デビュー前にロサンゼルスでコライティング
――上京した後に、ロサンゼルスへはどのような流れで行くことになったのですか?
川口 : しばらくは自分でブッキングしてライヴをやっていたんですけど、どうしても自分のライヴにエンターテインメント性が欠けていると感じてきたんです。周りの人に相談してみたら、“なにはともあれ曲だよね。洋楽を聴いてみれば?”って言われたんですよね。それまでまったく聴いたことがなかったんですけど、すごくハマってしまって、洋楽ばかり聴くようになりました。シンガーが発するパワーだったり、太い音の鳴り方、きれいな音の広がり……。自分では全然わからなくて形にすることができませんでした。悩んでいた時にソニーのスタッフさんに誘っていただいたんです。“ロサンゼルスで、日本でいう作曲家のようなトップライナーの人と"コライト"っていう曲の作り方でやるっていう話があるんだけど、行かないか?”って。それでロサンゼルスでプロデューサーの方やトップライナーの人とお会いして、コライトがスタートするっていう流れですね。
――そこでマーティ・ジェームスさんとお会いすると思うんですけど、彼の印象はどうでしたか。
川口 : 彼は大きいんですよ。背が190cmとかで、骨格もすごくて、ドーン!っていう印象が最初にありました(笑)。それにすごくパワフルで、エネルギッシュな方で、会った時から元気いっぱいで。そういう意味で言うと、玉置さんのような雰囲気に近いのかもしれないです。
――コライト作業はどうやって進めていったんですか?
川口 : まずは作業するメンバーでおしゃべりをすることから始めますね。大体、1日に1曲くらい作っていくんですが、作業するうちの半分くらいはみんなで他愛もない話をします。ある意味これもセッションのひとつに含まれていて、ここで楽しいトークができないと、いいセッションじゃなかったっていうジャッジを下されるくらいなんです。僕も拙い英語ではありますが、プロデューサーやトップライナーとコミュニケーションをとりながら、メロディーや歌詞の方向性を決めていきました。それで僕が歌ったり、プロデューサーの人がアレンジをしたり。日本での曲作りと比べて、いい意味でゆるい雰囲気で作業が進んでいきますね。
今の自分をちゃんと表せているEPになった
――今回のアルバム『Departure』は、R&B、ラテン、バラードなど、多様なタイプの曲が揃っていて、ヴォーカルもすごくいろんな表情を見せていますね。
川口 : そうですね。自分の持っているものを含め、今後やっていきたい音楽の意志は表明できたかなと思います。その初めの足がかりというか、それにふさわしい曲を選びました。
――1曲目の「Summers Still Burning」はすごく夏っぽい曲ですけど、どういうイメージで作っていったんですか?
川口 : 1曲目は、とにかく夏の曲を作ろうと。僕の中の夏は、常夏の国というか、海だったり、ヤシの木だったり、カラッとしたイメージがあったので、ラテンがいいんじゃないですか?って話になってできた曲です。
――最後のバラード曲「two prisoners」は、歌詞が内面の弱い部分を表しているように思えますし、ヴォーカルもすごく繊細に歌っていて、すごく深い曲になっていますよね。
川口 : この曲はstarRoさんと一緒に作ったんですけど、ちょっと作業が難航したんです。派手にしようとして、これじゃないなっていうのが続いたんですよね。それでもう一回会って、もっと音数を少なくしてシンプルなメロディーで、強めの歌詞を打ち出すっていう風に方向転換しないかって話になって。家に帰って一人で考えつつ、いろいろ悩みながら書きました。僕という人間の一番深い部分にあるものは、この曲の歌詞のような世界観というか。もちろん明るい時も幸せな時もあるんですけど、こういう世界観でいるのが落ち着くというか、ちょっと暗いですよね(笑)。それも僕の一面として入れたいなっていうのがありました。夏っぽくて明るい1曲目とはまたガラッと違う雰囲気になっていると思います。
――すごく正直な歌詞なんですね。
川口 : そうですね。とっても正直です。
――最初のアルバムで、そういう正直な部分を出せたのは大きいんじゃないですか?
川口 : 「falling down」や「two prisoners」の世界観は、もともと僕がLAに行く前までに持ち合わせていたもので作っているんです。一枚目のアルバムでそれを入れられたというのはうれしいことですけど、他の曲はLAに行ったからこそ得た音楽性だったりスキルで表現していて、そっちの方が僕にとっては大きい価値があるものなんです。だんだん成長したものというか、今の自分というものがちゃんと表せているというか。そういうEPになったなと思います。
目標はすごく高く持ってグラミー賞、でも当然ですが日本で僕の歌を届けたいです!
――川口さんの曲は、歌詞が英語だけだったり日本語と英語を織り交ぜていたりしますよね。英語が多いのは、最初から海外を視野に入れている、ということなんですか?
川口 : たぶんこういうジャンルだと、英語を使えるのが自然なところもあるのかなと思うので、取り組みました。今後世界にどうこうっていう強い気持ちがあるわけではないんですけど、いろんな人に届けばいいなとか、伝わる人がいる地域を広げるとか、というのはありますね。
――アーティストとして、今後の目標や目指すものはありますか?
川口 : 僕のキャリアの中で得られるものではないのかもしれないんですけど、世界的に認められる賞はすごく欲しいなと思いますね。グラミー賞だったり。アーティストとしてではなくても、作曲や作詞という世界でも生きて行けたらいいなという思いもあります。でもまずは日本で支持されるアーティストを目指していきます。
川口レイジ
公式サイト
デビューEP『Departure』発売中。
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