パノラマパナマタウンの魅力はHIPHOPのDNAを受け継いだバンドサウンドとコンセプトに沿った楽曲にある
2月13日に1stフルアルバム「情熱とユーモア」をリリースしたばかりのパノラマパナマタウン。マシンガンのように言葉を連ねる歌詞があるかと思えば、メロディーに振り切った楽曲もあったりと楽曲の振り幅が魅力です。楽曲制作の裏側やメンバーの人間性がうかがえる岩渕のnoteも必見。
パノラマパナマタウンとは?
パノラマパナマタウンは4ピースロックバンドです。メンバーはタノ アキヒコ(Ba)、田村夢希(Dr)、岩渕想太(Vo&Gt)、浪越康平(Gt)。平均年齢は24歳。
バンド名の由来は自分達の多様性を表す「パノラマ」という言葉とポップ過ぎて違和感を感じるほどの発語感を意識したもの。
メンバー全員が神戸大学の軽音楽部で、初ライブは本人たちが憧れとする神戸のライヴハウス「太陽と虎」でした。
2015年には、ロッキング・オンが主催する「RO69JACK」でグランプリを獲得し、日本最大級のフェス「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」へ初出演を果たしました。
過去にはTHE ORAL CIGARETTES、フレデリック、LAMP IN TERRENを輩出し、バンドの知名度を一気に知らしめたオーディション「MASH FIGHT!」でもグランプリを獲得しました。
2018年にONE OK ROCKも所属する事務所 A-Sketchからメジャーデビュー。
2019年2月13日には1st フルアルバム「情熱とユーモア」をリリース。ワンオクの taka が自身のインスタライブにて彼らのアルバムを紹介したことも話題になりました。
3月21日からはワンマンライブ「HUMAN PARTY」を開催中。5月18日の恵比寿 LIQUID ROOMで行われるファイナルまで、約2ヶ月で9ヶ所を回ります。
フロントマンのノート
パノラマパナマタウンの歌詞にはラップのような歌詞が多用されています。それはボーカルの岩渕が日本語ラップを嗜好にしているからです。その思考が最も伺えるのがフロントマン岩渕のnote。
そこに綴られているのは地元愛や、自身のルーツ、好きな映画、日記、岩渕の日々の記録から、楽曲のセルフライナーノーツや、メンバーへのインタビュー、さらにはライターの三宅正一まで様々です。
自分がどこから来てどこで育ったのかを語る姿にはHIP HOP直系のDNAを感じます。
文量や言葉のチョイスからは岩渕の「伝えたい」という不純物のない思いが伝わってきます。メッセージ性のある歌詞のルーツは彼の真面目な考え方にありました。ツアーが終わったらセトリの理由やテーマも教えてほしいですね。
名刺代わりの楽曲を5曲厳選
「ラプチャー」
アニメ十二大戦のオープニングテーマ。
早口で捲し立てることの多い彼らにとっては一味違ったシリアスな面を魅せた楽曲です。
漂うようなメロディーから旅人の孤独を感じます。ラプチャーとは歓喜という意味ですが、この曲は歓喜そのものではなく、歓喜に至るまでの過程を描いています。
繰り返される〈生きたまま 死ぬんじゃねえぞ〉のフレーズは哲学的で深く胸に刺さります。
「フカンショウ」
ド直球のロックナンバーです。
一言にまとめられた「フカンショウ」という言葉には多くの意味が込められています。
溢れんばかりの情報の洪水で感情は”不感”になり、簡単に触れ合える時代だからこそ”俯瞰”して斜に構える。
互いに”干渉”しあうようなSNSに〈ほっといてくれ!〉と言いたくなる瞬間は多くの人が経験しているのではないでしょうか。
SNSの普及と共に育った世代のパノラマパナマタウンがつくった曲だからこそリアリティーがあり、まさに時代を切り取った楽曲だといえます。
「 $UJI 」
人は誰かの評価や数字に流されやすい生き物ですが、ここは百聞は一見にしかず。
何百文字の紹介文よりも、3分56秒の動画の方が彼らの魅力が分かるはず。数字に掛けられたギミックが面白い反面、自分たちがどれだけ簡単な基準で物事を判断していたか痛いほど分かってしまう皮肉もあります。
「めちゃめちゃ生きてる」
タイトルは「めちゃ×2イケてるッ!」へのオマージュ。生きていることをバラエティー番組と掛け合わせる妙技は、この楽曲収録されてるアルバム名「情熱とユーモア」に通じるものを感じます。パノラマパナマタウンはコンセプトに沿ったアルバムをつくる名手です。アルバムを通して聴きたくなります。
「めちゃめちゃ生きてる」の作曲を担当した浪越はパキッと出てて具体性のあることがしたいと語っていました。
ディレイやリバーヴをかければ、幻想的で不思議な印象が残りますが、敢えて攻撃的なリフにすることで喜怒哀楽を持った生き物のようにも聴こえます。
「リバティーリバティー」
ライブで聴きたい曲。言葉を隙間なく詰め込むのではなくテンポの良いメロディーに振り切った「リバティーリバティー」からはバンドの振り幅が伺えます。(リズム、メロディーについて言及)
初期からあった「リバティーリバティー」と最新曲を聴いていると、パノラマパナマタウンは変容と進化の大きいバンドだなと感じました。
変わり続ける彼らはドキュメンタリー的で、まさに今、同じ時間軸を生きていることを痛感させられます。
ボーカル岩渕の考え方や真摯な姿勢と、楽器隊による曲の振り幅の広さがもたらす化学反応が次はどんな曲を生み出すのか、これから先もほっとけないバンドです。
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