変わらず響く、4人のロックンロール
ロックバンド「ザ・クロマニヨンズ」が10月9日、先行シングル「クレーンゲーム」を含めた13枚目のフルアルバム『PUNCH』をリリースします。60年代から活躍する往年のUSロックバンドですら、時代に合わせて編成を変え、時には打ち込み系のサウンドでテクスチャーレベルから改革し、変化を続けています。けれども、クロマニヨンズはいつも通り。シンプルかつ武骨なバンドアンサンブルであります。結成された2006年以来、1度もメンバーチェンジをせずにキャリアを重ねてきました。彼らのライブの定番曲にしてデビューシングル「タリホー」と、最新シングルの「クレーンゲーム」を聴き比べても、印象が大きく変わることはないはずです。
ザ・クロマニヨンズ – 「クレーンゲーム」
往々にして新しさを追求することを求められるのがアーティストですが、彼らの場合は“変わらぬこと”で何かを訴えかけているように思います。ライブ会場ひとつ取ってもそれは言えるでしょう。彼らは1回のツアーで膨大な数の公演をこなすのですが、開催地が実に幅広い。LIQUIDROOMやなんばHatchでライブを行うかたわら、「さいたま市民会館おおみや」や「尼崎市総合文化センター」などでもほぼ同じセットリストを展開する。限りなく生活感が漂う場所で演奏することがあります。つまりは「家」。彼らのライブは、“帰る場所”としての機能が少なからずあるように思います。ミーティアでも2017年に開催された『BIMBOROLL』の全国ツアーを取材させていただいた際、葛飾の「かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール」でのライブにお邪魔しました。
今もこの時の様子をはっきり覚えているのですけども、やはり圧倒的なホーム感があったわけです。下町情緒溢れる街で、武骨なロックンロールが鳴り響く。生活とエンターテイメントが直結する感じが、いかにも「クロマニヨンズ」という気がしました。先日約4年振りのLIVE映像「ザ・クロマニヨンズ ツアー レインボーサンダー 2018-2019」を発売し、その一部がYouTube上で公開されましたが、やはり撮影地に選んだのはZeppでもなんばHatchでもなく、中野サンプラザなのでした。どんなに自分の音楽的嗜好が複雑に変遷しても、振り返ればクロマニヨンズがいつもと同じ場所にいるわけです。
変わったのは、クロマニヨンズか、はたまた僕たちか。
けれども、全く変化がないわけではないように思います。特に今回の『PUNCH』は印象がいつもと違うように感じました。音の作りは間違いなくクロマニヨンズのそれです。冒頭から述べているように、デビュー当時から一貫して彼らは彼らなのであります。「リリイ」や「長い赤信号」にアコースティックな音色が使われているものの、「あぁ、クロマニヨンズだなぁ」と感じます。歌詞もいつも通りナンセンス(本人の真意はさておき)であります。が、なぜか今回は色々と想像力を働かせてしまうのです。これについてしばらく考えていたのですが、それはすなわち、聴き手である我々が変わった可能性があり得るのではないでしょうか。ダンスミュージックなど、言葉のプライオリティーが高くない音楽が台頭し、その反動で言葉に多くを求めるようになった。そう考えるとクロマニヨンズもまた、“時代性を帯びている”と言えそうです。変わらないことを選んだ筋金入りのロッカーが、変わらないことによって新たな局面に突入してゆくという…。タイトルも「PUNCH」のみで非常でシンプルな分、想像力を働かせる余白となっているように思います。まぁ、甲本ヒロト(Vo.)も真島昌利(Gt.)もいつも通り、「意味なんてないよ」と仰るでしょうけれど。間もなくリリース日ですから、無事に本作を入手された皆さんもぜひ「いつも通り」聴いてみて下さい。
ちなみに、アナログ盤への愛はいつも通りであります。今回も“60年代フリップバックE式盤”が再現され、ジャケットにも相変わらず執拗な愛情を注いでおります。60年代はレコードが純粋に尊いもので、ジャケットにも相応のクラフトマンシップが宿っていた時代でした。CDを含めたフィジカルの商品が売れなくっている今のご時世、“変わらぬこと”も一苦労ですが、彼らは変わらずロックンロールを響かせるでしょう。僕たちがどれだけ変わってしまったとしても。
■ ザ・クロマニヨンズ PUNCH
発売日 2019年10月09日
価格 ¥3,204
01. 会ってすぐ全部
02. 怪鳥ディセンバー
03. ケセケセ
04. デイジー
05. ビッグチャンス
06. 小麦粉の加工
07. クレーンゲーム
08. ガス人間
09. 整理された箱
10. リリイ
11. 長い赤信号
12. ロケッティア
<商品詳細>
Sony Music Shop
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