アジカンからKANA-BOONへ。KANA-BOONから誰かへ。
5月の終わり、KANA-BOONの東名阪対バンツアー「Let’s go TAI-BAAN!!」のため、お台場のZepp Tokyoへ。今回の対バン相手はASIAN KUNG-FU GENERATION(以下、アジカン)。KANA-BOONの原点にして先輩格にあたる偉大なバンドが相手ですから、彼らの意気込みも尋常ではなかったと思います。フロントマンである谷口鮪のツイートからも沸々とした闘志を感じられますね。
中学の教室の隅、高校の軽音楽部、堺の小さなライブハウス、キューンオーディション、ナノムゲン、札幌での対バン、いままでを思い返しながら、これからを見つめてライブしようと思います!
今日はアジカンとツーマン、そして新作「アスター」発売日!— 鮪 (@kanaboonmaguro) 2018年5月30日
というか、KANA-BOONの世代でアジカンを通っていない音楽ファンは恐らく少数派で、彼らに共感する人も多いはずです。余談ですが筆者もKANA-BOONのメンバーの二歳下で、やはり漏れなくアジカンの狂信者でした。この日のオーディエンスにとっては、KANA-BOONがまさにそういう存在なのでしょう。降りしきる雨の中、部活帰りみたいな恰好で開場を待つ中高生たち。バンドTシャツとタオル(当然ながらKANA-BOON率は高い)を身に着け、いかにも臨戦態勢といった様子。邦ロックは、こういう「無敵感のある」少年少女たちをひときわドラマチックにします。自分も10年ぐらい前はこれぐらいキラキラしていたのだろうか。…なんてことを考えながら、アジカンのバンドTシャツを着ているお客さんを見つけては、勝手にシンパシーを感じておりました。
こうやって、ロックの遺伝子は継承されてゆく――。
ASIAN KUNG-FU GENERATION – 『リライト(2016ver.)』
やはり常に一線級。ASIAN KUNG-FU GENERATIONの今
ライブが始まる前からセンチメンタルになってしまったのですが、そこはアジカン。そんな感傷を一音で吹き飛ばしてくれました。
上の動画の『リライト(2016ver.)』は、文字通り2016年にリリースされた『ソルファ』の再録版に収録されている曲ですが、オリジナルは2004年に発表されております。まさしく、我々がティーンエイジャーだった頃に聴いていたアジカンそのもの。それを2016年にアップデートしたのが本作でした。僕らが成長するのと同じく、僕らのヒーローだって年を重ねる。時代の変遷と共に『ソルファ』とは違う方向に行ってみる。ときには原点回帰も試みる。そのような紆余曲折を経て、『ソルファ 2016』は作られました。谷口の言葉を借りれば、「新しい曲が素晴らしいバンドが一番カッコイイ」。そう、まさしくアジカンはいつだって一線級。
この日のライブの出だし3曲は、『サイレン』、『Re:Re:』、『リライト』。いずれも『ソルファ』に収録されていますが、それらは決して思い出の中で留まるものではありませんでした。
確かにこれら3曲は僕らがティーンエイジャーの頃に聴いていた曲ではありますが、あの頃ともまた違っています。ゼロ年代のインディーロック、ゴッチのソロデビュー、『Wonder Future』でのオルタナ回帰……etc。バンドが通ってきた歴史を凝縮したような内容です。2004年に作られた楽曲をノスタルジーでなく、アジカンの現在地として提示できたのはやはり流石であったと思います。
記事の冒頭でアジカンの狂信者「でした」と書きましたが、今も隙あらば彼らの曲を聴いています。筆者と同世代の、かつてのロックキッズもきっとそうでしょう。しかし何故か年を重ねるにつれて、失われてゆく熱量。それは自覚症状がなくとも進行する病のようなもので、その結果、「中高生のころよく聴いてました」なんて言葉に繋がってしまうのです。今も聴いているのに。
聴いている音楽の総量は明らかに今のほうが多いけれど、感動の度合いや楽曲から受ける衝撃の大きさは、ティーンの頃の自分に劣ると思っています。恐らくゴッチもそれを知っていて、それでもなお『ソルファ』を再解釈することは、とても勇気が必要だったでしょう。「ノスタルジー」と一括りにされる可能性もありました。アーティストが自分たちの足跡と向き合うことは、僕らが考えるよりもずっと難儀だと思います。アジカンはそれを軽々超え、ゴッチはMCでいつもの軽口をたたく。最高にカッコイイ。KANA-BOONの面々もこの日のMCでアジカンの偉大さを何度も口にしていましたが、我々の世代にとってはアジカンはそういう存在です。
『エントランス』を演奏したあと、最後に披露した曲は『今を生きて』。
ASIAN KUNG-FU GENERATION – 『今を生きて』
この日のセットリストは誰に向けられたものだったのだろう。今回の主役であるKANA-BOON?あるいは、オーディエンス?はたまた、自分たちでしょうか。「永遠を このフィーリングをずっと忘れないでいよう」という一節の行き先を探す、雨のZepp Tokyo。
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