10年のなかで繰り広げられた進化と、常に変わらないスタンスとは?
OKAMOTO’S 「10’S BEST」SPOT
OKAMOTO’Sが4月15日にリリースするベストアルバム「10’S BEST」は、「90’S TOKYO BOYS」「Dancing Boy」「BROTHER」などファン投票で選出された楽曲をシンプルに得票数順に並べた“Disc1”、新曲「Dance To Moonlight」、配信のみでCD化されてなかった人気曲、未発表音源などを収めた“Disc2”による2枚組。ジャケット写真はデビューアルバム「10’S」のオマージュで、10年前の撮影時に使用したオブジェが使用されている。さらに初回限定盤と完全生産限定盤には、2019年に行われた初の日本武道館公演の映像を収めたBlu-rayが付き、。完全生産限定盤はBlu-rayにメンバーのスペシャルインタビューも収録されているほか、限定LP「Early Years Collection」が同梱されるというのが、本作の概要。
“Disc1”の選曲・曲順がまるで最近のライブのセットリスト(つまり、いま現在メンバーが演奏したい曲)に限りなく近く、「こんなにファンと分かり合えているバンドっている?」だったり、新曲「Dance To Moonlight」がとにかく良くて、「OKAMOTO’Sは常に“いまが最高”で、10周年ベストでそれを証明できるってすごくない?」だったり、とにかくいろんなことを語りたくなるベストなのだが、本作に収められた全33曲を聴きながら筆者が思い出していたのは、2本のライブのことだった。
筆者が初めてOKAMOTO’Sのライブを観たのは、2009年11月、場所は渋谷duo music exchangeで、他にTHE COLLCETORS、トライセラトップス、黒猫チェルシー、Dry as dustが出演するイベントだった(客席には宮藤官九郎さんがいた)。この頃のOKAMOTO’Sは、初めての音源「Here are OKAMOTO’S」を半年前に出し、半年後の2010年5月にデビュー作「10’S」をリリースする挟間で、「まだ10代なのに、この音楽性と演奏力ってどういうこと?」と少しずつ話題を集めていた時期だった。この日演奏したのは確か、「Run Chicken Run」「Run Run Run」など、アルバム「10’S」の収録曲が中心。デビュー当初の十八番だった「恋をしようよ」(のカバー)もやっていた。ビックリしたのは、その演奏力。“ドラムが上手いキース・ムーン”と筆者が心のなかで勝手に命名したオカモトレイジ、明らかにブラックミュージックの影響を感じさせるハマ・オカモトのベース、ロックンロールとポップスの美味しいところを上手く混ぜ合わせたのオカモトコウキのギター、そして、若き日のミック・ジャガーを思い起こさせるアクションと濃密なエモーションを放ちまくるオカモトショウのボーカル。噂通り、10代とは思えないステージングと音楽性の深さ(渋さと言ってもいい)は10年以上経った現在も強く印象に残っているし、あの時点で既に彼らは“初期のOKAMOTO’S”を完成させていたのだと思う。
鳴り物入りでデビューした4人だが、首尾よく“いきなり大ブレイク”とはいかなかった。音楽に対する愛情と知識(彼らはレコード・コレクターとしても有名)、ルーツミュージックに根差した音楽性と演奏センスの高さはまちがいなかったが、コアな音楽ファンには強く支持されるものの、広いポピュラリティを得るまでには至らなかったのだ。10年代前半のバンドシーンは4つ打ちのダンサブルな楽曲が流行していことも、OKAMOTO’Sには逆風だったかもしれない。
OKAMOTO’S 『HAPPY BIRTHDAY』
OKAMOTO’S 『OKAMOTO’S「SEXY BODY」MUSIC VIDEO(YouTube ver.)』
さまざまな試行錯誤を繰り返し、徐々に音楽の幅を広げてきた彼らの転機になったのは、2014年。5周年イヤーとなったこの年は、岸田繁(くるり)プロデュースによる「HAPPY BRITHDATY」、いしわたり淳治が作詞に参加した「SEXY BODY」を含むアルバム「Let It V」、奥田民生、黒猫チェルシー、東京スカパラダイスオーケストラ、RIP SLYME、ROY(THE BAWDIES)が参加したコラボアルバム「VXV」。それまでのセルフプロデュース路線から一転、ジャンルを超えたアーティストと交流が生まれ、OKAMOTO’Sの創造性は一気に活性化。ルーツミュージックをポップに昇華する技術も向上、さらにメンバー個々のキャラクターが際立つようになったことで、知名度も徐々に上がっていった。
2016年には初の47都道府県ツアーを開催。翌2017年には中野サンプラザ公演を成功させるなど、ライブの規模も拡大(じつはOKAMOTO’Sは10年間、少しずつではあるが右肩上がりの観客動員を続けている)。その最初の集大成と呼ぶべきライブが、2019年6月27日の初の武道館公演「OKAMOTO’S 10th ANNIVERSARY LIVE “LAST BOY”」だった。10周年で初武道館となれば、“キャリアを網羅するセットリスト”が定石だが、OKAMOTO’Sは最新アルバム「BOY」の楽曲を中心にしたステージを展開。最新型のバンドのスタイルをしっかりと見せつけた。
この日のライブでもっとも印象的だったのは、本編の最後に披露された「Dancing Boy」。「この景色が見れないかもしれないという危機感もあったけど、10年間やってきたことは間違いじゃなかったなって思います」というオカモトショウのMCとともに演奏されたこの曲は、“BOY”の精神を持ち続け、自らの音楽を追求してきた4人の姿がそのまま映し出されていて、強く心を揺り動かされた。
OKAMOTO’S 『Dancing Boy』 MV
前述した通り「10’S BEST」には、10年のキャリアを刻むと同時に、現在進行形のバンドの姿勢もしっかりと投影されている。本作で初めてOKAMOTO’Sの音楽に触れるというリスナーはぜひ、ベスト盤を聴き込んだ後、オリジナルアルバムも(できればリリース順に)チェックしてほしい。そのときあなたは、中学生のときに組んだバンドが数多くのトライ&エラーを経て、自らの音楽を掴む取るまでの軌跡をリアルに感じ取ることができるはずだ。
〈リリース情報〉
2020.04.15 release
OKAMOTO’S 『10’S BEST』
■完全生産限定盤(2CD+BD+LP+豪華パッケージ)
BVCL-1070~1074 15,000円+税
■初回生産限定盤(2CD+Blu-ray)
BVCL-1075~1077 6,500円+税
■通常盤(2CD)
BVCL-1078~1079 4,200円+税
【CD Disc1】
「Fan‘s Selection」
01. 90’S TOKYO BOYS
02. Dancing Boy
03. BROTHER
04. 青い天国
05. NO MORE MUSIC
06. Beek
07. ROCKY
08. NEKO
09. Phantom(By Lipstick)
10. SEXY BODY
11. JOY JOY JOY
12. Border Line
13. ラブソング
14. Burning Love
15. マジメになったら涙が出るぜ
16. うまくやれ
17. なんかホーリー
【CD Disc2】
「Member’s Selection & Rare Tracks」
01. Dance To Moonlight
02. 新世界
03. ART(OBKR/Yaffle Remix) feat.Gottz,Tohji,Shurkn Pap
04. Regret
05. Turn Up
06. LOVE
07. Lagoon
08. Beautiful Days
09. Dance With You
10. HEADHUNT
11. チャンス
12. HAPPY BIRTHDAY
13. 恋のビート
14. サウンド・オブ・ミュージック
15. ミスターファンタジスタ
16. ヤバコウキ
【Blu-ray】※完全生産限定盤・初回生産限定盤付属
「OKAMOTO’S 10th ANNIVERSARY LIVE“LAST BOY”」
01. Dreaming Man
02. Hole
03. FOOL
04. NO MORE MUSIC
05. Higher
06. NEKO
07. ハーフムーン
08. Animals
09. 偶然
10. Phantom(By Lipstick)
11. NOTHING
12. マダラ
13. ART(FCO2811)
14. SAVE ME
15. HEADHUNT
16. BROTHER
17. ROCKY
18. Dancing Boy
[Encore]
01. DOOR
02. Beek
03. 90’S TOKYO BOYS
※特典映像:OKAMOTO’S SPECIAL MOVIE(完全生産限定盤のみに収録)
【LP】※完全生産限定盤のみ
「Early Years Collection」
[Side A]
01. Run Run Run
02. 笑って笑って・・・
03. 欲望を叫べ!!!!
04. マジメになったら涙が出るぜ
05. 青い天国
[Side B]
01. ラブソング
02. 共犯者
03. JOY JOY JOY
04. 告白
05. SEXY BODY
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