バラエティに富んでるアルバムがバランスが良いわけじゃない
ーー普通のロックバンドだと言ってるバンドがなぜこんなに毎回、限界を突破していくのかなと(笑)。
一同:(笑)。
ーーそういう楽しい矛盾を孕んでいることがUNISON SQUARE GARDENの面白いところだと思います。
鈴木:でも普通のことはちゃんとやってると思いますね。会社員の人が朝6時に起きて満員電車に乗って会社に行くみたいな、普通のことって実は普通にできないことだと思うから。
ーーその普通の活動の仕方を実際の作品にどう着地させるか?っていうところで「それが普通?」っていうぐらい毎回、限界超えをしてると思うんです。
一同:(笑)。
ーーで、今回のアルバムの「UNISON SQUARE GARDENを解剖する」っていうテーマはすごく腑に落ちました。そもそもアルバムを作るモードに移行していく時に、何かとっかかりはあったんですか?
田淵:5枚目のアルバムを出した時から構想は始めてたことなんで、きっかけみたいなものは特にないですね。書きためていた曲を並べていった時に「あ、こんなこと考えてるんだなぁ」ぐらいの感じで。でもまぁ、その間に11周年のちょっとメモリアルな瞬間があったり、「シュガーソング〜」が売れたりみたいなのを踏まえてちょっと微調整してったほうがいいね、みたいな感じで。時間があった分、すごい冷静に作れたなぁとは思いますけどね。なんか”試写会”みたいのを自分でやって、「いまいちだな、ちょっと編集変えよう」みたいな、そういう作業は時間がかかった分、できたと思いますね。
ーー見事に1曲1曲、ジャンルが違うぐらい違うと思うんですが、それも早い段階から頭にあったんですか?
田淵:いや? バラエティに富んだものにしようと思ってはいなかったですかね。なんか自分の思うバランスの良いアルバムってバラエティに富んでるかどうかではなくて、むしろ全体的に統一感があるかどうかが重要で。例えば1曲目が短いから2曲目が長いとか、3曲目がシングルだから4曲目はちょっと構成がシンプルとか、そういう感じのバランスの工夫をするという方が近いので、曲のジャンルみたいなものは、ま、なんか「似たような曲多いな」って言われないぐらいには工夫しようかな程度にしか考えてないですけどね。
「ただバンドやってたいだけなんだな」と思われるアルバムが必要だった
ーー前作がわりとロックアルバムだったので、今回は360°からユニゾンを見るようなテーマがあったのかな?と想像しました。
田淵:ある種、4枚目、5枚目に比べると「摑みどころがないな」っていう方が正しい気がしたんですよね。「じゃユニゾンてどんなバンド?」っていうのに対して、「とにかくポップなバンドだよね」っていうのも「うーん、ちょっと違うな」、「とにかくソリッドでロックなバンドだよね」、「それも違うな」と思って。「摑みどころがないバンドだよね」「そうでしょうね!」と(笑)。そのバランス感は、すごく4枚目と5枚目が満足がいくものだったので、余計に意識した方が自分が余計な使命感を背負わなくていいなと。なんでバンドをやってるのか?っていうと、ただバンドやりたいからとか、ツアーやりたいから、だから曲作る、それだけなんで。「この人たち、ただバンドやってたいだけなんだな」って思われるためのアルバムがどうしても今回必要だったっていうのはあるんですよね。
ーー田淵さんの中で「ああ、じゃあこの12曲かな」って思えたラインはあったんですか?
田淵:やっぱり「シュガーソング〜」があるっていうことと、「mix juiceのいうとおり」の2曲でどう構成するかみたいなのはーーその時は「シュガーソング〜」はまだできてないんですけど、シングル的な強いやつがあって、で、「mix juice〜」があって、そのバランスの中でそれぞれがそれぞれを高め合うようなアルバムがいいなぁって。だからこの曲の次にはこの曲しかもう俺の頭の中で鳴らないから、この曲順で聴くみたいな。そういうアルバムが僕的には理想なので、そういう理想に近づくように、できた曲を並べ替えたりしながら考えてたんですね。
田淵:今回、イズミカワソラさん(ユニゾンのライブの入場SEはイズミカワの「絵の具」という作品)にピアノ弾いてもらったんですけど。僕は今後も余程のことがない限りフィーチャリングみたいなことはしないつもりですけど、そんな中でも最初にやるならソラさんがいいと思っていて。
ーーなるほど。ところで「パンデミックサドンデス」の歌詞のなんでも気に入らない人を叩く最近の風潮を始め、割と歌詞が怒りがちですよね。
田淵:そうなんですよ。
ーー(笑)。田淵さん自身は共感されることを「うわ、きもちわる!」とか思うかもしれないですけど、ある種の共感はあるんじゃないですか?
田淵:僕が酔っぱらった勢いで「あれがムカつく、これがムカつく」と感じたことを歌詞にしても全然かっこよくなくて、これはやっぱ斎藤くんが歌うっていうところを考えて、「斎藤くんがこれ言ってたらちょっと違うな、やめよう」みたいな。そこに関してはすごくバランスはついたなと思って。そこで自分が言いたいことは絶対、歌詞にしてやるんだっていう人間になんなくてよかったなと思って。やっぱり一人でバンドやってるわけじゃないし、歌うの俺じゃないし。
ーー怒りがちと言っても田淵さんらしい落とし所があるというか、最終的には笑えるというか、そういう気はしましたけど。
田淵:ニコニコ怒ってる感じがいいなと思いましたけど。
ーー怖いですよね(笑)。
田淵:斎藤くんが歌うとマイルドに聴こえるからちょうどいいんですよね(笑)。
ーー(笑)。でも斎藤さんが歌ってポップになることで、余計に怖かったりするんですよね。
田淵:なんか分かります。それが彼の魅力につながるんじゃないですか、ミステリアスさというか、「この人マジで怒ってんのかもしれない」みたいな。
鈴木:まぁね、怒ってるっていうか、「こっちの方がいいじゃん」って言っている感じですね。怒りを知ってほしいわけじゃないですからね。
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