「思いやりと相性の良さがなければ、10年も一緒に音楽をやれるわけがない」
――ライナーノーツにはSUGURUさんが「求めればいつでも人と繋がれる時代、でもだからこそ人と人との繋がり方が少し希薄に、少し雑になっている気がします」と書かれています。具体的にどんな時にそう感じるのでしょうか。
SUGURU : おもにSNSやラインですね。すごく便利なものではあるけど、逆にこれらがいじめを誘発することもあるし、いわゆる「SNS疲れ」を起こさせてしまうこともある。気軽に使えるぶん、心がこもっていないことが伝わりやすいんですよね。そうしたことを見直して、便利さだけにとらわれず、人がどう感じるかにまで想いを持つことが大事だと思っています。
――たしかに、SNSは使い方が大事ですよね。
SUGURU : たとえば、家のなかにいても家族同士でラインし合うことってありませんか? そういうことが増えると対話が少なくなっていく。あるいは10年前なら、デートの時に携帯を見ることは失礼だとされていた。でも今はスマホを見ながら会話をしている。それはそれで悪いことではないけど、気を抜くとすぐに自分の世界に入ってしまう。
TAIRIKU : 携帯を見ながらコミュニケーションすることを「ファビング」といいますけど、こんな言葉があるくらいですからね。でもファビングがいちばん人間関係を壊すらしいですね。逆に、嫌いな人相手だったら積極的にファビングすればいいのかも(笑)。
――ちなみに、みなさんはどういう時に自分たちの絆を感じますか?
SUGURU : 昨年、僕らは結成10周年を迎えたんですけど、相手への思いやりや相性の良さがなければ10年も一緒に音楽をやれるわけがない、と改めて感じました。
TAIRIKU : 表面的なものだけでは10年は難しいよね。
SUGURU : うん、どこかで破綻すると思う。メンバーの家族、スタッフふくめ、まわりにいたのがこういう人たちだったからこそ続けてこられた。自分だけの力ではないんですね。実は当初は、10年ということはあまり意識していなかったんです。でもまわりが想像以上に盛り上がっていて。
TAIRIKU : 「10周年」をうまく使いこなしてたよね(笑)。
KENTA : この10年、壊れてもおかしくない時期もありました。それでも続けられた事実はやはり大きいです。こうして今でも顔見ながら笑いあって、学生の時と変わらないテンションでバカな話ができる、それは幸せなことですね。もちろんみんなまったく同じ人間ではないので、それぞれのやりたいことがふくらんでしまうこともあります。でも、チームとして過去を1歩ずつ塗り替え続けてきて、1歩ずつ階段をのぼっている実感がありますね。
「100人いれば100通りの正義があり、それを“許す”ことが大切」
――どうやって危機を乗り越えてきたんですか?
KENTA : とことん話し合う時もあるし、待つ時もあります。でも結局のところ、最後は、相手を信頼するかどうかだと思います。
――なるほど。みなさんにとっての「絆」とは、「信頼」や「相手への思いやり」が基本になっているんですね。
SUGURU : 相手の想いを汲むことは、時に自分の想いよりも大切だと思います。若い時って、どうしても許せないことがありますよね。正義感のような強い気持ちを抱いている。それは生きていくうえで必要なものだけど、100人いれば100通りの正義がある。それを許すことが必要なんじゃないか。
――「許す」ですか。
SUGURU : 上から目線に感じるかもしれないけど、そう言い切ってしまって良いと思います。自分と相手との違いを許して、受け入れる。それによって自分の引き出しも増え、人として成長していく。だから、もし「絆」を定義するとしたら「他人を思いやること」だと思います。
――しかし、他人を許したり受け入れたりすることは、簡単ではないですよね。
SUGURU : いまだに思いやれないこともあります。やっぱり少しずつじゃないでしょうか。人は自分の写し鏡だと言いますけど、「なんだかこの人、当たりがきついな」と感じる時って、自分の状態が相手に反映されているんですよね。そのことを見落として、つい人のせいにしてしまう。
KENTA : ここのところ、TSUKEMENは変わってきていると感じていて。というのも、いろんな人と積極的にコミュニケーションを取るようになったんです。僕らのような音楽をやっていると他のジャンルの方と交流することは少ないんですけど、最近は様々な出会いに感謝と楽しみを持つことが増えてきました。
SUGURU : もしかしたら、これまでは「自分たちの音楽をはっきりさせたい」という想いが強かったのかもしれないし、他のジャンルの人たちと演奏する自信がなかったのかもしれない。だけど、たとえ少しくらい演奏が下手だったとしても、思い切って裸で突撃していけば、案外うまくいくことが多いんですよね。逆に言えば、音のうえではうまくいっているようでも、人同士がうまくいっていないと、後で聴いた時にわかってしまう。ベタだけど、心を開いて一生懸命チャレンジしたことって、相手に伝わるんですよね。
――めちゃめちゃ良い話だ……。
「一生懸命やると苦悩がうまれる」
――今回のアルバムには、メンバーそれぞれに贈った曲があります。『旋律の彼方へ』はTAIRIKUさんに、『ベストフレンド』はSUGURUさんに、『Love you』はKENTAさんに。贈られる側として、この曲を聴いた時にどんなことを感じましたか?
TAIRIKU : 僕はごほうびをもらった気持ちになりました。子どもの頃、誕生日やクリスマスのプレゼントを待っている時に感じたワクワクが久しぶりに蘇りました。大人になると、人にものをもらう喜びって少なくなると思うんです。懐かしい感覚でしたね。
KENTA : 僕の曲は、3曲のなかでいちばん早くできたんです。だから「本当にちゃんと考えてくれたのかな?」と少し不安になり、疑いました(笑)。でも弾けば弾くほど好きになって、自分ではできないアプローチを2人が考えてくれていたんだと気付いて、すごく嬉しい気持ちになりました。
TAIRIKU : 正直、KENTAの曲はイメージが浮かびやすかったんです。そもそもSUGURUと共作する時って、すごく早く完成するし。
SUGURU : 4~5時間でバーっとできちゃう。人に贈る時はコンセプトが重要だと思うんです。どういう想いでその曲を渡したか。僕とTAIRIKUはKENTAさんに対して同じビジョンを持っていたから、すぐにできたんですね。
――SUGURUさんの曲はどうでしょう?
SUGURU : 僕は鍵盤ハーモニカを吹いているんですけど、もらった時は「え、俺ってピアノじゃなくて鍵盤ハーモニカのイメージなの?」と思いました(笑)。でもいまではこの曲がいちばん好きです。いちばん自由になれるから。というのも、2人がピアノを弾いてくれているんです。僕、ピアノが苦手で。
――ピアノが苦手? ピアニストなのに、なんという発言でしょう(笑)。
KENTA : ひとつのことを突き詰めると自分の足りないものがはっきり見えてしまうんです。一生懸命やると苦悩がうまれる。
SUGURU : それが鍵盤ハーモニカだと、子どもの頃に音楽を始めた時のような気持ちになれるんです。スポーツ選手が「子どもの頃は楽しかったけど、今はつらい」というようなことを言いますよね。ああいう感じだと思います。
――それは、イチロー選手が引退会見で語っていたことと重なりますね。
SUGURU : だからめちゃめちゃ楽しく吹いています。いちばんノリノリ。
「若い世代にとって、Aviciiを入れるのはナチュラル」
――カバー曲もいくつか収録されています。どういう基準で選んだんでしょう?
SUGURU : まずは、メンバーそれぞれがやりたい楽曲、TSUKEMENとしてやりたい楽曲を出していきました。でもそれだけだと偏ってしまうので、スタッフの意見も取り入れながら、何十曲と候補を出していきました。
KENTA : あとは世代ですね。いろんな世代の人が知っている曲。子どもでもノレる曲や、おじいちゃんおばあちゃんでも引っかかる曲、CMやテレビ番組のテーマ曲として有名な作品などを選びました。
――採用された楽曲のうち、最初に3人で候補出ししたものはどれくらいあったんですか?
SUGURU : 『上を向いて歩こう』と『月光』、それからAviciiの『WAITING FOR LOVE』です。Aviciiは、TAIRIKUがめっちゃ好きなんですよ。
Avicii『Waiting For Love』MV
TAIRIKU : EDMを生音で演奏するのはカッコ良いだろうなと思っていたけど、なかなかやる機会がなかったんです。それに、普段のアルバムに入れるとちょっと浮いてしまう。今回は他の曲にもパーカッションなどいろんな音が入っていたので、いけると思って。このアルバムのなかではいちばん認知度が低い曲かもしれないけど、チャレンジレベルは高いです。
KENTA : 若い世代にとっては、Aviciiの楽曲を入れることはナチュラルなんですよね。僕らのメインファンからしたら驚きだとは思いますけど。
――しかも2曲目ですもんね。合唱からのEDMという。高低差がハンパない。
TAIRIKU : 普段TSUKEMENを聴いている人は「あれ? TSUKEMEN出てこないな?」と思うかもしれない。この最初の2曲の高低差にかんしては、最後の最後まで議論していました。1曲目、2曲目と聴いていくと、同じユニットとは思えないから。でもやっぱり、ちょっとだけカマシたかったんですよね(笑)
――EDMの曲をカバーする際は具体的にどういった手続きを踏むんでしょうか? クラシックとEDMには、真逆のイメージを抱いている人も多いと思うのですが。
SUGURU : 単純に、歌モノはバイオリンのメロと合うかどうかを検証するんです。だから、ループしている曲の場合はまったく別のメロを入れないと難しいかもしれない。Aviciiの『WAITING FOR LOVE』は、意外とメロが日本風だったんですよね。
TAIRIKU : 洋楽と邦楽の垣根が良い意味で取れてきているのかもしれないですね。
――EDMがいけるなら、いずれヒップホップとのコラボなんかもありえますかね?
KENTA : TAIRIKUはラップとコラボしたいとずっと言ってますね。おしゃれなジャズにラップが入るとすごいカッコ良いじゃないですか。
TAIRIKU : いろんなジャンルの音楽をTSUKEMENなりに解釈してやっていきたいですね。
SUGURU : 今の10代、20代の人たちは、僕らがその年代だった頃と比べると圧倒的に情報を持っています。昔は、東京のサントリーホールに来なければピアノやバイオリンのうまさなんてわからなかったし、外国に行かなければ海外でどんな演奏がされているかわからなかった。でも今はネットですぐに見ることができる。ある意味、一流の人たちをよく知っていると言えます。そういう人たちに受け入れてもらうためにも、もっと自分たちの長所を伸ばしていかなければいけないと思っていますね。
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