ボーカルのあんにゅとサウンドクリエイターの小幡康裕からなる男女二人組ユニット、コアラモード.。昨年結成5周年を迎えた彼らが、初のコラボミニアルバム『空色コントラスト』をリリースする。このアルバムは昨年末に立ち上げたプロジェクト「Coalamode.Labo 2018→2019 ~あれも Show! これも Show!~」の一環として制作された、コアラモード.の新境地を開拓する一枚だ。高橋久美子、島田昌典、武田真治、コレサワ、TAKUYA、伊藤俊吾(キンモクセイ)という6人のアーティストをコラボ相手に迎えた本作は、コアラモード.にどのような刺激と化学反応をもたらしたのか? 新たな挑戦となった『空色コントラスト』について、二人に話をうかがった。
Photograph_Takaki Iwata
Interview&Text_ Akihiro Aoyama
Edit_Fumika Ogura
新しい可能性を探るべく立ち上げた「コアラモード.ラボ」。
――今回のアルバム『空色コントラスト』は、2018年末から行われているプロジェクト「Coalamode.Labo 2018→2019 ~あれも Show! これも Show!~」(以下、「コアラモード.ラボ」)の目玉企画にもなっています。まずはこの「コアラモード.ラボ」について教えてください。
小幡康裕(以下、小幡) : コアラモード.としては2015年にメジャーデビューして、これまでにも色んな経験は積んできたんですが、ここであえて今までやってこなかったような「実験」にトライするような期間を作りたいと思ったんです。第一弾として演劇とコラボレーションしたライブ「コアラモード劇場」をやりました。あとは、これまでやったことがなかった自主企画での対バンイベントですね。意欲的に新しい可能性を見つけていきたいと思ってやり始めたのが「コアラモード. ラボ」です。
――「コアラモード.ラボ」の一環として、二人だけでパフォーマンスするライブシリーズ「ONLY TWO!!」も行っていますね。
あんにゅ : 二人だけで曲数もたくさんやるので、最近できたアップテンポな曲を二人だけでどう表現するのがいいんだろう? とか、そういう部分で新しいパフォーマンスの仕方が作られていきました。
――改めて二人きりでステージに立ってみて、お互いのパフォーマンスについての新しい発見はありましたか?
小幡 : ドラムとアコースティックギターとボーカルっていう組み合わせは飛び道具的なアプローチになってしまいがちなので、こういうライブがないとなかなかドラムを叩く姿を見せられなかったんですけど。今回はドラムソロのセクションもあったりして、確かに僕自身の新しい見せ方はできてますね。
あんにゅ : 二人だけだと、普段以上にアイコンタクトをしますね。
小幡 : そうだね。あとは二人っていうミニマムな編成でお客さんと向き合うと、より会場の一体感が感じられるような気がします。熱量が違うというか。あんにゅもエレキギターを弾いたり普段とは違うアプローチで演奏してるんですけど、歌い方も違ったりする。今回のアルバムの初回限定盤についているDVDには「ONLY TWO」東京公演の映像が収録されているんですが、「大旋風」でアコースティックギターを弾きながら転倒していて(笑)。
あんにゅ : 収録されると思わなかった(笑)。
小幡 : そういうステージングのエモーショナルさがいつも以上にあんにゅにも感じられましたね。
コラボ・アルバムという新たな挑戦
――二人だけでやるライブ企画の「ONLY TWO」に対して、今回のアルバム『空色コントラスト』は他のミュージシャンとのコラボ・アルバム。そこも「コントラスト」になっていますね。
小幡 : 言われてみれば、そうですね(笑)。共通するのは、どちらも今までやってこなかったということ。音源に関しては、今までずっとセルフ・プロデュースというのを大事にしてきたんです。
あんにゅ : そうだね。ドラム、ギター、ベースと全部小幡さんが演奏して。
小幡 : これまで曲によってはプレイヤーの方を呼んだこともあったんですけど、コラボレーションとして誰かとタッグを組むとか、プロデューサーにアレンジ含めてお任せするとかはなかった。ライブでは二人きりで、音源ではコラボして……と、やっていることは対極ですけど、どちらも新しい風を活動にプラスしたいなという気持ちでトライしました。
――今回コラボ・アルバムを作るという構想が生まれた段階で、どういう人達とコラボレーションしたいと考えていましたか?
あんにゅ : ありがたいことに、身近な方たちの中にやったら面白いんじゃないかと思えるミュージシャンがたくさんいたんです。ラジオを通してとか、TV番組で出会った方たち。あとはデビュー前から知っている友人。そういった所縁のある方をコラボ相手としてお願いしました。
小幡 : 僕たち自身も、この人とやったらどうなるんだろう? ってワクワクしたかったんです。コアラモード.にないものを持っていて、この人とやったら絶対に化学反応が起きるだろうと思えるミュージシャンが身近にたくさんいらっしゃったので、お声がけしました。
身近なアーティストとの多様な化学反応
――1曲目の『革命前夜』は高橋久美子さんが作詞されています。この曲はどういう経緯で作られていったのですか?
あんにゅ : コアラモード.が他のアーティストとコラボするのが初めてだったので、詞が先なのかメロディが先なのか、世の中のミュージシャンがどうやってコラボを進めているのか、全くイメージがなかったんです。高橋さんは他の方にもたくさん詞を書かれているので、「詞が先かメロディが先か、どちらがいいですか?」って私たちから提案させて頂いて、打ち合わせしました。普段はメロディが先のことが多いっておっしゃってたんですけど、今回は最終的に詞が先になりました。
――高橋さんの詞にあんにゅさんがメロディを付けた形なんですね。
あんにゅ : 「最近あんにゅちゃん、どうなの?」みたいな感じで、まるでカウンセリングをするみたいに話を聞いてくれて。「今度友人が結婚するんですよ」とか「私も年を取ってきちゃって……」みたいな何でもない話をたくさんメモしてくれて、それを元に歌詞を書いて下さいました。最初は2パターンが届いて、一つは今の『革命前夜』の歌詞。もう一つはもっと日常を切り取ったような、柔らかい言葉使いのもので。どちらも素敵だったんですけど、今回はいつもと違う力強い部分を出していきたいと思って、今の詞を選びました。
――かなりヘヴィな内容になっていますよね。
あんにゅ : 自分だったら書かないだろうなっていう内面に踏み込んだ詞になっていますよね。この詞が届いた日に早速メロディが浮かんだんですけど、余りにも重くなりすぎたので、後で相談して作り直して、今の『革命前夜』が出来ました。
小幡 : 高橋さんは、作詞家として書く詞とアーティストとして書く詞はチャンネルが違うそうなんですが、この『革命前夜』の詞はアーティストとして書いてくれたとおっしゃってました。
――なるほど、分かる気がします。アレンジはかなりシンプルなバンド・サウンドになってますね。
小幡 : 歌詞が持っている鋭いエネルギーをどうやったら増幅できるか、試行錯誤していろんなバージョンを作った結果、荒々しいギターと骨太なドラムが鳴っている今のサウンドになりました。ものすごい轟音に背中を押される、みたいなアンサンブルです。
あんにゅ : 出来上がった瞬間に、この曲を一曲目にしようって話しました。
小幡 : この曲を提示することで、皆さんが抱いているコアラモード.像を上回っていきたいというか、宣戦布告したいというようなイメージがありましたね。
――次の曲は島田昌典さんがプロデュースした『夏ノ詩』。島田さんとはどういった繋がりがあったんですか?
小幡 : 年に一度キーボーディスト会みたいな飲み会があって、そこでお会いしたのが最初だと思うんですけど、その縁もあって一度僕たちのラジオ番組にゲスト出演して頂いて。僕がその時に「いつかコアラモード.のアレンジをお願いしたいと思っているんですよ!」って話したら、島田さんが「でも、自分でやっちゃうじゃん。」ってことがあったり(笑)。歌詞、メロディ、コードだけがある曲のサウンドをトータルで作品を彩って頂くっていうのはコアラモード.にとって初めてだったんですよ。その初めてが影響を受けまくってきた島田さんで、島田サウンドに染めて頂いて、本当にありがたいとしか言いようがないです。
――この曲は「花火」が重要なキーワードになっていますが、島田さんで「花火」と言えばaikoさんの大名曲がありますよね。それは最初から意識されていたんですか?
小幡 : 実は、当初は全く考えてなかったんです。蝉しぐれが鳴っている、短いけれど強烈に記憶に残っているひと夏の青い日々の失恋、みたいなテーマをイメージして作った曲で。
――島田さんにはどの程度完成されたデモをお渡ししたんですか?
小幡 : 本当にピアノの伴奏とあんにゅの歌だけのものをお渡ししました。アレンジを発注、みたいな感じにしたくなかったんですよ。島田さんが思う、コアラモード.はこうすればあんにゅの歌が活きる、という考えを形にしてもらいたくて。島田さんから学びたい気持ちが強かったので、あえてサウンドのイメージを大きく伝えたりはせずにお任せしました。
――出来上がった曲を聴いて、いかがでしたか?
小幡 : 本当に涙が出ましたね。憧れてきた島田さんですし、ワンコーラスいっぱいはピアノとストリングスのカルテットで、サビでうっすらとエレキギターが重なってくるんですけど、二番からバンドが入ってきて。結構長い曲だったので、ちょっとヘヴィ過ぎるんじゃないかとも思っていたんですけど、ボリュームを感じさせずにドラマ性を出してくれる、素晴らしい抑揚とダイナミクスで。すごく感銘を受けましたね。
あんにゅ : 私の声が小幡さん以外のアレンジに乗るということ自体なかなか無いので、最初は「どうなるんだろう?」って少し緊張しながら聴いたんです。島田さんのアレンジはイントロが印象的っていうイメージがあって。けど実際に聴いてみたらイントロがなかったんでビックリしたんですけど(笑)。序盤はピアノだけのシンプルなアレンジで、ヴォーカリストとしては「こんなに音が少なくていいの?」って心配になるくらい。でも、後半にいくにしたがってどんどん島田さんの色が広がっていって、「レコーディングの時にどうやって歌おう?」とか色々考えたくなるような素晴らしいアレンジでした。
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