ラインナップで盤石ぶりを表現したフジロック’17
昨年で開催20周年を迎え、ますます勢いに乗るフジロックフェスティバル。今年も盤石です。圧倒的なブッキング力とセンス。一線級のアーティストたちが、アンダーグラウンドやメインストリーム、国境やジャンル、あらゆる垣根を超えて苗場へ結集します。
昨年末に満員の豊洲PITを沸かせた『The xx』、来日が待望されていた『The Avalanches』、名だたる音楽フェスでヘッドライナーに名を連ねる『LCD Soundsystem』、急遽復活した珠玉のガレージ・ロックバンド『JET』 …。クラブ・ミュージック勢も大変充実しています。もちろん日本のアーティストも。あらゆる賞賛を込めて言いますが、このラインナップは「ガチ」です。どのライブを観ても後悔はないでしょう。今からタイムテーブルと睨めっこする人も多いはずです。
極め付けはフェスの看板となるヘッドライナー。もう本当、よくぞここまで…。3日間すべて、今の時代を代表するアーティストが出揃いました。本稿では、そんな彼らにフォーカスします。そこから見えてくるのはフジロック、ひいては音楽の現在地。
7月28日のヘッドライナー、Gorillaz
世界一有名な「架空のバンド」、Gorillaz。ブラーのデーモン・アルバーン、コミック・イラストレーターのジェイミー・ヒューレットを中心に1998年に結成されました。文字通り「架空のバンド」ですから、ヒューレットによって生み出されたアニメのキャラクター4人で構成されています。2-D(Vo.&Key.)、マードック・ニコラス(Ba.)、ヌードル(Gt.&Key.)、ラッセル・ホブス(Dr.)…。キャラクターそれぞれにかなり細かい設定があり、本稿では紹介しきれないので割愛します。詳しくはコチラを。
今年の4月には最新作『Humanz』をリリースし、主要な音楽メディアで軒並み高評価を得ています。6月10日に開催されたGorillaz主催のフェスティバル、『Demon Dayz Festival 2017』も記憶に新しいですね。バンドのフィクション性がそうさせるのか、結成当時からあらゆるジャンルを横断するようなサウンドを鳴らしています。
Gorillaz – 『Clint Eastwood』
ブリットポップやヒップホップ、ダブステップにレゲェなど、様々な音楽の要素が窺えます。今でこそジャンルを越境するようなサウンドは珍しくないですが、Gorillazはそれらの動きの先駆者と見て間違いないでしょう。『Humanz』を含め、今までに5枚のアルバムをリリースしていますが、枚数を経るごとに参加するアーティストが多様化しています。例えば『Humanz』には、今をときめくUSラッパーのヴィンス・ステイプルズ、同じくUSのヒップホップグループである『デ・ラ・ソウル』、現行UKポストパンクの急先鋒『サヴェージズ』からジェニー・ベス、さらにはかつて対立関係にあったオアシスのノエル・ギャラガーまで参加しています。まさしく大集合。
Gorillaz – 『We Got The Power (Live Ver.)』
音楽の多様性に他にもう一つ彼らの特徴として付け加えておきたいのは、政治性。デーモン・アルバーンは音楽を通して政治へ言及することが度々あるのですが、そのあり方が異質なのです。ラッパーやパンクロッカーのように、直接的にアンチテーゼを唱えることはしない。本作はそれが顕著で、諦観と希望がない交ぜになっている印象を受けます。これを「芸術や文化が敗北したトランプ以降の音楽」と捉えるのは、筆者の読みすぎでしょうか。USラッパーのプッシャー・TとR&Bシンガーのメイヴィス・ステイプルズが参加した『Let Me Out』を聴いていると、そう思えてなりません。
Gorillaz – 『Let Me Out (Live Ver.)』
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