デジタルシングル『癒えないキスをして*』が絶賛配信中のシンガーソングライター、ロイ-RöE-。11月29日公開の映画『羊とオオカミの恋と殺人』の主題歌でもある同曲は、映画のエンディングを演出するキー的なナンバーとして起用されている。今回は、テレビドラマや映画の主題歌、本人作のアニメ歌謡曲のカバー動画の公開やこだわりのアートワークといった、トータル・アーティストとしてのRöEワールドを形成しているバックボーンやモチベーションに迫ってみた。
Interview&Text_Yuka Ishizumi
Edit_Mine.k
お題がある限られた自由の中で、どれだけ自分を出せるか。
――ドラマ主題歌、映画主題歌と続いていますが、RöEさんはお題がある方が作りやすいですか?
RöE : 作りやすいし好きなんです。もともとCMや広告の曲をやりたくて。例えば「自由に作って」って言われたら、したいことがありすぎて選べないと思います。限られた自由の中でどれだけ自分を出していけるか? そのせめぎ合いが楽しい。以前主題歌を担当したドラマ『ストロベリーナイト・サーガ』も今回の映画『羊とオオカミの恋と殺人』も結構自分に合ってて、無理せず作れました。普段見ないような作品に合わせてとかじゃなく、好きなものに関われることがすごく嬉しいですね。
――例えば、どういった商材がいいでしょうか。
RöE : そうですね。お菓子とかのCMソングが作りたいです。あとは女の子に関わるもの。例えば美容品とか化粧品とか。私の曲は女の子向けという意識で作ってますが、それはそういう仕事をしたいからというのもあります。映画も、女の子が暴れまくるみたいな映画が好きで(笑)。1960年代の『ロリータ』とか『ひなぎく』とか、おじさん相手に女の子がめちゃくちゃしまくって、女の子同士で「やったー!」って笑ったり。そういうのが一番キュンキュンするんです。
――(笑)。ちなみに今回の映画『羊とオオカミの恋と殺人』をRöEさんはどんなふうに理解しましたか?
RöE : 企画書だけ見たときは、福原遥さんがサイコパスな殺人鬼役で「こんな可愛らしい方がサイコパスなんて絶対合わんやろ」と思って(笑)。実際に映画を見ると、役とキュートな声のミスマッチなところとかが、逆にすごく合って狂気を増してて、すごく美しく感じました。
――『癒えないキスをして*』の制作においてヒントになった部分は?
RöE : 黒須くん(杉野遥亮)は受験に失敗して未来がない、何もしたくない状態。宮市さん(福原遥)は自分なりのルールのなかで人を殺してるから、黒須くんに対して別に分かってくれなくてもいいと思ってる。2人とも尖ってるんですけど、心の中では寄り添えるものを探してて。そんなすごいシュールな恋愛を、どうやって曲で表現しようかと考えました。ただの恋愛ソングだとこの映画をかすませてしまうし、そのシュールさがこの映画の一番の魅力だと思ったので、それを表したくてこの曲名にしたんですけど、曲名について語るとネタバレになるのでしません(笑)。
――確かに。歌詞は黒須くんの視点なんですね。
RöE : 私は“I love you”とか言わないけど(笑)、ちょっと闇がある人を好きになるタイプだから、そういう恋愛をしていた時期を思い出しながら黒須くんになりきって書きました。
――ボーカリストとして演じる意識で歌ってますか?
RöE : できた曲に対して、この曲はどういう風に歌ったらいいんだろう?って考えます。自分の声は合わせるキーで変わるんです。高くしたら可愛い感じに、低くしたら歌謡曲っぽくなる。この曲は可愛いタイプ。
――今回もゲスの極み乙女。のちゃんMARIさんのサウンドプロデュースですが、彼女のプロデュース手法は具体的にはどんな感じなんですか?
RöE : まず、私が作ったデモを「こういう風にしてください」ってイメージを伝えて、ちゃんMARIさんのデモができあがったらスタジオに集まって録る時に調整する、みたいな感じですね。基本データの投げ合いが多いです。ボーカルを録る時もちゃんMARIさんが歌のディレクションしてくれて。『癒えないキスをして*』は情熱的に歌ってたんですけど、後半で「もっとささやく可愛い感じの方も聴いてみたい」って言われて、最終的にこうなりました。
――淡々と歌った方がいいという判断だったんですね。
RöE : 終始淡々とした曲は初めてだったので、新しい扉をあけてもらった感じがしましたね。
クリエイティブな想像をいろんなところに広げていきたい。
――アートワークもいいですね。ジャケットとMVは同じロケーション?
RöE : 同じです。文豪が住んでそうな、古民家みたいなところで撮りました。最初MVのレイチェルミラー監督からは、お花いっぱいの洋室ってアイデアをもらったんですが、エグみがほしいなと思って「和室はどうですか?」って言ったら「いいね」って。
――MVと同じ衣装のジャケットも可愛いですね。
RöE : そうなんですよ。今までのジャケットとロゴは全部、コラージュアーティストのQ-TAさんにお願いしてて。デビューが決まってロゴを作る時に、好きなコラージュアーティストの方にお願いしたいと伝えて、そこからQ-TAさんに会ってご飯に行っていろいろ話しました。好きな映画のDVDも貸してくれて、「やっぱりこの人の世界観が好きやなぁ」と再確認してからは、ずっとお願いしてます。
――ところで今回のビデオでも屋外のシーンでロッキンホース・バレリーナ(ヴィヴィアン・ウエストウッドの木製ソールシューズ)を履いてますよね。
RöE : ライブでもいつも履いてるからもうボロボロですけど、この感じがよくて。こういうちょっとパンクなワンピースにも合うなぁと思いますね。
――そうしたファッションに目覚めたきっかけはあるんですか?
RöE : 嶽本野ばら先生が好きなんです。昔、友達の家に行って『下妻物語』の映画を見たんですが、めちゃめちゃ面白かったんですよ。それから土屋アンナさんも好きになって。「深キョン可愛い〜、ロリータってこんな可愛いんだ」って夢中になって、そこから今につながる自分の趣味が始まった気がします。
――嶽本野ばらさんの美意識に影響を?
RöE : 言葉に説得力がありますよね。『ミシン』っていう小説は、ヒロインに憧れた女の子が、ヒロインに近づいていくっての内容のもので。いつもライブの時は主人公のミシンになったつもりでいるんですが、「RöEちゃんが三つ編みにしてたから三つ編みにしてきたよ」とか、「手紙読んでください」とか女の子に言ってもらえると嬉しい!めっちゃ可愛い!と思いますね。もらった手紙は壁に貼ってます(笑)。
――嶽本野ばらさんの美意識も受け継がれつつ、RöEさん世代ならではのものも融合されていて、いろんな要素のミクスチャーなんですね。
RöE : そうですね。音楽からいろんなことをできればと考えてます。考えるのは簡単だけど具現化するのは難しいから。
――自分自身が思い描くキャラクターになることで受け手に伝わるものがあるだろうし。
RöE : 確かに。昔から嗜好というか「人にこう見られたい」っていうのはコロコロ変わってました。ある日、髪色変えたら仲のいい友達から「誰?」って言われたり。着てる服や髪型によって自分の態度も変わってしまう感じがあって、それを楽しんでるところもあります。
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