新元号「令和」と共に訪れた春
30年続いた「平成」が終わりを告げ、ついに幕を開けた新元号「令和」。自分が生きている時代の名前が変わる、なんてよくよく考えてみたらそう滅多に経験できるものではありませんね。さらにそれが季節のはじまり、春というのもとてもいい感じのような気がします。令和、ポジティブな時代になると良いですよね。
さて、この記事では遅ればせながら春の訪れを感じさせる曲をお届けしようと思います。ポジティブ一辺倒にならないところも春の特徴で、何となく色々なセンチメンタルな部分も見え隠れします。そんな春の曲、9選をお届け。
あいみょん 「ハルノヒ」
「映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~」の主題歌となった、あいみょんの「ハルノヒ」。ヒロシ目線で歌われた家族の歌ですが、その根源には出会いがあります。別れと出会いは紙一重とよく言われますが、春は両方ともイメージとして喚起できませんか。加えてこの曲はすこぶる日常的です。筆者個人は北千住駅には2・3回程度しか降りたことはないのですが、イメージが容易に浮かびやすい。もちろんここで重要なのはイメージの中の北千住駅が実物と同じかどうかではなく、文字通り“体験として想像できるか”なのです。あいみょんの歌詞はね、想像できるんですよ。ゆえに刺さりまくる。最後の一節で影という抽象的な部分を使うセンスよ。ぶっ刺さりまくる。
あいみょん – 「ハルノヒ」
ビッケブランカ 「ウララ」
2016年にアルバム『Slave of Love』でメジャーデビューして以降、着々と活躍の場を広げてゆくビッケブランカ。昨年11月にはセカンド・アルバム『wizard』がリリースされ、そのツアーが今年の頭に行われたわけですが、7つの会場のほとんどでチケットはソールドアウト。「ファビュラス」や「ウララ」に代表される“ポップに振り切った”楽曲は、まさしく職人的。「ウララ」ではまさしく春の訪れに対するワクワク感が歌われていますが、遺憾なくそれを煽ってきますよね。
ビッケブランカ -「ウララ」
「GREENROOM FESTIVAL’19」や「SUMMER SONIC 2019」への出演も決定しており、海外勢とも渡り合える機会が増えてきました。ビッケブランカはアウスゲイルやボン・イヴェールとも共振する何かを持っている気がするんですね。Maroon 5やMIKAだけではなく。ピッチを高くしても力のあるファルセットとか、彼らに近いものを感じませんか? なので、海外のインディー勢とやり合ううちにそちらの方面でも彼の才能が開花する可能性も大いにあるなと。
…そんなことを考えていたら、来たる6月12日にリリースされるニューシングル「Ca Va?」には、「ウララ」のアコースティックverも収録されるんですね。激しいダンサブルなだけでなく、ちょっぴりセンチメンタルな春が表現されそうです。「ウララ」の歌詞、ところどころ前年の傷跡(人とお別れした形跡がある)ので、アコースティックVer.はそちらが強調されそうで楽しみなんです。
Perfume 「ワンルーム・ディスコ」
「Coachella 2019」で文字通り世界中を沸かせたPerfume。彼女たちが日本語で歌っても、会場はバチバチに盛り上がっておりました。日本語を解さずにあの盛り上がり(もちろん中には理解できる人も居たでしょうけれど)だと仮定すれば、まだまだ更に可能性があると思います。日本語を解さない人にこそ、スーパー励みソングの中身を知っていただきたいです。<窓を開けても見慣れない風景 ちょっと落ち着かないけれどそのうち楽しくなるでしょ>なんて、アメリカの大学生の寮生活だろうが、日本の学生の一人暮らしだろうが、普遍的なはず。この曲は新生活が始まるすべての人に向けてCoachellaのごとくストリーミング配信すべき。
Perfume -「ワンルーム・ディスコ」
BUMP OF CHICKEN 「GO」
季語がなくとも春を連想する曲ってありますよね。新生活や再出発がテーマの「GO」はまさにそれ。BUMP OF CHICKENに励まされた人は世代問わずいると思うのですが、この曲も例外ではないのでは。藤原基央(Vo.)が書く歌詞は傷までしっかり描くところが素晴らしいんです。しかもそれをサビに持ってくるという。<とても素晴らしい日になるよ 選ばれなくても選んだ未来>。世に生きるそれぞれの挫折を、彼の歌詞は丸ごと抱きしめてくれる。新生活が始まるたびに、この曲を聴くことになるんだろうと予感してます。
BUMP OF CHICKEN -「GO」
くるり 「春風」
<遠く汽車の窓辺からは春風も見えるでしょう ここで涙が出ないのも幸せのひとつなんです ほらまた雨が降りそうです>。ああ、切ない。今日も日本のどこかでこんなワンシーンがあるのだろうか。春の恋ってこんなイメージではないですか?巡り合わせが悪い上に、何かが邪魔をする。この曲の歌詞も、恋の終わりが暗示されているようで非常に切ない。それを当時のくるり(2000年リリース)のサウンドが、素朴でほのぼのとした空気に変換するのですね。だから悲劇的にならずに、どこかクスっと笑えてしまうんです(MVのように)。
くるり – 「春風」
aiko 「桜の時」
季節感を歌わせたらaikoの右に出るミュージシャンはいないだろうと思い、改めて彼女の曲をディグってみたのですが、春のニュアンスを感じるものに限っても山ほど出てきました。色々思案した末にピックアップするのはやはりこの「桜の時」。改めて聴くと、aikoらしさが詰まった曲だなと思います。彼女は一生涯ほどの長い時間軸を捉えるのにすごく身近なものをモチーフとすることがあるのですが、その点この曲はaiko的正攻法。しかもこの曲のモチーフは「キス」です。彼女の曲には、途方もない時間が積み重ねられても普遍の真実がいつもある。
aiko -「桜の時」
クリープハイプ 「栞」
リリースが昨年にも関わらず、ずっと前から存在していたような曲にも思います。いつもながら尾崎世界観の描写は鋭くて、リアリティーがあります。<桜散る桜散る お別れの時間がきて「ちょっといたい もっといたい ずっといたいのにな」 うつむいてるくらいがちょうどいい 地面に咲いてる>。比較的この曲の歌詞は、クリープハイプの中ではストレートな方だと感じますが、間接的な描写はやはり尾崎世界観のタッチだと思います。地面に咲いてる。目を合わせると色々な言葉が溢れてきてしまうので、彼女の足元に積まれた桜の花を見つめていると。日本の春の恋、そして日本の春の歌ですね。
クリープハイプ -「栞」
ファレル 「Happy」
アメリカは日本ほど四季がはっきりしてませんが、「Happy」は春を感じます。曲の冒頭で「Sunshine she’s here, you can take a break」(天気も良いし、ここらで休憩しよう)とあるからでしょうか。向こうは秋入学が多いですから、文化的な話をすると日本の春っぽい感じはあまり受けないかもしれません。違う国の人が聴くと曲の印象が異なることがありますが、「Happy」もそんな気がします。実際、春の陽気の中この曲を聴いたら気持ちいいじゃないですか。
Pharrell Williams – 「Happy」
PUNPEE 「お嫁においで 2015」
俳人の宇多喜代子さんが、「日本は四季の国ではない。梅雨という雨期のある五季の国である」という旨のことを何かで仰っていました。確かに我々ははっきりと梅雨を意識しますもんね。「春はどうした」とツッコみが入りそうですが、春を全域にわたってカバーするのならPUNPEEのこの曲も範疇だろうと。6月に結婚する人も、6月以外に結婚する人も、末永くお幸せに。令和もどうぞよろしくお願いいたします。
加山雄三 feat. PUNPEE – 「お嫁においで 2015」
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