ネバヤンもCHAIも音楽そのもので
オーディエンスを吸引
2日目は今春来日もした韓国・釜山出身の4人組Say Sue Meから。ペイヴメント辺りにルーツのありそうなメロが良くて、一見、気弱そうなのにパワーコードで引っ張っていく女性ボーカルを見ていると、アジアのインディロックは90年代USインディの影響をまだ新鮮に鳴らすことができるんだなと思える。そして大きい方のステージにサウンドチェック中のネバヤンを見にいくと、さかんに安部ちゃんがベースの音について現地PAに注文を出しているようだった。フェスの定石で、ローを出しすぎたり音量が大きすぎたりするのが我慢ならないように見えた。そういえば音源では繊細な印象のバンドもフェスだと比較的音圧が出過ぎていることを気にかけていないことはままある。そこでしっかり戦っている安部勇磨の姿にグッときた。結果、1時間のセットをきっちり最初から最後まで見てしまった。ずっとキュートなダンスを続ける現地の女の子二人組、「お別れの歌」のイントロで歓声をあげ、日本語でAメロからずっと歌っていた現地の男の子。00年代のUSインディ経由の音数の少ないアンサンブルが好きなのか、ネバヤンそのものが好きなのかわからないが、1曲1曲、丁寧に演奏していくうちに徐々にお客さんが集まって、初志貫徹できたのではないだろうか。
お腹も空いたので確実に美味しそうなピザを注文。その場で焼いてくれるので10分程度待ったが、会場の近辺で店をやっているというオーナー(!?)が元気!オーダーミスなのか余ってしまったピザをくれたり、営業活動を頑張っていた。ホールで300THB(約1,080円)と、他のフェス飯に比べると高いが、パルマハムも美味しく満足。
ピザを食べながら座ってBad badnotgoodのアップデートされたジャズを楽しみ、途中からCHAIへ。小さい方のステージなのが信じられない。よりダンスナンバーを補強し、コンプレックスはアートなり!の定番MCも大いに受け入れられて、お客さんがどんどん4人を好きになっていくのが手にとるようにわかる。今年、ワールドツアーを続けてきたCHAIが、自信と愛情を持って目の前で堂々とライブしていることに非常に感動してしまった。フィジカルなビートもシンセサウンドも、どちらも際立たせる構成も冴えているし、マナの尋常じゃないラップパートのパワーにも度肝を抜かれた。もはやNEOカワイイは浸透し、ライブアクトとして認められている、それが今のCHAIなのだと思った。
かなり感極まったこともあり、The DrumsにCHAIが飛び入りするのをリアルタイムで見る前に、カームダウンできるスペースに移動してしまった。DJメインのスペースの1階が逃げ場になっていて、なんなら横になれるのが嬉しい。現地の人にとっては涼しい季節でも、まだ日本の真夏の夜のような気候だ。気づかないうちに結構、バテていた。大トリのBombay Bicycle Clubを諦めて、宿へ。
素朴だけど統一感と音楽性の高いアクトを揃えた
ピュアで志の高いフェス
なんだかんだアジアの未見アクトも大してチェックできず、DJやトラックメーカーも見れなかったのは体力不足と、矛盾するようだが、会場をほぼ一望できてしまうために割とすぐわかった気がしてしまうせいだろう。だが、このコンパクトでテーマが統一されていて、ベクトルが似たアーティストを集めている点は居心地が良かった。中にはあまり出演バンドに興味のない人もいたかもしれないが、思い立ったら参加できる週末の地元フェスであり、世界のインディミュージック・ファンなら、そこに気軽に参加できるのは日本人としても羨ましい。ミュージックラバーが多く、素朴で、パリピはほぼいない。そういうフェスが好きな人にはバンコク観光と合わせて大いにお勧めできる。
ちなみに終演後、バスや電車を乗り継ぐと終電が不安で、流しのタクシーもボラれる、遠回りされるかも?と心配な人はタイ流Uber、Grabのアプリを利用すれば、予め料金がわかった上でタクシー(Grab Car)に乗れる。まぁ酔ってなくてスピードが怖くない人はバイクタクシーを試してみるのもアリだけど、慣れてないとおそらく阿鼻叫喚。現地の女の子は横座りでスマホいじったりしてて「すげぇ!」と。ある種、フェス会場の外が日本人にとっては非日常だったりしました。
強者は同じ週末にタイで開催されていた「VERY FESTIVAL」(FKJやTAHITI80などが出演)とGrabを使って行き来していた様子。つまり11月以降、東南アジアではフェスのハイシーズンというわけ。他にも11月23日、24日はシンガポールで中止になったClockenflapとほぼ同じラインナップの「NEON LIGHTS」が開催されていたので、来年、アジアのフェスを予定している人はぜひチェックしてみて欲しい。
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