「言葉と自分との距離が近くなった」
――ヒトリエの曲は、歌詞の言葉遣いが独特だなと思っていました。wowakaさんがこれまでどういう言葉に影響を受けて来たのか興味があります。好きな作家や詩人はいますか?
wowaka:あー……それはあんま聞かれたことないですね……。そしてあんま思いつかない(笑)。え、なんだろ、何読んで来たかな?
イガラシ:でも、びっくりするくらい本読んでるよね?
wowaka:そう……かなあ?
イガラシ:読んで来てる本なんでしょ? あそこに置いてあるのは(※おそらく自宅の本棚のこと)。
wowaka:読んで来てる本だよ、あれは。
イガラシ:……え、めっっっちゃ読んでない?
一同:(笑)
――それは、小説や文学系の本ですか?
wowaka:小説ですね。あ、ミステリーが好きですね。アガサ・クリスティー好きです。(自分の詞と)何も繋がりを見出せないけど(笑)。ハリー・ポッターも好きだし。でも、日本文学じゃないからな、言葉のルーツはそこじゃないんだよな、たぶん。
イガラシ:純文学みたいなのも置いてあるじゃん。
wowaka:ああ、まあ置いてるね。宮沢賢治とかすごく好きだよ。……もっと辿ると、『ズッコケ三人組』とか好きでした。
ゆーまお:すげー辿ったね。
wowaka:なんか今ポッと思い出した。『かいけつゾロリ』とか。そこらへん貪るように読んでたな。『パスワードシリーズ』とかわかります? 青い鳥文庫の、小学生向けの簡単なミステリーなんですけど。小学校の図書館にめっちゃ置いてあって。それが面白くて、読んでましたね。
イガラシ:それが作詞のルーツなのかな?
wowaka:いや、わかんない(笑)。うーん、言葉ねえ……。
ゆーまお:たしかに、wowakaの歌詞を「〇〇っぽい」みたいなの感じたことないし。普通そういうのあったりするじゃない?
wowaka:あー……。なんだろう……。でも、そもそも言葉をそれまで信用してなかった側面があって。だから、「勘」ですね。「美意識」だけある状態なのかな? 言葉がそこに概念としてあって、そこから感じ取る何かみたいなのってあるじゃないですか。自分はそっちの方に重きを置いてる側面がある。これまでは言葉というものを、そういう感覚で捉えてた部分が大きかったですね。
でも、今回のアルバムは、じゃあその言葉を言ってたのは誰なんだ?っていうところに改めて立ち返って。これを思って口に出して喋ってんのは誰なんだ? それは自分なんだと、wowakaなんだと。当たり前なんですけど、そういうことに改めて気づいて。そこで言葉と自分との距離がすごい近くなった感じがします。「意味」も含めて、自分が発する言葉に生々しさが宿ったというか。
だから、言葉そのもの――文学だったり、ミステリーとか小説だったり――に単体として「影響を受けた」っていう捉え方は、たぶん自分の中にないような気がするんですよね。日々触れてきてるものの中で良いなって思う「勘」みたいなところで取捨選択してる。今改めて考えてみて、そんくらいの認識なんじゃないかなとは思いました。
……そんな質問されたことなかったからすごく嬉しいです。
ゆーまお:wowakaの言葉は、どんなに自分が苦しくてもガンガン出て来るんだよね。wowakaって、言葉に対して強いんだなって俺もずっと思ってた。その強さがあった上で、感覚で選んでるんだろうなって思ってたから、今wowakaが「勘」っていう言葉を使ったことに、すごい納得。
wowaka:知識とか語彙力は、子どもの頃の貯金でそれなりにあるのかもしれない。それを感覚で使ってるというか。この言葉が好きとか、文章や言い回しや文法が好きとか、そういうのは別にない気がする。今の自分の状態を示す一番良いものを勘で選んでるという感じですね。
――感覚で書いていくということは、ハマるハマらないの選択を本当に自分でやらないといけないわけですよね。すると、書いている時に苦しい瞬間が多くなると思うんですが。
wowaka:そうですね、自分で選ぶしかないんですよね。これは気持ち良いし、字面も美しいな、って思ったら採用してます。あ、字面は結構気にしますね。
――歌詞カードにこんな風に出たら綺麗だろうな、とか考えますか? あるいは、字面が気に入らないから書き直すとか。
wowaka:それはよくありますね。
――なるほど。メンバーのみなさんは、本は好きですか?
シノダ:イガラシはよく本読んでるじゃん?
イガラシ:本は読みます。ミステリーとSFの混合みたいなのが好きで、森博嗣(もりひろし)さんとか伊藤計劃(いとうけいかく)さんとか読みますね。
wowaka:ガラシの方が俺より読んでるんじゃない? 普段スタジオとかでも読んでるし。
シノダ:車の中でも読んでるしね。
イガラシ:スマホが速度制限なんで(笑)。
ゆーまお:読む速度が二人(wowakaとイガラシ)は明らかにめちゃめちゃ速いもんね。
シノダ:めちゃっくちゃ速い。
wowaka:確かに。それは読んできた量なのかな?
イガラシ:そうだと思う。俺はちっちゃい頃はそんなに読んでなかったけど。
wowaka:俺は、1~9歳までがたぶん人生で一番本読んでたと思う。
――シノダさんとゆーまおさんはどうですか?
ゆーまお:俺はスッカラカンです(笑)。
シノダ:俺は、小中学くらいん時に、『セイバーマリオネットJ』をよく読んでましたね。あかほりさとる全盛期のラノベです。……やめましょうか、この話(笑)? 高校時代は、大槻ケンヂ読んでから町田康読んでましたけど、そっから掘り下げたりはしてないっすね。漫画の方が読みますね。漫画は、惰性で読むくらい好きですね。自分で描いちゃうくらい好きなんで(MEETIA内にて『地球物語』連載中)。
――シノダさんの漫画は、すごく描写が細かいですよね。
シノダ:細かく描いちゃうのは、たぶんまだビビってんだろうなと思います。文字が多いのも、5ページ以内で表現しようとした時に、技術がなくてまだ文字に頼らざるを得なくなる。
――でもあの圧倒的な文字量にはすごく熱を感じるので、個人的には好きです。
シノダ:じゃあもうちょい増やします(笑)。
nextpage「ヒトリエの運命的な出会いについて」。
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