのビートにあらゆるジャンルの音楽を掛け合わせたような内容ですね。音の造形はもちろんですが、UMOとTempalayが類似している点はそれだけではないように思うのです。
『from JAPAN』から『5曲』へ
デビューアルバムは名前こそ『from JAPAN』ですが、その中身は実に異国情緒に富んでおりました。すぐ上の『Festival』も同アルバムに収録されています。そもそもバンドのビジュアルからして60年代のヒッピーっぽい。そういう、ある意味で自己矛盾しているようなところもUMOと重なります。
先ほど言及したUMOの『Multi-Love』では、共存することの難儀さが歌われているのに対し、前作の『II』のテーマは孤独でいることの苦悩でした。矛盾の内容こそ違いますが、Tempalayの表現の根幹にも、どこか自己乖離があるように思うのです。最新EPの『5曲』は、文字通り五曲入りの作品なのですけれども、一曲を除いてトラックの名前が全てアメリカの地名に由来します。その中で最も「乖離」が見られるのが『Austin Town』です。
Tempalay – 『Austin Town』
相変わらず国籍不明のサウンドに、暗示的な歌詞。そしてハリボテ感のあるMV。一見ふざけているようですが、この背後に大きな葛藤があるのではと思います。アメリカへの憧憬はあるけれども、本質的には決して辿り着けない境地。世代ゆえのシンパシーなのか、それとも「2017年」という時代の影響なのか、筆者にもこの感覚は何となく分かるような気がするのです。ポップカルチャーが豊かなアメリカの芝生は青く見えますよ。しかしながら、日本的な感覚からはどうしたって逃れられないのです。桜は散り際が一番美しいですものね。記事の冒頭にある『New York City』にも、自己乖離ゆえの切なさが発露しているように思われます。
UMOの来日公演を終えて
客観的に考えて、自分たちのルーツとなったバンドと同じステージに立つことは、控えめに言っても奇跡でしょう。安室奈美恵がジャネット・ジャクソンと共演するようなものです。UMOとの初対面以降、Tempalayの面々に新たなスイッチが入ったとしても何ら不思議ではありません。ルーツを再確認した彼らは、今後どのように進化してゆくのでしょうか。『5曲』もすこぶる良い出来ですが、個人的にはその先が更に楽しみです。
Tempalay『5曲』リリースパーティー&Jerry Paper
来日東京公演 2MAN SHOW
3/18(土) 東京 渋谷WWW
OPEN 18:00 / START 18:30
TICKET: adv.¥3,500 (D別) / door. ¥4,000 (D別)
LIVE: Tempalay / Jerry Paper(from LA) / オープニングアクト:ドミコ
チケット:
一般発売: 2/4(土)
チケットぴあ[P:322-641] / ローソンチケット[L:76334] / e+
Tempalay – 『5曲』
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