秋葉原重工(三日目 西よ-09a)
テクノからはこちらの出展者さまをチョイスさせていただきました。秋葉原重工さんのウェブサイトには「企業理念」「会社概要」「役員一覧」などの項目があり、ぱっと見、企業なのかと思ってしまいますが、よーく見ると結構な頻度でボケています。超真剣に遊んでいるその姿勢、とってもステキです!あまりにもクオリティの高いウェブサイトに一目惚れした我々編集部。今回は代表のTakayuki Kamiyaさんにお話を伺いました。
ーー楽曲はもちろんホームページのデザインから、アートワークスまで独自のスタイルが興味深い秋葉原重工さんですが、この「秋葉原重工」というコンセプトの発想はどこから得たのか、教えて頂いてもよろしいでしょうか?
Kamiya:秋葉原重工は元々、同人音楽サークルとしてではなく、秋葉原の『MOGRA』で開催するクラブイベント・パーティーとして活動を開始しました。開催場所が秋葉原であること、「ダンスミュージックのジャンルとしてのテクノ」と「技術という言葉の意味でのテクノ」をかけていること、そのジャンルとしてのテクノの中でもとりわけ音が派手だったり速い「ハードテクノ」と言われるジャンルの楽曲を中心にしたいと考えていたこと、あと、当時インダストリアルテクノと呼ばれるようなジャンルの楽曲が自身の周りで少し流行っていたこと…などをうまくまとめた上で挙がったタイトル候補が「秋葉原重工」でした。要素がストレートにまとめられ、一度聞いたら忘れない、企業名のようなインパクトのある日本語タイトルということでこれに決まりました。名前のイメージから企業のような体裁にしたいと考えてロゴやサイトを準備したり、「秋葉原」や「重工(業)」という言葉のイメージによってDJやLIVE、VJが打ち出していく音や映像の表現を拡張していったり、初めてお会いする方から『秋葉原重工』という名前なら聞いたことがあると言っていただけることも多く、僕自身が様々な局面でこのタイトルから新たな発想を得たり助けられたりしています。
ーー秋葉原重工を創立されたのが2010年10月で、その頃には、Takayuki Kamiyaさん自身は西日本側で生活していたとお聞きしております。そんな中、東京でのコミックマーケットに出展する事になった経緯や、秋葉原MOGRAでの自主イベントを行うに至った理由を教えてください。
Kamiya:一緒に活動するメンバーの多くがそれぞれに楽曲制作やデザインなどで同人即売会で作品をリリースしていたため、自分は未経験でしたがメンバー間ではノウハウは既にある状態でした。そのため、秋葉原重工に同人音楽サークルとしての側面を持たせ、CDのリリースをすることになる流れも、それほど不思議なことではなかった印象です。2012年秋のM3で『秋葉原重工コンピレーション01』をリリースして以降、M3やコミックマーケットを中心にリリースを続けています。現在はM3でのリリースはアーティストや小規模な企画に絞り、コミックマーケットではお祭り的なコンピレーションと分けて展開しています。東京での開催にこだわった理由は2つあって、一緒に活動をしたい人たちがいたことと、広島での活動があったからだと考えています。現在一緒に活動するメンバーは10人いますが、多くのメンバーは以前から僕がDJやVJを見てきて、一緒にやりたいと思って直接誘ったりメンバーが取り次いでくれてお誘いした方がほとんどです。多少の入れ替わりもありましたが、自分が一緒に活動したいと願った人たちとほぼ変わらないメンバーで5年間活動を続けることができていて、これだけでもとても嬉しいことだと感じています。
2010年に東京から広島へ引っ越したため、広島でも何かできないかと模索していたのですが、どうしてもテクノだけとなると、やってきたばかりの自分にとっては友人知人の少なさもあって活動が難しい状況に感じられました。半年ほど生活していると、広島で面白い音楽活動を続けている友人ができ、そのメンバーで盛り上がり始めていた広島のアニソンクラブイベントのシーンに『魔Q少女M∀STERあらしZ』という、アニメやゲームの要素をミックスしたイベントを起ち上げました。そうすることによってアニメやゲーム寄りの内容は広島で、テクノなどでやりたいことについては秋葉原重工で…といった感じに、自分が違う面を出す機会として、この2つの活動を2015年に東京に戻ってくるまで機能し続けました。また副産物的に、広島と関東の友人知人との間で相互に影響を及ぼす機会にもなりました。ちなみに私個人は2008年までは愛知、2009年は大阪と東京、2010年〜2013年は広島、2014年は兵庫(神戸)、そして2015年からは東京に戻ってきています。
ーーコミックマーケットというイベントにどのような印象をお持ちですか?
Kamiya:参加者それぞれがそれぞれの形で好きなものに対する表現をすることができる機会であると考えます。また、個人的にはコミックマーケットなどの即売会などでしか会えなくなってしまった友人もいて、様々な形の交流のきっかけにもなる機会かとも思います。
ーー「今回のコミックマーケットに向けても、新作の準備を進めている」とお伺いいたしました。こちらの作品の魅力、聴きどころ、制作にまつわるエピソードなどありましたらお聞かせください。
Kamiya:新作は『秋葉原重工コンピレーション06』です。全20曲収録でシリーズの最多の楽曲数となり、初めて聴く方にはもちろん、これまでの作品が良かったという方にも引き続き楽しんでいただけると思います。試聴もありますのでこちらの告知ページを是非チェックしてみてください。本コンピレーション収録楽曲にまつわるエピソードとしては、本作に収録されているある楽曲のRemix企画をあるサークルと共同で企画しています。ただ、現時点ではその企画が未公開であるため詳しくはお伝えできないのですが、10年ぶりの企画となるためその思いもひとしお…といった感じです。秋葉原重工からも告知をしますので、是非新譜を聴いて、引き続きチェックしていただけますと嬉しいです。
ーー「秋葉原重工」というイメージを維持していく上で、曲の表現に何か制限が起きたりすることはないのでしょうか?
Kamiya:これまでに出演いただいた方がほとんどなので、イベントの印象であったり、そうでない方には『秋葉原重工』や『秋葉原住宅』という名前からのイメージをどこかで意識していただきつつ制作をしていただければとお伝えしています。クリエイターのそれぞれの解釈と表現を大事にしたいと考えています。
ーー最近では、細江慎治さん代表の会社、株式会社スーパースィープさんからリリースされている『バトルガレッガ コンプリートサウンドトラック』の特典音源を手掛けていたとのことで。こちらはどういうきっかけがあってのコラボレーションとなったのかお聞かせいただけますか?
Kamiya:秋葉原重工には株式会社スーパースィープさんと『バトルガレッガ』のそれぞれに縁が深いメンバーがいまして、ゲームリメイク、そして株式会社スーパースィープさんからサウンドトラック発売となった時にこの企画の提案をいただき、『バトルガレッガ』のBGMが持っているテクノのエッセンスを秋葉原重工の解釈でリミックスする面白さ、それを株式会社スーパースィープさんを含めた関係者で共有できたので、実際にコラボレーション企画として動き出し、ディレクションとリミックスで参加させていただきました。この企画はサウンドトラックやリミックスだけでなくゲームのリメイク含めて、関わった全ての人の積年の思いと人の縁を感じる素敵な一つの大きな機会だったと感じます。
ーーこの記事の読者の中には「テクノって実際どう楽しめばいいの?」と思う方々もいると思います。そういった方々に向けて、テクノの面白さや楽しみ方について一言いただけますでしょうか?
Kamiya:様々なジャンルがありますが、とりわけテクノは自由度の高いジャンルではないかと思っています。なので、一括りにテクノとは言えど様々なサブジャンルがあるので、まずはテクノに限らず色んなものを聴いてみることが良いのではないかと思います。秋葉原重工コンピレーションシリーズも色々なテクノを収録していますし、そういったコンピレーションCDなど探して色々聴いてみるのが良いかもしれません。あとはプロセスとしては他のジャンルと何も変わりませんが、気に入った曲があったらその曲が使われていたりするDJ Mixを探して聴いてみたり、そのアーティストやレーベルを芋づる式にどんどん調べていき、あとは気になる出演者の出るイベントを見つけて遊びに行って全身を使って音を感じるときっと楽しいと思いますよ!個人的な楽しみ方としてはリズムに乗ること加えて、この先にどんな展開が待っているのかを期待すること、クラブであればそこにある音と光の空間の雰囲気を感じることですね。
ーー最後に、今回のコミックマーケットについての意気込みをお聞かせください!
Kamiya:今回も無事に新譜もリリースできる予定ですし、今は来年2月18日に開催予定の秋葉原重工第18回の告知もできるよう現在準備を進めています。今後も続けていきますので是非楽しみにしていただけると嬉しいです!そして当日は皆様にブースでお会いできることを楽しみにしております!
wavforme(三日目 西ら-16ab)
M3記事にてお世話になったwavformeさん。同人音楽界隈のクラブミュージックでダントツのオススメです。アートワークもめちゃくちゃオシャレ。前回と同じく、代表のSoUさんにお話を聞きました。彼らの音楽は、「同人活動」に対するステレオタイプなイメージを覆してくれるでしょう。
ーーwavformeさんの作品には、クラブミュージック系が多いと思います。これは偏見かもしれませんが、コミケとクラブミュージックでは、あまり客層が被るというイメージがありません。実際にはどのような方がブースにやって来るんでしょうか?
SoU:スペースに足を運んでくださる方は大方音ゲーか、wavformeの活動を始める前から所属しているインディーズレーベルOtographic Musicのリスナーの方、都度収録されるアーティストの元からのファン。大まかに分けると大半がこのどれかになるのではないでしょうか。特に音ゲーに楽曲を提供しているアーティストが多いことと、wavformeで楽曲を出した後に音ゲーに提供をしたアーティストもいるので、商業(音ゲー)に進出していることは大きな理由だと考えています。願望としては根っからのクラブミュージック好きでまだwavformeを知らない、収録されたアーティストを知らない、そういう方にも興味を持って手にとってもらえるパッケージングが毎回出来るようにしていきたいです。
ーーSoUさんがコミケに出展することになった経緯はどのようなものでしたか?
SoU:OtographicはTrance, Progressiveを主にリリースするレーベルです。個人的にはそれ以外のジャンルのクラブミュージックも好きだったので、別にジャンルレスなレーベルを運営して同じ形態でネットリリースする考えがありました。実際は稼働まで進められなかったんですけどね。レーベルの立ち上げを断念してから数年して、ようやく動かしてから目指したいビジョンが固まってきたことと、コミケ会場の活気と直に自分たちの活動をサポートしてもらえる方と会える環境に改めて魅力を感じたことが出展することになった大きな理由です。Otographic Musicでデザインをする前から同人音楽はチェックしていたのですが、当初はクラブミュージックをガッツリやってきたし、活動する場所が少し違うのかなと思っていました。これはただの考え過ぎだったんですけど。
ーーコミケ、M3など同人音楽シーンは、メジャーな音楽シーンと比較してどういった特性や良さがあると思いますか?
SoU:一つ前の話でも記述した通り一番は直に自分たちの音楽を手にとってもらえるのが魅力です。「楽しみにしてます」など直に反応をもらえるのはクラブ以外だとなかなか無いので嬉しいです。もう一つはメジャーシーンとは全く異なりセルフプロデュースが主体の独自マーケットなので、目指したい、作りたいものを1から10まで自分たちでこなしてパッケージングをする必要があるのと、その中で創意工夫したり個性を磨けるのが良い所だと考えています。
ーー今回のコミケで頒布する新譜、もしくはイチオシの作品について教えてください。
SoU:新譜であるPARANOID EUPHORIAは多幸感を一番のコンセプトにしたCDです。毎回コンピレーションCDの制作にはルールというか制限を何かしら設けているのですが、今回はTrance特にサイバートランス要素を含める、という制限を設けています。サイバートランスというのはジャンルカテゴリとしては存在していないのですが、過去にサイバートランスというコンピレーションシリーズがメジャーレーベルからリリースされています。当時の曲を知っている方は思い起こしてもらえるように、知らない方には新しい発見になってもらえるのではないでしょうか。実際に収録している曲はTrance以外にもDubstepやElectronicaが主体のものもあるので、今だから出来る表現も楽しんでもらえると思います。
ーーwavformeさんは毎回ジャンルやルールなどを決めてアルバムを作っているとのことですが、今後注目しているテーマがあれば教えてください。
SoU:夏に開催したコミケで出した80’s縛りは個人的にもう一度練り直しをしたいなと思っています。いつも次はこれをやろうとはあまり考えていなくて、初期メンバー内で内容をある程度揉んでから全体の方向性を決めているので熱量のある発言がそのまま採用されたりします。前回のM3で頒布したコンピレーションCDはまさにこの流れで決まりました。アーティスト・リスナー共に新しい出会いを。というのを活動理念にしているので、ストレートなものより既存のジャンルと制約を組み合わせたり少し捻ったテーマを出せれば楽しんでもらえるのかなと考えています。
Diverse System(三日目 西れ19a)
そして大トリは、同人音楽界の重鎮、Diverse Systemさんです。M3記事でも超気さくにインタビューに答えてくれた代表のYsK439(よさく)さん。YsK439さんはコミケのスタッフ歴も長いので、初めてコミケに行く人へのアドバイスもいただきました。コミケは、事前準備とカタログチェックが重要です!
ーーコミケに出展、スタッフとして活動することになった経緯を教えてください。
YsK439:当時流行の音楽ゲームやってたらそこで知り合った人に誘われた為で、コミックマーケット、という物の認識も薄いままスタッフをやることになりました。こんな事言ったら怒られそうですけど、参加したときは「コミケ=大声を出せる場所」ぐらいの認識しかなかったです。Diverse Systemは同人サークルとして出来た訳ではないので、サークル出展の経緯は、「まあ、スタッフやってるし、これも同人という物の括りらしいし、出てみるか」という感じでした。諸々の認識が薄いまま流れで出てきたって感じですね。
因みになんですが、上記文章からも解る通り、Diverse Systemより先にコミケットのスタッフになっています。
ーーコミケというイベントにはどういった印象がありますか?
YsK439:箇条書きで。
・お祭り感がある
・人がめっちゃ多い
・いろんな人に会うし、久しぶりの人も多いから楽しい
・色んなクリエイティブの意地が見れるので楽しい
・リアルゴールドめっちゃ飲める(スタッフ用のドリンクとして配布されてる)
ーーコミケに初めて行く読者へ、ブースのまわり方のコツ、楽しみ方のコツを教えて下さい。
YsK439:
1.
googleで「はじめて コミケ 事前準備」でググって、それっぽいページ読んできて下さい。その時だけ「コミケってこんなに楽しい!」っていう記事飛ばして下さい。冷静に考えて「1日に平均20万人も居るような所に単身突っ込む」んですから、楽しかろうがなんだろうが事前準備が大事です。マジです。お願いします。楽しいのは健康と準備が前提です。
2.
「コミケカタログ」は一般参加者の方々に購入して頂く義務は無いのですが、可能な限り購入して、読んでから来て下さい。そこに本当に大事なこと全て書いてあります。コミケはゲームと違ってチュートリアルなんて存在しないので、事前知識が物を言います。その上でみんな優しいから注意喚起してくれてるのです。「何だこのタウンページみたいな厚さは」と思わないで下さい。読む所、そこまで多くないです。カタログ、読んでから来て下さい。お願いします。
3.
「はじめて」なら正午現地着ぐらいに来るのがいいです。最初からがっつり買いに来るのではなくまずは下調べに来ましょう。1度ぐらい。戦争も索敵から始まります。で、「時間足りなかった、楽しかったなあ」という気持ちになったら、次回はキチっと準備してきましょう。
以上3つぐらいを最初にやると、次のコミケ、その次のコミケと健康で安全に楽しめるようになるはずです。それと、廻り方のコツと楽しみ方のコツですが、「周りに流されず、自分が好きなジャンルを、他人の目を気にせずふらつく」が最高です。流行り物ならそれでも。流行ってなくてもそれでも。自分の同人を謳歌しましょう。貴方の性癖含め誰も邪魔しませんから。
ーーコミケ、M3など同人音楽シーンはメジャーな音楽シーンと比較してどういった特性や良さがあると思われますか?
YsK439:良い悪いは別として「全て自分の責任においてのクリエイティブができる」って事ではないかなと思います。二次創作って言う「誰かに言われるまでクロにならないグレーゾーン」まで含めて。僕の立場で言うのもアレかもしれませんが、誰にお伺い立てるわけでもない、自分の信じる事が自分の責任が出来て、それを発表できるんですから。誰にも守られないから精神力の強さは試されますが、誰のバイアスもかかってない自分の作品が出せる場所、というのは稀かと思います。事務所に所属したらそんなこと余程じゃないと出来ないと思うので。ちなみにDiverse Systemにも所属アーティストが居るには居るんですが、彼らには「好きにやってこい、夕飯までには帰ってこい」って言ってあります。そういう指示で僕が言いたいことが解ってくれる素敵な連中です。
ーー今回の冬コミでしか頒布しない作品などがあれば教えてください。
YsK439:個人通販で頒布してる手前、厳密には無いんですが、会場及び個人通販限定のダウンロードカードを頒布予定です。ID/PASS管理でサーバーまで自前の代物を予定してます。
ーー音楽系に限らず、コミケで気になっているサークルさんなどあれば教えてください。
YsK439:あえて「コミケで」という書き方なのでこう書きますが・・・3日間、知人に挨拶をして時間が過ぎていくので、ここ最近は「このサークル好きだな探し」っていう徘徊タイムが無いので寂しい感じです。スタッフもやってるんで尚更そういう時間ない感じなんですが。強いていうなら評論エリアを心穏やかに廻りたい。
ーーコミケ参加への意気込みをお願いします!
YsK439:何時も通り、思いついたやるべきことをやるだけです。それが一番正しいと思ってます。
いかがでしたか?
全13サークル、文字数にして約三万文字の分厚い記事になりました!!!
読んでるだけで目の前に「コミケ雲」が発生するような気がしてきませんか?
そうです、アツいんです。
音楽を取り巻く環境は日々変化していますが、同人音楽は今もっともホットなトピックの一つといって良いでしょう。
そんな同人音楽における今年最後の一大イベントがコミケなんです!!!
ぜひ本記事を参考に、新しい音楽の熱気と出会ってください。
それでは、ファビュラスな年末を!!!
Special Thanks_A.K.
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