突如としてロック界に現れ、あっという間にシーンを爆発的に(いい意味で)かき回したKing Gnu(キング ヌー)。2019年のヒットナンバーに上り詰めた『白日』を皮切りに怒涛の人気を博し、8月の『飛行艇』、10月の『傘』とリリースを重ね、10月末からはKing Gnu Live Tour 2019 AWと題したツアーを開催。いま波に乗るKing Gnuだが、特筆すべきはメンバーそれぞれの個性。それぞれの強烈なインパクトが集うことで、King Gnuが確立している。彼らのどのような個性がKing GnuをKing Gnuせしめているのだろうか。それぞれの趣味趣向、音楽的ストーリーを探り、紐解いていく。
異なる起源/趣向から生まれる化学反応
リーダーを務める常田大希は、King Gnuすべての楽曲の作詞作曲を行っている。MVやアートワーク関連にいたってはクリエイティブ・クルーPERIMETRON(ペリメトロン)を立ち上げ、バンド発足当時からチームでの製作を徹底。各方面からアウトプットを繰り返し自ずと創造力を高めることで、確固たる領域を形成してきた。音楽一家で育った常田は在籍していた東京藝術大学でチェロを専攻。生まれながら無意識に音楽に触れていたからこそ、デバイスが違えどさまざまなクリエイションが息をするように実現されるのだろう。
そして、常田とは違うベクトルで個性を爆発させ何かと話題になっているボーカル・キーボードの井口理。同郷の常田と同じ東京藝術大学出身で声楽を専攻。2018年には俳優として横田光亮監督の映画『ヴィニルと鳥』に出演。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭やTAMA NEW WAVEで上映され、今後その俳優業への期待も高まっている。
独自性のあるファッション、へアスタイルからビジュアル的なインパクトが強いドラマー・サンプラーの勢喜遊。両親はミュージシャンと、常田と同じく音楽に囲まれた環境で育った。幼少期からドラムとヒップホップダンスを始め、徐々に自身のパフォーマーとしてのステータスに気づいていった。勢喜はさまざまな楽器奏者たちとセッションをしたり、1980年代人気を博した昭和のブラスロックバンド・スペクトラムのギター・ボーカル西慎嗣と出会ったりと、多くの人や音に感化され、ドラマーとしての箔を付けていった。地元徳島から上京後、地元同様多彩なミュージシャンたちとセッションを繰り返すなかで常田と出会うこととなる。
新井和輝はベースをはじめシンセベース、コントラバスを担当。中学の時にバンドに誘われたがそれまで楽器経験がなく、かつ空きポジションであったベースを弾くこととなる。そして幸運なことに、新井は米軍基地のある福生市出身。福生にはジャズバーやジャズ喫茶が溢れており、日常的に音楽に触れることができたのだ。他メンバーは家庭が音楽体験の場であったが、新井には街という空間そのものが自身の音楽体験の基盤となっている。ジャズとの運命的出会いからさらにベースにのめり込むと、世界的ベーシストである日野“JINO”賢二やベーシスト河上修へ師事していった。そうして経験を積み、あるセッションで勢喜と出会いメンバーへ。出生、生い立ちは異なれど、表現者として“どこか”通づるものを内包する彼ら。そして『白日』をきっかけに、バンドのみならず個々の活動も日の出を浴びることとなる。
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