これまでの日本のロック観、バンド観をくつがえす、スタイリッシュでエンターテインメントな4ピースバンド、“アイドラ”ことI Don’t Like Mondays.(以下、IDLMs.)。あらゆるジャンルとすべてのポップを融合し、ダンサブルにLOVEを届ける彼らは、一見、流行の伊達男。だがその中身は、誰も真似できないIDLMs.の音楽を追求するストイックな音楽集団だ。9月28日にリリースした2ndアルバム『FASHION』を軸に、悠(Vo.)、兆志(Gt.)、謙二(Ba.)、秋気(Dr.)が、IDLMs.の流儀(=FASHION)を語ってくれた。
インタビュー・文/阿部美香
I Don’t Like Mondays.スタイルが明確になったからこそのアルバム
――ニューアルバムのタイトルは『FASHION』。スタイリッシュなIDLMs.にとても似合うタイトルですね。
悠 日本の音楽シーンで“ファッション”というと、ちょっとチャラくて表面的に聞こえるけど、それは違うと思うんですよね。ファッションも音楽も、楽しむことで日常に彩りが出る、僕らのクリエイティブには欠かせない要素。そして「ファッション」には“流行”のほかに、“流儀”という意味もある。僕らのスタイルが明確になった今だからこそ、“IDLMs.の流儀”をサウンドも含めて表現したいと思いました。
秋気 そこで意識したのが“アルバム聴き”。シングル曲も新鮮に聴けるよう、新曲もデモの段階から曲順に当てはめてみて、アレンジを変えたり、曲自体を差し替えたり、流れを決めて完成させていきました。何度も聴きたくなる、シンプルで心地よいサウンドにこだわりながら。
悠 全体が1枚のシングルのように聴けるイメージですね。「シングルを集めて足りない曲数を新曲で埋めようか」では、アルバムの意味がない。新曲もアルバム曲として価値が出るよう、心掛けました。
――例えばどの曲が象徴的なアルバム曲ですか?
悠 歌とギターがメインの「Marry me」とか。今までにない挑戦ですね。
秋気 これが前作の『TOKYO』に入るなら、ドラムも入れてもっと派手にして……と思うけど。『FASHION』でこの位置に来るなら、シンプルなほうが絶対にいいと。
――テクノテイストの「Game over」やシャッフルしている「Don’t look back」など、これまでのIDLMs.に曲調もありますしね。
悠 はい、今まで以上に音楽的な幅を広げつつ、これもIDLMs.サウンドなんだと言い切れる地盤が僕らのなかに固まったからこそ、やれた曲ですね。
兆志 みなさんが思っているIDLMs.のイメージは、『TOKYO』なら「FIRE」、『FASHION』なら「Crazy」のような踊れるパーティーサウンドだと思うけど、もともと僕らは好きな音楽はみんなバラバラ。そこで共通項を見出して試行錯誤してきたからこそ、IDLMs.らしいサウンドというのが固まって、今も進化してるんだと思います。
サウンドへのこだわりから見るI Don’t Like Mondays.の流儀
――では、そのIDLMs.らしいサウンドには、各楽器でどんな流儀があるんでしょう? 例えばギターの兆志さんは、レスポールしか弾かないそうですね。軽やかなカッティングがメインのパーティーサウンドで、普通は選ばないですよ、レスポールは(苦笑)。
兆志 そうですね、ストラトキャスターを使えば、どんなにラクかと自分でも思いますね(笑)。
悠 でも逆に、「FIRE」をストラトでカッティングすると、あの音は出ない。僕がライブで弾くテレキャスターと対照的なサウンドを兆志が出すから、いい。それがIDLMs.のギターの流儀かな。
謙二 僕ももともとはパンクが好きだから、ゴリゴリしたフレーズを派手に弾くのもアリかな?とも思うんですが、IDLMs.の曲でいちばん大事なのはメロディーの良さ。それを崩さないためには、いい音でできるだけシンプルなフレーズで、しっかり曲を支えたい。ただ弾きまくればいいってもんじゃないんだぞ!と(笑)。それが僕のベースの流儀ですね。
秋気 ドラムの流儀は……そうですね、例えばローリング・ストーンズは、僕らのおじいちゃんと言っていい世代になっても、全開のライブをやってますよね。IDLMs.もそうで、40代、50代になって、年をとったから昔の曲が弾けないっていうのはイヤなんです。だから、先を見越した大人のフレーズを意識しますね。
悠 1曲1曲、すごく苦労してみんなで考えながら作るから、5年後、10年後に“やりたくない曲”ができちゃうのはイヤ。ガチャガチャした曲は全員、好きじゃないしね(笑)。
秋気 かといって、若さがあるうちの勢いもなくしたくない。僕はメタルが好きなので、本来は手数が多いドラマーなんですけど(苦笑)、後になって「あのとき作ったフレージングが、やっぱりベストだった」と思えるよう、シンプルにひとつひとつの音を大事にしてます。
I Don’t Like Mondays.はなぜラブソングを歌うのか?
――そのIDLMs.サウンドに乗る、歌。IDLMs.の曲は、悠さんが作詞されていますが、基本的にほぼすべてラブソング。なぜIDLMs.はラブソングにこだわるんですか?
悠 ……うーん、女の子が好きだから?(笑)
一同 (爆笑)
秋気 でも、好きじゃないラブソングというのもありますよね。「おまえ、俺についてこい!」みたいな、オラオラ入った人が悪ぶってるようなのは、IDLMs.らしくない。
悠 そう、僕の歌詞って主人公は全部自分なんですよ。もちろん、事実とは違う妄想の中の自分もいますけど、音楽のことを考えるのと同じ比率で、恋愛や女の子を思っていて、たまに真面目に人生を考える自分がいる。それがそのまま、曲に反映されていると思うんですよね。
――悠さんの性格も、曲に滲み出てる。優しいラブソングが多いのはそのせいですかね。
兆志 うん、優しいよね。
謙二 悠に限らず、メンバーにはひとりもオラオラがいない。全員、女の子に優しいんですよ。
悠 だからといって、草食系男子も苦手。だからIDLMs.はロールキャベツ系かなと(笑)。オシャレなキラキラした音楽を目指してると、やっぱり恋愛のことを歌いたくなりますよね。
謙二 ダンサブルでファンキーな曲調で、人生の苦悩とか歌えないからね(笑)。
悠 そうそう。僕の歌詞も音から受けるインスピレーションが8割だし。
兆志 歌うのは悠だし、悠の歌いたい歌詞がIDLMs.のサウンドとも合ってるから。
謙二 でも日本にあんまり、男性のラブソングで僕らのようにストレートに恋愛を歌っている人っていないよね?
悠 それは、僕が海外にいた経験があるからかな。日本の男性って、恥ずかしくて素直に好きとか言わないじゃないですか。その気持ちも分かる。だから、あえて日本人がやらないストレートなラブソングを歌いたくなっちゃうんですよ。リズムに乗りやすいシンプルな英語詞と日本語詞にこだわって、誰もが歌えて共感できる曲にしたいんですよね。
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《ニューアルバム『FASHION』メンバーおすすめの曲は?》
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