リリックを並べるだけで、一冊、本が書けそうな気がする。圧倒的なメッセージ性を、耳に残るわかりやすい言葉で表現する力は、ヒップホップの新しい臨界点を教えてくれているような気もする。だから、聴き手も熱く語らざるを得ないのだ。YouTubeのコメントを全部集めたら、たぶんもう一冊、本が書けるだろう。「MOROHA」のリリックには、強烈な感染力が潜んでいる。
鳥肌モノのデュオ・パフォーマンス…歌とギターが最強コラボ。
歌い手と奏者、どちらが欠けても成り立たない。一曲一曲、時には肉弾戦を演じているかのように、アフロのリリックとUKのギターが、分厚い波動をかわしながらぶつかり合う。それが「MOROHA」のヒップホップの力だ。ライブは言うまでもない。MVでも十分に身体が震える強烈さがある。ヘッドホンが、その音圧にビビっているんじゃないか、なんて心配したりして。ふたりがバンドを組んだのは、2008年のこと。それまで熱血野球少年? だったアフロが、軽音部でモテまくっていた? UKに憧れて、口説いて、奇跡的かつ運命的に組むことになった。男同士の話だけれど、さぞかし暑苦しい「ラブコール」だったことだろう。とはいえ、口説きたくなる気持ちもよくわかる。アコースティックギター一本で、劇伴とリズムパートを兼ねているようなUKの超絶な表現力とテクニックは、それだけでも十分鳥肌が立つシロモノだ。
もしかすると結婚式にぴったり…なラインナップが揃う
一方のアフロは、自ら「作文」と呼ぶラップを、分厚く語り尽くし続ける。それがまたとびきり「意気」がいい。難しい言葉や、わかりにくい隠喩は使わない。しかも、その言葉の絡まり具合が実に緻密だ。時には決して優しい歌い方ではないのに、よどみなくすっきりと、心に沁みていく。MVを見ているうちに、結婚式にぴったりかもしれない、と思った。たとえば「それいけ! フライヤーマン」を、独身の友人代表が歌う。二次会はきっと、モテまくる。「恩学」を、新婦が家族に向かって歌う。号泣必至だ。新郎は「あなたから渡詩」でいこう。最後は「ハダ色の日々」を、新郎が新婦に送ろう。絶対、別れない。もっとも週に一度は、ベッドサイドで歌わされる可能性もある。なんて多才な、多彩な。2015年、「しゃべくり007」に登場して以来、認知度が急速にアップしているようだ。もしかすると結婚ソングの定番になる日は、それほど遠くないかもしれない。
飾らないふたり。だからこそ、ダイレクトに「届く」
メッセージ性が強いほど、ロジックで評したくなりがち。けれど多くのYouTubeコメントは、そのほとんどが「とてもシンプルに感動を覚えた」…というところに落ち着いている。理由は簡単だ。なにしろ多彩な楽曲のどこかには必ず、「自分」を見つけることになるのだから。それが痛みであれ喜びであれ、心を打つことに変わりはない。もうひとつ。「シンプルなギター一本のトラックと、ポエトリーリーディング。言葉を伝えるための最高な編成の形の一つなんだと思う」というコメントどおり、シンプルだからこそ音の浸透力がものすごい。これまでにリリースされた2枚のアルバムとコンピレーション、VINYLなどを通しで聴いたら、たぶん人生が変わる。ただでさえ最近、ギターの乾いたイントロダクションが始まると、全部がMOROHAの楽曲に思えて…なんともタチの悪い「両刃の剣」に魅入られてしまったものだ。
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