Fazerdaze来日。渋谷 O-nestで鳴り響いたインディー・ロック。
10月11日に渋谷 O-nestにて行われたFazerdaze(フェザーデイズ)来日公演。オープニングアクトは東京インディー・シーンのニューカマー、MONO NO AWARE。開演30分前の段階で会場内は大いに活気づいておりました。こういう場面に出くわす度に「インディー・シーンはまだまだ元気だなぁ」と、感慨深くなります。Fazerdazeの来日前からSNS上では盛り上がっていましたし。
多くのファンが期待していた今回のライブですけれども、オープニングアクトのMONO NO AWARE含め、出演者のパフォーマンスは素晴らしかったです。両者ともに瑞々しく、ときにローファイでありながら豊かなサウンドスケープを聴かせてくれました。
「軽やかに」ひねくれるMONO NO AWARE
今年3月に1st フルアルバム『人生、山おり谷おり』をリリースしたMONO NO AWARE。音源は発売当初から聴いておりまして、思春期にザ・ストロークスを通過した僕は秒速で彼らの音楽を好きになりました。その意味では、Never Young Beachを初めて聴いたときの印象に近いかもしれません。彼らとMONO NO AWAREは同世代ですから、やはりストロークスを筆頭としたゼロ年代のガレージ・ロックは「世代の音」なのでしょうね。
MONO NO AWARE – 『井戸育ち』
主旋律を弾かないギターサウンドのことを「サイドギター」や「リズムギター」と呼ぶのですが、ガレージ系のサウンドはこのパートが肝要であるように思います。ときにリードギターの音と同じくらい耳に残るんですよね。その意味ではMONO NO AWAREのバンドサウンドは、王道的ガレージ・ロック。ライブだともっとガレージ。そして、何となくサイケ。それから、ベースラインがCD音源より強調されていたのも良かったです。
歌詞が好きです。独特な言い回しと、ラッパーばりに韻を踏む遊び心。けれども、奇をてらっている印象は受けません。相当言葉を大事にしているように思います。『マンマミーヤ!』で「二段熟カレ~♪」というパワーワードをかまし、『イワンコッチャナイ』では華麗なライミングで日常をコミカルに描く。この“ひねくれ方”、やはり僕は好きですね。彼らの出番が終わった後、無意識に歌詞の一節を口ずさんでいる自分がいました。
あとに残ったのは爽やかな寂寥感。僕らはFazerdazeにまた会いたい。
ニュージーランドはオークランドからやって来た新星、Fazerdazeことアメリア・マーレイ。端正な顔立ちでいたずらっぽく笑う姿が素敵。本人にその気がなくとも、男どもが勝手に好きになってしまう。曲間に逐一照れるところなんて悶えるほど魅力的です。心拍数が15BPMぐらい上がりました。
で、自分でこんな導入をしておきながら、ぜひとも彼女のことはミュージシャンとして見ていただきたい。80年代~90年代を自由に横断できる造詣の深さ、それをベッドルーム・サウンドに転化するセンス、そしてそれらを実現できる高い技量。音楽の内容は極めてアーティスティックです。
この日のライブは、そんな彼女の魅力が端から端まで詰まったような完全無欠っぷりでした。未発表の曲まで披露されるなど、会場へ足を運んだファンの充足感もひとしおだったのではと思います。
グランジやシューゲイズが持つ危うさと、アメリアのイノセンスな声。CDを聴いている段階でも感じていたことですが、この組み合わせが妙にクセになるんですよね。例えば『Half-Figured』や『Misread』などが顕著。かと思えば、『Bedroom Talks』ではその名の通り内省的な音像へと変化させます。
Fazerdaze – 『Bedroom Talks』
ライブではここへバンドサウンド(彼らもまた辣腕の持ち主)も加わり、さらに内容が多層化するわけです。バンド編成になったことで聴き方が変わったのは、『Jennifer』。シンプルなプロダクションではありますが、ギターの音色が瑞々しく、リズム隊の抜け感も心地良かった。
Fazerdaze – 『Jennifer』
個人的なお気に入りになったのは、『Take It Slow』と『Shoulders』。彼女は曲を書く才能だけでなく、リリシストとしても天賦の才があります。情報社会であらゆるモノが高速化されてゆく世の中、「Take It Slow(ユルく行こう)」と歌うわけです。彼女自身も今や国内外から急速に注目を集め始めている存在ですから、ここに自分を投影させているのかもしれません。シンプルな言葉で語られていますが、時代の核心部と彼女のパーソナルな部分が繋がった名曲だと思います。
で、『Shoulders』ですよ。ここ最近聴いた曲の中でも屈指のクオリティ。この曲は公式なMVが存在しないのですが、その理由がまるで分らない。今からシングルカットされてもなんの違和感もありません。というか、して欲しい。アンニュイなアメリアの歌声に、無垢だった子供の頃を想起させるようなキーボードのリフ。サビでリズム隊が前に出てくるところにも匠の技を感じます。コチラ、アメリアのソロですが、ぜひご一聴を。
Fazerdaze – 『Shoulders』
(・・・こう聴くとソロも良いですね)まぁとにかく、『Shoulders』はバンドサウンドでも聴いてほしい一曲です。
ライブの終盤には代表曲である『Lucky Girl』が披露されましたが、さすがに会場の盛り上がりは格別でした。曲ごとに歓声は上がっておりましたけれども、この曲ではフロアが揺れるほどの熱気を感じましたね。隙間なく埋まったO-nestで夜明けを予感した次第です。「インディーシーンは元気だなぁ」冒頭で記事の書きましたけれども、こういう景色を見られるのが個人的には何よりの楽しみです。やっと200人収容できるぐらいの規模ではありますが、ここにしかない煌きが確かに存在します。
Fazerdaze – 『Lucky Girl』
音楽性も含め、今回のFazerdaze来日公演はインディーの面白さを再確認できるような内容でした。「いいね」がたくさん欲しいわけではないのだけれど、SNSでそのアーティストの曲をシェアしたときに反応があったりすると嬉しい。ささやかな幸福ですね。けれども僕らはそれを楽しみに、日夜サウンドクラウドを漁り、ライブハウスへ足を運ぶのでした。
インディーはいいぞ。
Photography_Reiji Yamasaki
Text_Yuki Kawasaki
■Fazerdaze来日公演
日時: 2017年10月11日
会場: Shibuya O-nest
<イベント公式サイト>
http://www.tugboatrecords.jp/category/event
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