愛媛を拠点に活動するLONGMANが、現メンバーでの活動開始から約7年の月日を経てメジャーデビューを果たした。その第1弾リリースであり、アニメ「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」のエンディングテーマに抜擢されたシングル「Wish on」は、自らのルーツである2000年代のメロディックパンクとパワーポップの交差点で、持ち前のキャッチーなメロディーと男女ツインボーカルが高らかに響く、オリジナリティを開拓する精神とポップな強度が増した曲だ。そしてカップリングには、これまでの歩みと向き合いそのクオリティを推し進めた、電光石火のメロディックパンク「No End」と軽快なポップパンク「Journey」を収録。LONGMANの過去と今と未来を一本の線で繋ぐ、まさに新たな名刺代わりの1枚となった。
LONGMANが拡張していくパンクロックのポップな魅力
――現メンバーでの活動が始まってから約7年が経ちました。現在も愛媛に拠点を置いていることには理由があるのですか?
ほりほり : もしかしたら、僕らから愛媛に残りたい感が出ているのかも。
ひらい : だから「東京に来い」って誰も言わないのかな?
さわ : 愛媛が好きすぎるんです。
ひらい : 雰囲気的な話ですけど、東京って、みんな目的があって歩いてる感じがするんです。歩く先がある。それが愛媛だと、”とりあえず歩く”って感じで、緩い。そこに故郷を感じるんです。
ほりほり : 僕らは地元の栄えてる場所を“街”って言うんです。「とりあえず街に行こう」って。プージャー着てね。今はプージャーの人はあまりいないか……。僕らが学生の頃は流行ってて。
――“プージャー”ってなんですか?
ひらい : 僕も知らないです(笑)
ほりほり : プーマのジャージ!
さわ : 流行ってたよね(笑)。あとはキティちゃんの健康サンダルとか。街に出るときもジャージにサンダルくらいの軽装の人が多くて、のんびりしてるんです。あと愛媛は雪も降らないし、私たちの住んでいる松山や西城は、石鎚山脈に守られてるから災害にも強い。とにかく居心地がいいんです。
ひらい : 住みやすくてなかなか離れられないですね。あれ?今って愛媛の魅力を語る会でしたっけ?
ひらい
――では音楽の話を(笑)。みなさんはLONGMANを結成する前からメロディックパンクが好きだったんですか?
ひらい : 僕とさわちゃんはもともとそうなんですけど、ほりほりはまったく通ってないですね。
ほりほり : X JAPANのコピーバンドをしていたことがきっかけで、LONGMANに入りました。2ビートを叩けるからメロコアにもはまるんじゃないかって、誘われたんです。それからひらいさんに10-FEETやdustboxを聴かせてもらって、はまっていきました。だから、加入当初はメロコアの2ビートがうまく叩けなくて。
ひらい : 音が小さかったよね。
ほりほり : みんな“ドカドカドカ”って豪快に叩いてるのに、僕は“トタトタ”みたいな(笑)。そこからライブを重ねて今に至るって感じですね。
――世界的に“パンク”の大きな転機となり、“メロコア”と呼ばれる国内シーンの源流が生まれた年は、グリーン・デイのアルバム『Dookie』とオフスプリングの『Smash』が大ヒットし、Hi-STANDARDがデビューした1994年だと思うんです。1970年代のオリジナルパンクや1980年代のハードコアシーンの礎があって、インディペンデントな音楽がトップチャートにまで食い込み革命を起こした瞬間でした。あれから25年。その“メロコア”と呼ばれるシーンのパブリックイメージは、“斬新”から“根強い”になった。そこを塗り替えていきたい気持ちはありますか?
ひらい : 僕のルーツは今挙げられたバンドよりあとの2000年代なんです。なかでも10-FEETとかSUM41のような、オリジナルよりはミクスチャー寄りの、いろいろと派生した先にいたバンドの音楽でした。でも、それらもぜんぶひっくるめて「メロコアはぜんぶ同じに聞こえる」って一括りにした声もあるじゃないですか。
――あまり興味がないとそうなりますよね。はみ出したらそうではなくなる、様式美が強い形のはっきりした音楽でもありますし。
ひらい : だから言われてることはわかるんですけど、いい曲はいい曲だし、そこを突き詰めていきたいんです。その一つがさわとのツインボーカルだし、曲を作るときにもそれぞれに個性が出るよう意識はしています。そうやっていろいろと模索しながら、新しいことをしていきたい想いは強いですけど、ジャンルをレぺゼンする気持ちはないですね。でも、LONGMANのルーツは間違いなくメロコア。僕らの音楽がきっかけでメロコアを好きになってくれたらすごく嬉しいですけど。
ほりほり : 僕ららしくいい曲を作ることが、結果的にメロコアに何かをもたらせたら、それは素晴らしいこと。だから、作る前からジャンルのことを意識しなくていいんじゃないって、話したことあるような……。
ひらい : 話したっけ?そういう意味では、04limitedSazabysからはすごく刺激を受けます。メロコアバンドですけどいい意味でそれっぽくない。FOMAREもすごく好きで、ルーツにはメロコアがあると思うんですけど、そうは言われてないじゃないですか。ああいう感じがいいなって。
――FOMAREはロックバンドとして独自の色を持っていますし、04limitedSazabysは、もはやどんなことやっても04limitedSazabysでありパンク。
ひらい : 僕らも唯一無二の存在になりたいですね。
――そういったバンドの未来図とメジャーデビューとは、どう紐付いているのですか?
ひらい : インディーズでもメジャーでも、いい曲を書いていいライブをしてやるべきことをやるだけ。そこは変わりません。そのなかでメジャーを選択したのは、必要とされたことがすごく心に響いたから。僕らは2017年に活動を休止してるんですけど、実はその前にも一度、メジャーデビューの話があったんです。でもどうすることもできなくて。そのあと復活して、またこうして声をかけてもらえたことは、ほんとうに嬉しかったしありがたかったです。
さわ : 休止の原因が、私が喉の調子を悪くして歌えなくなったからだったので、またこうしてチャンス貰えてほんとうによかったです。
――メジャーに移ってみて、感じた変化はありますか?
ほりほり : 僕の目線だと、レコーディングにドラムテックさんが入ってくれて、音の幅が広がったとか。たくさんの人が僕らに対して、関わる価値があると思ってくれてることが実感できて、感激しました。そして、多くの人の後押しを受けていることの大前提として、僕らはお客さんありきで活動できてるわけで、それにふさわしいことをしなきゃいけない。今までもいい加減にやっていたわけではないですけど、ひとつの大きな転機があったことで、責任感がより強くなりました。
ひらい : アーティスト写真を撮影する時も、今まではカメラマン含め数人だったスタッフが10人くらいいて。この人たちの生活、そしてその向こうにいるお客さんのことを考えると、あらためて、めちゃくちゃ気が引きしまりましたね。
さわ : いろんなサポートを受けるなかで、タイアップの話をもらえたこともほんとうに大きかったです。前からアニメのタイアップに憧れがあって、しかも「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」のエンディングテーマ。そこは素直に「メジャーありがとう!」って、思いました。
さわ
懐かしいと思ってもらえる要素も大切に、進化を求めて歩んでいきたい
――「Wish on」はアニメの世界観にもぴったりですし、ひらいさんのおっしゃった”唯一無二”の存在に向かって、確実に歩を進めた曲だと思いました。
ひらい : 活動休止中に作ったんですけど、今までにない感じの曲だと思います。すごく気に入ってましたしポップな曲ではあるんですけど、復活直後はこれまでのLONGMANらしい曲のほうがいいと思って温めてたんです。そこでタイアップの話をいただいて、僕らのことを知らなかった人たちにも多く触れてもらえる絶好のタイミングだと思って、歌詞を書きました。
――メロディックパンクを基準にするとテンポがゆったりしていて、爽快なドライヴ感にいいメロディーが乗った曲に。
ひらい : この先復活できるかもわからない、もしかしたら解散するかもしれない状態で、でもまた走り出した時の準備はしておこうって、粛々と曲を書いてました。そうなると自分と向き合う時間も多くなるから、その時の趣味感覚も入って、いいバランスになりましたね。
――簡単に言うとパワーポップ寄りですよね。
ひらい : ウィーザーをすごく聴いてた時期で、そこまで意識的に寄せていったわけではないんですけど、新しい風を入れようという意識はあったんで、影響は大きかったですね。
――ひらいさんとさわさんとのツインボーカルにも新たな一面が。
さわ : 今まではメインで歌いたい気持ちが強かったんですけど、この曲でちょっと変わったかもしれないです。上のハモりがめちゃくちゃ気持ちよくて、主旋律はすべてひらいさんが歌ってるんですけど、めちゃくちゃ気に入ってます。なかでもサビの頭が好きで、LONGMANのことを知らなくても、メロコアっていうジャンルに触れてなくても、浸透していくんじゃないかなって、思います。
――声が高い男女の、上に上が重なるようなハーモニーはすごく新鮮でした。
ひらい : 基本的にLONGMANの曲はさわちゃんがメインで歌って僕が下でハモるんですけど、この曲ができた時は上だなって。まさかそれがメジャーデビュー曲になるとは。さわちゃんファンには申し訳ない(笑)
さわ : ライブでも、気持ちよすぎて声が飛んでいくような感じで歌えるんです。
ほりほり : ひらいさんに「ちょっとうるさい」って言われてね(笑)
ひらい : もはや主旋みたいになってね(笑)
――2曲目の「No End」はこれぞLONGMAN、そしてメロディックパンクな電光石火のショートチューン。
ほりほり : 慣れてるからレコーディングも早かったです(笑)
ほりほり
――3曲目の「Journey」は足取りの軽いポップパンクで、「No End」とはまた色の異なるLONGMANらしい曲。新たな音楽性を切り開いた「Wish on」と、二つのLONGMANらしさのある曲を意図的に収録したのですか?
ひらい : そうですね。カップリングとかそういうことは考えず、全曲全力で、なおかつそれぞれの個性がある曲を入れて、これからのLONGMANの名刺代わりになるような作品にしたつもりです。
さわ : LONGMANのことを知らずにアニメを観て、「Wish on」を聴いて気に入ってくれてこの作品を手に取ってくれた、なおかつメロコアに馴染みのない人が「No End」を聴いたら、短いし速いし、びっくりすると思うんです。
ひらい : 2曲目でやっつける!
ほりほり : そこで「メロコアっておもしろい」と思ってもらえたらいいですね。
――この作品がどうなっていくのか、すごく楽しみですね。そして気が早いですが、あっという間に2020年。
ひらい : 2014年に出したアルバム『Neverland』に入っている「1919」で2020年のことを歌ってるんです。
――そこで歌ったようになりそうですか?
ひらい : そんなに予言的な内容ではないんですけど、1919年に制定されたワイマール憲法の話をしつつ、2020年もあまり変わってないといいなって、そんな感じ。今も変わらず音楽をやれててよかったです(笑)
ほりほり : そこから飛躍していけたらいいね。
さわ : LONGMANの音楽は、例えばHi-STANDARDを初期から追ってるような、90年代のパンクとかが好きな方々から「なんか懐かしい」とか「久しぶりに新しい音楽を聴いてる」と言われることが多くて、すごく嬉しいんです。私たちが狙ってそうしたわけではないけど、歴史があってこそできたLONGMANらしさ。だから、そこは変わらず持ち続けていきたいです。
ほりほり : なんかわかる。僕は90年代の音楽が好きで、そういう要素がひらいさんのメロディーにはあるんで、LONGMANに入ったような感覚もあるんです。でもぜんぜん古くさくはなくて。
ひらい : 懐かしさを感じてもらえるのは嬉しいですし、そういう要素を大切にしていくと同時に、新しいジャンルを作るくらいの気概も持ってるんです。じゃあ何をして新しいのか、何をしてLONGMANなのかはずっと考えながら活動してるんですけど、この先も、そうやって進化することを求めながら歩んでいきたいです。
〈リリース情報〉
2019.11.06
Major Debut Single
『Wish on』
通常盤 AICL-3786
¥1,200(税込)
01.Wish on
02.No End
03.Journey
LONGMAN
オフィシャルサイト
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