COMING KOBEの会場から厳選5組のライブをレポート!
ここからはCOMING KOBE19で観てきたミュージシャンのぼく的ライブレポート。当日観たたくさんのミュージシャンの中から、厳選して5組をお届け。
踊ってばかりの国
これまで生で観る機会がなかったミュージシャンに出会えること。これがフェスの魅力のひとつだ。どれだけ音楽が好きだと言っても、知り得るすべてのミュージシャンのライブに、都度足を運ぶのは難しい。「音源か、ライブか」というのが、音楽に触れていく上で一生のテーマだったりするのだけれども、音源以上にライブが素晴らしいミュージシャンはやはり一定数存在する。COMING KOBE19で初めて観た彼らもまた、生で観ることに大きな価値を感じるミュージシャンだった。
ぼくは彼らの名前を知っていたし、音楽も聴いていたけれど、初めてライブを観てすべてのセットリストがわかるほど、没入はしていない。いや、していなかった。
彼らのアクトが始まったのは、まだ時間の早い12時15分。COMING KOBE19のボルテージが最高潮になる時間からすると早すぎる時間だ。意外にもオーディエンスは疎ら。それでも演奏がはじまると、彼らの音に吸い寄せられるようにわらわらと人が集まってくる。やや控えめなオーディエンスのなかで聴く『光の中に』。ライブハウスでのライブでは絶対できない経験で、これはこれで荘厳な佇まいだった。あの空間をあれだけの人数で共有できたこと、めちゃくちゃ贅沢だったのでは。踊ってばかりの国は、COMING KOBE19におけるベース的な役割だったと思う、間違いなく。
彼らのアクトを観て、ぼくがおもったこと。5月の11日が夏であるかは別の問題として、裸が1番カッコよく見える舞台って夏フェスなんじゃないだろうか。
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EGG BRAIN
EGG BRAINのアクトは、開幕から最高の盛り上がり。活動休止していたミュージシャンが、約4年ぶりに活動再開、しかも縁の深いカミコベの舞台とくれば、あの盛り上がりは必然だった。会場には4年間心待ちにしていたファンも多く、活動再開後の最初のライブ参戦がCOMING KOBE19だった人もいたようだ。
運営の人が教えてくれたのだけれど、カミコベの会場では雨が降ると足元が田んぼ状態になるらしい。逆に晴れると砂ぼこりとの戦いになるようだ。そういえば太陽の下でフェスを観た経験って数えるほどしかないなと思いながら、ぼくはEGG BRAINのライブを観ていた。
天気は屋外イベントにとって、ひとつの演出だとおもう。雨のなかで観たいミュージシャンや聴きたい曲もあるけれど、EGG BRAINは間違いなく晴れ側のミュージシャンだ。もし当日の天気が雨だったら、EGG BRAINのアクトで感じた、あの一体感はなかったんじゃないか。EGG BRAINを観ながら、ほんとうに晴れてよかったとしみじみ感じたことを覚えている。
奏でる音がかっこいいのはもちろんのこと、楽しそうに演奏する姿も彼らの魅力だとおもうのは、ぼくだけだろうか。
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パノラマパナマタウン
パノラマパナマタウンが出演する頃には、COMING KOBE19も大詰め。残すは裏でやっているキュウソネコカミを含めても5組しかいない。パノラマパナマタウンは、サブステージのトリとして舞台に上がった。
カミコベは神戸にゆかりのあるミュージシャンが多数出演するフェスで、ここまでにレポートした踊ってばかりの国とEGG BRAINも神戸出身のバンドだ。パノラマパナマタウンの場合、出身地こそ西日本各地に散らばっているが、神戸大学の軽音楽部がルーツにある。やっぱり彼らも神戸のミュージシャンなのだ。
彼らのアクトを、ぼくは最前列に近いところで観た。「ライブは真ん中よりちょっと後ろが音の良いスウィートスポットなんだぜ」って言う人の気持ちはわかる。ぼくも「ライブは真ん中よりちょっと後ろ」派だ。でも、フェス、特に初めて生で観るミュージシャンのときは、思いっきり前で観てみることををおすすめする。彼らのステージが素晴らしかったから、かもしれない。いや、それは間違いなく素晴らしかったんだけれども、巻き込まれ方が全然違うのだ。ミュージシャンはもちろん、取り囲むファンも一緒になって、ぼくを深淵に連れて行ってくれた。
初めて観るパノパナのステージ。印象的だったのは、控えめなギターとステージ映えするベースの佇まいだ。やっぱりぼくたちがライブで観たいのは、無機質な演奏じゃなくて、人柄が伝わるようなまさしく「ライブ」なのです。彼らのアクト、特にギター浪越康平とベース田野明彦の2人からは、演奏の奥にある人間味を感じてグッときた。
カミコベに2016年から出演しているパノラマパナマタウン。彼らを3年前からカミコベに呼び、さらに2019年にはサブステのトリにした運営の決断が評価されるタイミングも近いでしょう。ライブに行こうか悩んでいるファンがいるとしたら、絶対に生で観ておくべきバンドだと断言します。ぜひそのときは最前列に近いところで。
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ROTTENGRAFFTY
ここからはメインステージ2つもトリ。ROTTENGRAFFTYが登場。パノラマパナマタウンのアクトで学んだぼくは、ものすごい数のオーディエンスのなか、前目に位置をとった。1曲目の『金色グラフティー』が始まると、ギュウギュウだったはずの周囲から人がいなくなる。さっきまで横で観ていた人は、5m以上前にいた。それに合わせて前に出ると、今度は波のようにみんなが下がっていく。そのあとの光景は、ぼくがこれまでに生で観てきたカルチャーとは、まったく別のカルチャーだった。
「モッシュ ダイブ等 危険行為禁止」
幕間でモニターに映し出されていた注意喚起が虚空に舞う。元来、人は感情に任せて音楽を聴き、また音楽を聴いて感情を高ぶらせてきたのだ。見よ、この生き生きしたオーディエンスの表情を。ぼくの目の前で転んじゃった人は大丈夫だったろうか。何事もなくてほんとうによかった。
ROTTENGRAFFTYのアクトでは、こんな風に人が動いていたこともあり、これまで以上に砂ぼこりとの戦いだった。でもそれもひとつの演出だったようにおもう。ぼくは間違いなくステージを視認できる位置からライブを観ていたはずだったのだけれど、タイミングによってステージが見えなくなることさえあった。この砂ぼこりは、ROTTENGRAFFTYとオーディエンスが作り出した自然のスモークだ。きっとライブに夢中になる人は、この一体感が忘れられなくて没入していく。彼らのアクトには、動画じゃないと伝わらないような瞬間がいくつもあった。
みんな、来年も安全にルールを破ろうな!ぼくはマスクを持っていく!
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ガガガSP
泣いても笑っても大トリ。ガガガSP。彼らのアクトは、ストーリーのように紡がれていくMCと曲が印象的だった。
「生きてやろうじゃないか」で始まった「晩秋」。「忘れられない君が」で始まった「忘れられない日々」。「どうにもならないことが多いけど、なんとかしていこうぜ」で始まった「イメージの歌」。
先にも書いたように今年のカミコベは、松原氏を失って最初のカミコベだ。臨終の日も葬式の日も決まって雨が降るほど、彼は雨男だったらしい。COMING KOBE19が開催された5月11日の神戸は雲ひとつない快晴だった。
4曲目は「松原がやってくれといったこの曲を」と「満月の夕」が演奏された。カミコベの文脈からすると、ソウル・フラワー・ユニオンとヒートウェイヴによって作られたこの曲が、たすきのようにつながって、ガガガSPに歌い継がれていくことに大きな意味があったとおもう。
阪神・淡路大震災があった1995年はもう24年前だ。リアルタイムで地震を知らない人も会場にいただろう。カルチャーにはこうしたメッセージを後世に伝えていく役割もある。ソウル・フラワー・モノノケ・サミットのTシャツを着た人がCOMING KOBE19にいたように、この日、ガガガSPの「満月の夕」を聴いたことでスタートする想いもそこにあったはずだ。
ガガガSPのアクトは、「最後に神戸の歌を」と「国道二号線」で締めくくられた。もちろんアンコールが鳴り止まない。最後の最後に歌われた曲は、いまはいない誰かを思い出す「線香花火」だった。
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いつまでも続け、COMING KOBE!
「祭りのあと」の空気ってなんだか帰り方を忘れさせる。もうちょっとだけ、さっきまで目の前で起こっていたことに浸りたいというか、終わったことを受け止めきれないというか。でも名古屋に帰る最終電車の時間は来るわけで、新神戸の駅で少しだけぼーっと過ごしたあと、ぼくは帰りの電車に乗った。
会場にいるときは、興奮もあってか気づいてなかったんだけど、ふと自分の腕を見ると真っ赤に日焼けしておりました。こんなに日焼けしたのいったい何年ぶりだろう。そんなことを考えながら、やっとの思いで家にたどり着き、鏡で顔を見てまたまたびっくり仰天。なんと顔まで真っ赤っ赤。鼻なんてトナカイも驚くほどの赤さだ。
どうりで帰り道、すれ違う人と目が合うわけだ。これだけ日焼けしていても没頭できるカミコベ。良いイベントでした。機会を作ってまた行きたい。今度は神戸らしいもの食べるぞ!
日焼けで顔の皮をめくりながら、結木千尋がお届けしました。
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