恐らく最初で最後のレッドマーキー。今年最大のサプライズ、Gallantの登場
ギャン泣きでした。目一杯音源を聴き込んでも、ライブで僕らの想像を遥かに超えてくるアーティストがいます。フジロックには毎年そんなサプライズが必ずあるのですが、今年はガラントがその役割を担いました。涙をこらえきれぬまま横を見ると、隣の屈強そうな外国人も泣いていたので、開き直って思い切り泣くことにしました。
レッドマーキーに今年最大の衝撃をもたらしたのは、日本語が達者な正統派ソウル・シンガー。この日このステージを選んだ人は大いに自慢しましょう。
Gallant – 『Weight In Gold』
恐らく彼が次回出演するのは、ホワイトステージ以上の舞台でしょうね。プリンスやディアンジェロの系譜にあって、ファルセットも抜群。なおかつ昨今のインディーR&Bの流れもしっかり汲んでおり、「大器」という言葉が何度も頭に浮かびました。
『Bourbon』や『Talking to Myself』で甘美な歌声を響かせ、オーディエンスの心を完全に掌握。ラストの『Weight In Gold』はまさに大団円でした。初見の人も多い中、シンガロングが捲き起こる奇跡。今思い出しても涙腺にキます。終演後のレッドマーキーには、音楽の残り香のようなものが漂っていました。
yahyelがついに「宇宙」へ。切なさすら感じた集大成
これが最終回なのではと思うほど、刹那的で、圧倒的で、完璧でした。僕はこれまでにyahyelのライブを何度も観てますが、胸を張って言えます。間違いなく、ベスト・パフォーマンス。彼ら自身も今回のフジロックを「集大成」と位置付けていましたが、その言葉には偽りも誇張もありません。
様々な国籍のオーディエンスでパンパンになったプラネット・グルーヴ(深夜帯のレッドマーキー)を沸かせたのは、紛れもなく「宇宙人(yahyel)」でした。
yahyel – 『Iron』
フジロッカーたちの音楽リテラシーの高さもあって、『The Flare』の火力がいつもより高め。不穏なビートがフロアを包み、yahyelが放つ闇が僕らを蝕んでゆく。この日の彼らは、完全に空間を掌握しきっていました。「支配」という言葉が、喩えようもなくピタリとくる。
新曲の『Iron』、『Rude』の完成度もいよいよ凄まじく、凶悪なベース音と透き通るようなファルセットのミスマッチが、かえって彼らの世界観を引き立てています。
『Why』で締めくくられた後、会場内のあらゆる人種の人たちが顔を上気させていました。国境という枠組みを超え、「宇宙人」を標榜する彼らが、本当に民族の際を超えて行ったのです。大げさでなく、歴史的な夜だったと思います。
桁違いの美意識。冷静と情熱の狭間のBonobo
フジロック’17の第一弾発表に名を連ねたボノボ。この時点で僕らビート・ミュージックのファンは歓喜しましたが、それ以上に期待に胸を膨らませる事実がありました。ボノボの横に(DJ Set)の表記がなかったのです。「ついにボノボがバンドセットで来日か!?」と、その界隈では話題になっておりました。その後、本当にボノボの名前の横へ(Band Set)の文字が足され、狂喜乱舞。
その結果、15000人収容できるホワイトステージが入場規制となりました。
Bonobo – 『No Reason』
ハードルは上がりきっておりましたが、彼らは容易くそれを超えてゆきました。真新しさはなかったものの、桁違いの美意識のもとで再解釈される森羅万象の音楽。ディープ・ハウスやエレクトロニカを基調としながら、ジャズや民族音楽の要素も組み込んで行く。
温度感も独特でした。ダウナー志向で繊細なヴォーカルが光る『Break Apart』や、聴けば無意識に体を揺らしてしまう『Bambro Koyo Ganda』や『Cirrus』。これらの楽曲が矢継ぎ早に繰り出されます。微熱が出ている時のテンションに近かったかもしれません。うなされる三歩手前の浮遊感と酩酊感。と、恍惚感。
感覚としてはほんの一瞬でしたが、時計を見るとしっかり1時間経っておりました。来年の2月にもボノボの単独公演(こちらもバンド・セット!)があるのですが、迷っている人は早めに発券することをオススメします。多分、近いうちに売り切れるでしょう。
Photography_Reiji Yamasaki
Text_Yuki Kawasaki
■フジロックフェスティバル 2017
開催日: 2017年7月28日(金)・29日(土)・30日(日)
開催地: 新潟県湯沢町苗場スキー場
主催: SMASH Corporation
<公式サイト>
http://www.fujirockfestival.com/
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