4. あまりに盤石すぎるので、むしろ楽しみな主演女優賞の行方
■主演女優賞ノミニー一覧
サリー・ホーキンス『シェイプ・オブ・ウォーター』
フランシス・マクドーマンド『スリー・ビルボード』
マーゴット・ロビー『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』
シアーシャ・ローナン『レディ・バード』
メリル・ストリープ『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』
ゲイリー・オールドマン以上に盤石なフランシス・マクドーマンド。こちらも「ほぼ決まり」との向きが強いです。多くの部門でノミネートされている『スリー・ビルボード』ですが、確実に手にするのはこの主演女優賞だと言われています。それほどにマクドーマンドの演技は凄まじかった。
映画『スリー・ビルボード』予告編
対抗馬を選ぶとすれば、『シェイプ・オブ・ウォーター』のサリー・ホーキンス、『レディ・バード』のシアーシャ・ローナンでしょうか。間違いなく、両作品における彼女たちの貢献度は著しいものです。作品賞同様、ノミネートされるのが今回でなければオスカーの筆頭候補だったでしょう。
5. ディズニー無双が続く長編アニメ賞
■長編アニメ賞ノミニー一覧
『ボス・ベイビー』
『The Breadwinner (原題)』
『リメンバー・ミー』
『Ferdinand (原題)』
『ゴッホ 最期の手紙』
長編アニメ賞をディズニー以外が受賞したのは、ここ10年のうちにわずか1回。ゴア・ヴァービンスキーらが製作した『ランゴ』のみです。そんな長編アニメ部門ですが、今回もまたディズニーが勝者となるでしょう。『ベイマックス』や『ズートピア』に続いて、ディズニーの歴史に残る大傑作の登場です。その名も『リメンバー・ミー(原題は”COCO”)』。
映画『リメンバー・ミー』予告編
『ベイマックス』で東京とサンフランシスコを普遍化し、『ズートピア』では動物の世界をモチーフに、大都市が抱える普遍的な問題を描きました。ディズニー映画の恐ろしいところは、極めて局地的なモチーフや物語をどの国の人(子供含む)が見ても理解できてしまう点にあるでしょう。今作『リメンバー・ミー』の舞台はメキシコ。ちなみに同国では既に公開されており、これまで歴代最高の興行収入であった『アベンジャーズ』を抜き、記録的なヒットを飛ばしております。
6. 大いなる激戦区、外国語映画賞
■外国語映画賞
『ナチュラルウーマン』(チリ)
『L’insulte(英題”The Insult”)』(レバノン)
『ラブレス』(ロシア)
『心と体と』(ハンガリー)
『ザ・スクエア 思いやりの聖域』(スウェーデン)
ひとつの国につき一作だけ、アカデミー賞の選考委員に提出することができます。そして世界中から集められた映画は厳選され、最終的には5本に絞られます。しかもアカデミー賞の授与式は三大映画祭(ベルリン・カンヌ・ベネチア)が終わった後ですから、対象となる作品は批評に批評を重ねられた映画なのですね。実際、上記の作品はいずれも各映画祭で高い評価を得たものばかりです。『心と体と』は金熊賞(ベルリン国際映画祭最高賞)を、『ザ・スクエア 思いやりの聖域』はカンヌ国際映画祭の最高賞であるパルムドールを獲得しております。
映画『心と体と』予告編(英語字幕)
ゴールデン・グローブ賞の勝者となった『女は二度決断する』はというと、アカデミー賞ではなんとノミネート外。ますます大混戦の様相を呈しています。「社会派強し」という外国語映画賞の特徴から考えると、『ラブレス』か『The Insult』かなという気がしております。ちなみに個人的に推しているのは『ラブレス』。とあるロシア人一家の崩壊から、鋭く現代社会への批判へ繋げた痛烈な映画です。
最後にアカデミー賞の話題から少し外れて、気になることを少々。
今回の二大巨頭『シェイプ・オブ・ウォーター』と『スリー・ビルボード』、どちらもFOXサーチライト・ピクチャーズという会社が製作・配給を担当してるんですよね。その名の通り20世紀フォックスの子会社ですが、同社に比べるとサーチライトはインディペンデントな色が強いです。『500日のサマー』、『グランド・ブダペスト・ホテル』、『ブルックリン』などを世に送り出しており、映画が好きなみなさんには馴染み深い組織でしょう。
で、気がかりなのはディズニーによる20世紀フォックス買収のニュース。サーチライトも影響を受けること必至ですが、それがどの程度のものなのか。ディズニーの強みは、長編アニメ部門の項目で触れたように、普遍性の高さにあります。自由でインディーな作風のサーチライトとは、ある意味で対極的ですよね。今年良い映画をたくさん観られただけに、将来の映画シーンに思いを巡らす昨今。
■第90回アカデミー賞授賞式
日程: 2018年3月4日(日本時間5日)
<公式サイト(英語)>
http://oscar.go.com/
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