伝説のシンガーか、普通のおじさんか
私はこの記事を書くにあたって、初めて『高田渡』の名前を知りました。
そのため最初プロフィールを見た時、正直に言うと拍子抜けしました。
一部では伝説とさえ言われ没後10年以上たっても愛されているシンガーだなんて、きっとすごい経歴の持ち主なんだろうと考えていたため、「なんだかパッとしないなあ」と思ってしまったのです。
しかし実際にその歌を聴いてみると、もし『高田渡』がヒット連発で大成功を収めるような“すごい人”だったら、はたしてこんな風に歌えただろうかという気持ちになりました。
伝説とか言って崇め奉るファンもいて、ご本人も凄く嫌がるんですけど、そうじゃなくて、渡さんって普通に生きて歌ってる人
(『タカダワタル的』監督・タナダユキのインタビューより)
『高田渡』がギターと詩を持つだけの普通のおじさんだったから、普通の人々の「声なき叫び」を聞きとること、歌うことができたんじゃないのか、だから『高田渡』の歌は時代を超えて人々の心を打つんじゃないのか。
プロフィールをまとめて
最後に高田渡のプロフィールを、彼の楽曲群とともにご紹介します。
1949年1月1日生まれ。岐阜県出身、東京育ち。
幼い頃に母を、10代に父を亡くし、中学卒業後すぐに働き始めると、以降は職を転々としながらフォークシンガーの道を進みます。
音楽を聴き始めたのは兄の影響で、特にアメリカのフォークソングに傾倒。
17歳でギターを手に入れるとレコードや本を頼りに手探りで作曲を始め、1969年、20歳の時に関西の音楽事務所からレコードデビューします。
ギャラのピンハネ発覚のために1年ほどでその事務所を辞めると、以降はほとんど事務所に所属することなくフリーに。
ギターを背負って旅から旅へ、という音楽スタイルが形作られていきます。
70年代は新曲やアルバムをいくつもリリースし、気の合う仲間とバンドを結成・解散・また結成、全国ツアーにアメリカでのレコーディングとアグレッシブに活躍。
一方、私生活では結婚、息子の誕生、そして離婚を経験しています。
80年代から90年代にかけては全国を回ってライブを行い、アルバムのリリースは10年で2つと少なくなりますが、1999年からの3年間には3枚のアルバムをリリース。
さらに2004年には高田の姿を追った映画『タカダワタル的』が公開。それまで高田を知らなかった若い世代からも支持され、ドキュメンタリー映画としては異例のロングランヒットとなります。
2005年3月27日、高円寺の居酒屋で単独ライブ。
その約1週間後、北海道のツアー中に体調を崩し、4月16日、帰らぬ人に。
ドキュメンタリー映画『まるでいつもの夜みたいに~高田渡 東京ラストライブ』は4月29日より渋谷・アップリンクで公開。
横浜・吉祥寺でも5月以降順次公開予定です。詳しくはこちら。
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