大人になる扉の手前にたどり着いた一年
――ここからは、皆さんそれぞれの2016年の活動についてお話を聞いていければと思います。まずRude-aさん、2016年を振り返ってみていかがですか?
Rude-a:一番大きかったのは、住んでいた街を離れて東京に出てきたことですね。不便やストレスを感じることもあったんですけど、新しく出会ったものや繋がったものもあって。沖縄ではダラダラ過ごしてましたし、同じようなことしか毎日してなかったんです。
でも東京では、新しくチャレンジしたいことがいっぱい生まれて。2016年の8月に日本武道館で高校生RAP選手権のオールスター戦があったんですけど、それも上京していなかったら出場できなかったと思うんですよ。
やっと人間になれた感じがします(笑)。成長するために経験しなくちゃいけないことをして、大人になる扉の手前にたどり着いた一年だった気がします。
――『I LOVE MC BATTLE』に収録された『19』は、まさに「大人への扉」というテーマが込められた楽曲だったと思います。
Rude-a:『19』は自分がラップを始めてからのことを、韻を踏むのも気にせずにバアっと書いたんですよね。兎に角思っていることを詰め込みました。いまどんなに強く思っていることがあっても、それが何年後にどうなっているかわからないじゃないですか。
その――、『19』は一点だけ問題があって。曲中にとあるリリックがあるんですけど、その箇所のおかげで住んでいる場所がバレてしまったんですよね……(笑)。
一同:(笑)
ISSEI:歌詞がリアルすぎるんやな!
――この箇所、記事にしても大丈夫ですか?(笑)
Rude-a:全然大丈夫です!住んでるところであろうと、嘘はつかないんで。普通に寝間着でコンビニ行った後、ファンの子に声かけられたりしてます。「あ、すいません。普段こんな感じで……」ってなっちゃうんですけどね(笑)。
韻シスト『CLASSIX』に費やした一年
――BASIさんは2016年振り返ってみて、いかがでしたか?
BASI:2016年は韻シストの『CLASSIX』というアルバムに纏わる場面が多い一年でした。『CLASSIX』は6月に出たんですけど、年の前半はアルバムを出すための準備やレコーディングをしてて。
韻シストのレコーディングは毎回、沖縄のコザでやっていて。コザはRude-aの地元やんな。
Rude-a:地元ですね。高校時代はずっとあの辺りで遊んでました。
BASI:コザでレコーディングして、6月にアルバムを出して9月からは2ヶ月間全国を回って。で、いまに至るって感じなんで韻シストに費やした一年でしたね。
ただ、裏では着々とソロの準備も進めてました。全国移動している車とか、滞在してるホテルで制作をしてて。次のアルバムは、旅をする中で作った一作ということになりそうです。
――次作は現在(※2016年12月末)、レコーディング真っ只中という感じですか?
BASI:いや、ソロは録り終えてます。いまはミックスや調整作業をしているところですね。(作品を)書く時間が空いたので、他に声を掛けてもらっているプロジェクトなんかを進めようと考えてます。
「振り返る」にも、ほんと「~ing」で。「次はこれ」「次はこれ」と進んでいく一年だったので。何かをやり続けている、突き抜けた一年でしたね。
――韻シストの『CLASSIX』はフリースタイルがブームになる中で、“楽曲としてのヒップホップ”の良さを感じるような一作だったと思います。BASIさんご自身にとっては『CLASSIX』とはどのような作品であったか、改めてお教えいただけますか?
BASI:「名盤を作ろう」と掲げて、制作をスタートしたのが『CLASSIX』だったんですよね。そういったスローガンを掲げて作ることは、いままで無かったことで。挑戦的なアルバムだったんじゃないかと思いますね。
ISSEI:『CLASSIX』はハイクオリティ過ぎて、いままでの韻シストに比べると「遠く」聞こえたというか。いままでのような人間らしさはありつつも、キラキラしていて華がある作品だと思いました。
音の作り方やサンプルの使い方からも、若さや良い意味での雑さが抜けて、スーツが似合う大人を思わせるジャズっぽさが出てきて。「シン・韻シスト」が放たれたと俺は感じましたね。これから韻シスト、凄いことになりそうですよ。
BASI:いままではジャムしたり、全員で一曲に着手するような作り方をしてたんだけど『CLASSIX』くらいからはメンバーが各々トラックを用意するようになって。50曲位作った中から収録曲をピックアップしていて。
メンバーがそれぞれ制作したデモの段階では、音源はサンプリングしたビートだったりするんですよね。それを生の演奏に置き換えていくんです。でも中には「このサンプリングはこのまま活かそう」と話し合って、決めることもある。
そういう作業をしているから「この部分は音が荒いけれど、それが良い」というような感触が生まれてくる。メンバーが皆、多種多様な音作りをしているから、それが一枚にまとまると必然的にバラエティに富んだ作品になるんですよね。
Rude-a:『CLASSIX』は大人な感じがする作品ですよね。本当に聴いていて楽しいです。こういう作品が自分の街で創られたと聴くと、気持ちがふわっと上がる感じがします。
Twitterで、BASIさんが「いま沖縄で曲作ってる」ってつぶやいてるのを見てたんですよ。「コザのスタジオというと、あそこだよな。いまから行こうかな?」なんて考えてたんですよ!ほんっとにコザは自分たちが、仲間内で溜まってた場所なんですよね。そこに韻シストが居るって――、差し入れにお刺身とか持っていくべきなんじゃないかと思って(笑)。
ISSEI:一緒にベトナム行った時も食い気味にその話ししてたもんな(笑)。「いま、韻シスト沖縄に居るんですよね!?」って。
俺が好きなヒップホップのために橋を作る
――ISSEIさんにとっては、2016年はどんな年でした?
ISSEI:俺はオールドスクールのヒップホップが好きなんですよね、Beastie Boysとか。彼等のようなふざけ方が出来ると思って、2016年はKOPERUとタッグを組んで活動をしていました。だから、Rude-aとBASIくんの持つメロウさとは全く異なるヒップホップをしているんですけど……(笑)。
MUTANT LABELの服も一年、デザインしていたんですけど今年から毎日実店舗をオープンすることになって。そこでお客さんの「KOPERU & ISSEI聴いてます」「BASI聴いてます」というようなリアルな声を聞けるようになったことも大きかったです。KOPERU & ISSEIとBASIを両方聴いている人というのも居て、ジャンルが混ざるんですよね。レゲエ大好きな人がいつの間にか、一番好きなアーティストがBASIになったりもするんですよ(笑)。
BASI:へええ。
ISSEI:こういう人、ほんとに居たんですよ。BASIくんの『Mellow』のジャケットとコラボしたMUTANT LABELのTシャツがあるんですけど、それを着てBASIくんのことを知ったらしくて。そういうのって、すごく(異なるジャンルが)シンクロし合ってる。俺の中では、そういうシンクロしてるものをギュッと纏めたのが『MUTANT CAMP』。
今回の『MUTANT CAMP』って、パッと見ると異色なんですね。BASIくんとRude-aと聞くと、納得感あるじゃないですか。世代は違いますけど。
――二人には、音楽的に合い通じるものがある感じがしますよね。
ISSEI:――という中にレゲエが入ったり、バトルMCが入ったりしてて。こういうのはMUTANT LABELでしか出来ないことなのかなと思って、ちょっとした使命感も抱いてるんですよね(笑)。俺はミュージックビデオを制作したり、服を作ったりしてるわけです。俺には、そういうことを通じて俺が好きなヒップホップのために色んな要素を混ぜ合わせて(ジャンルを跨ぐ)橋を作ってる意識があるんですよ。そういう意識を一層強くした一年が、2016年でしたね。
まだまだ盛り上がるBASI、ISSEI、Rude-aの三人のトーク!
後篇ではRude-aが「かまします!」と豪語する2017年の展望から、それぞれの運命の出会いまで様々な話題をお届け予定。後篇もお楽しみに!
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