LUCKY TAPES(読み方:ラッキーテープス)の2ndアルバム『Cigarette & Alcohol』が素晴らしい。セクシーでソウルフルで、何より力強く骨太なポップセンスが宿ってる。鎌倉出身の3人組。でもライブではホーン隊やパーカッションや女性コーラスを加えた多人数で豪華なショーを作り上げる。
ブラック・ミュージックをJ-POPに接続する音楽性が評判を集め、昨年の1stアルバム『The SHOW』と今年のシングル『MOON』がロングセールスを続けている彼ら。今までは早耳のインディーファンを中心に「知る人ぞ知る」存在だったけれど、この先はもっと人気が広がっていきそうな予感がする。
高橋海(Vo,Key)、田口恵人(Ba)、高橋健介(Gt)の3人に話を訊いた。
インタビュー・文=柴 那典
歌が前面に出る、芯のあるアルバムがやっと完成した
ーーアルバムすごくよかったです。すごく骨太になってる感じがしました。
高橋海:ありがとうございます。
ーー完成した時の手応えはどうでした?
海:今まではずっと、曲も音作りの面でも理想形に届いてない部分があって。いろいろ模索してきたんですけど、ようやく今作で自分たちが作りたい音に届いた感じがします。
田口:音もそうだし、歌が前面に出る、芯のあるアルバムがやっと完成したなと思いました。
ーーバンドの理想形、目指したいものって、どういうところをイメージしていたんですか?
海:それは今作ですか? もともとの話ですか?
ーー両方聞きたいな。だからもともとの話が先ですね。まずはバンドを始めた頃にイメージしていたもの。
海:バンド結成前、元ドラムと自分とケイティ(田口恵人)の3人でご飯に行った時に、マイケル・ジャクソンの「ラヴ・ネヴァー・フェルト・ソー・グッド」という曲が最高だという話で盛り上がって。
田口:「タイムリーだよね」って。
海:もともと前身バンドがあったんですけど、そうった話をしたことをきっかけに再びバンドが動き出したので。あの曲の存在は大きいですね。
ーー高橋健介さんはどういう経緯で加わったんですか?
海:半年後ぐらいだったかな?
健介:そうだね。ちょうど半年ぐらいだね。
田口:大阪のライブの時にドライバーが足りなくて、最初は運転手として呼んだんですけど、「せっかくだからギターも弾いちゃえば?」みたいな話になって(笑)。
健介:で、まあ流れでずるずると弾き続けちゃったみたいな。
田口:いや、違うでしょ(笑)。前身バンドでも健介は一緒にやってたんで、そこからちゃんと参加するという話になったんですよ。
海:再集結した感じですね。
ーーその結成当初にマイケル・ジャクソンをキーワードに共有していた感覚ってどういうものだったんですか? どういうところが「こういう感じをやりたいよね」っていうものになっていたというか。
海:メンバーそれぞれ小さい頃から親からの影響でブラック・ミュージックを自然と耳にしてはいたものの、前身バンドでは主に海外インディーから影響を受けた音楽をやっていて。当時流行っていたチルウェイブとかシンセポップとか。
ーートロ・イ・モアとかのあたり?
海:そうです。だけどマイケルの曲を聴いた瞬間、原点に戻った感じがして。「本当にやりたかったのはこれだよな」って気付かされたんです。
ーーお二人もそういうルーツは共有していた?
健介:そうですね。
田口:今の時代にマイケルが「ラヴ・ネヴァー・フェルト・ソー・グッド」を出すことがすごいなというか。踊れて、なおかつ歌に芯があって。グッときましたね。こういうのをやりたいと思いました。
中学生の頃に聴いてたようなJ-POPを聴き直して衝撃を受けた
ーーそれが結成当初のことだった。
海:そうです。
ーーそこからは変わってきましたか?
海:変わった部分もありますが、基本的なところは今も当時も共通していると思います。
ーーということは、変わってきた部分とそうでない部分がある。
海:はい。原点からいろんな影響を通っての今だと思うので。
ーーデビュー作の『The SHOW』と今作の『Cigarette & Alcohol』での変化というと?
海:デビュー作の当初はceroなんかの国内インディーにも興味を持ち始めた頃で。ああいう楽器構成の音楽を今まであまり聴いてこなかったので、音数の多さだったり、管楽器の入れ方だったりで、影響を受けた部分はありますね。それからまたさらにさまざまな音楽に触れて。去年の秋から冬ぐらいにMr.ChildrenとかYUKIとかaikoとか、自分が学生の頃に聴いていたような所謂J-POPを聴き直したんです。そしたらこれがかなりの衝撃的で。
健介:衝撃だったね。
ーーどう衝撃的だったんでしょう?
海:海外や日本のインディー音楽とか、ちょっと格好よくて洒落たことをやっている人たちをずっと聴いていて、王道でキャッチーなものはダサいといったような、ひねくれた概念が一時期自分の中にあって。でも、それがこの歳になって改めてJ-POPを聴き直したことによって壊されたというか。王道の中でも格好いいことはいくらでもできるし、むしろそれは難しいことなんだって気付いて。そこに挑戦していきたいなって。
健介:実際、みんな中学校の時とか、大好きだったんですよ。頭おかしいぐらい聴いてたから(笑)。
海:そう、みんな通った道ではあるんですよ、やはり日本人だし。
健介:でも、中学校の時はやっぱり歌にしか耳がいってなくて。改めていろいろ音楽を知ったうえで聴いた時に、全部がいちいちいいんですよ。抜け目ないなと思って。
田口:抜け目ないね、ほんとに(笑)。
海:アレンジとかとてつもなく凝ってるもんね。自分たちももっと広い意味での音楽という表現の捉え方をして、色々なことにチャレンジしていきたいし、チャレンジしていけるのではないかと思って。
ーーなるほど。それはいわゆる音楽的に直接影響を受けたというよりも、音楽にどう向き合うかとか、どういう風にバンドをやっていくかみたいなところで刺激になった部分が大きかった。
海:はい、そうです。
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