――逆に言うと、釼持さんはクリエイターでありつつ、そうした経営部分にも自分の特性を感じていたんでしょうか?
釼持 : そうですね。僕は元々商売っ気がありました。音楽ビジネスって、元をたどれば権利商売だと思うんです。作ったものを、どう商品に変えてお届けするのかを考えるというか...…。音楽を作っても、それを購入していただいてお金を稼がないと、ただのボランティアになってしまうんですよね。そうしたマネジメントを苦手とする人が多いクリエイターの中で、僕は得意だったのかなって思います。そして僕は、良いものを作ったらお金に変えられるんだよっていうことを現実化して、それをチームで押し上げていこうということを割と若い頃から構想していて。本当に良い作曲家と出会えたので、それを具現化するチャンスだと思ってふたりを誘ったんですよね。
――音楽には時流もありますし、人に受け入れられるものを作ろうとすると考えることも沢山あると思うんですけど、そこはどのくらい意識されていますか。
釼持 : よく「才能枯れないですか?」って聞かれるんですけど、僕は「枯れないですよ」って言うんですよ。新しい音楽がどんどん出てくるので、それをインプットしていく中で作りたいものがまたどんどん出てくるんですよね。
Yugo : 僕の場合は、新しいものを意識していないというか、どんなジャンルにおいても曲のベースとなる部分は70〜80年代頃から作り方がさほど変わっていないと思うんです。アレンジの部分では新しいジャンルも意識するんですけど、作る時には楽曲のベースを先に考えて、それからクライアントさんの欲しい曲のイメージをインプットすることが多いんですよね。
HAMA-kgn : 僕も前は新しい曲や傾向を調べたりしていたんですけど、最近は自分が良いと思ったものが良い曲なんだっていうスタンスで、自分の直感を信じるようにしています。
釼持 : 新しいものを僕らのほうから提案するほうが面白いと思うんです。Felion Soundsも制作会社っていう体を取っていますが、ただオーダーされた曲を作るのではなく、「僕らだったらこんなことも出来ますよ」っていうことを含めて提案するようにしていて。構想の段階から提案していくことで、自分達のやりたい音楽が形にできますし、そのほうが面白いものを世に出せるんじゃないかなって。そうした思いは3人共通して考えていることなんじゃないかな。
――総合的なクリエイティブが行える場所としてのFelion Soundsということですね。
釼持 : なので、楽曲のサウンド・プロデュースから、全部できますよっていうところはひとつ売りにしています。フルスタックでここに持ってきてくれたら、あとはいいものを作って提案できますよっていうスタンスは心がけていて。今回のシナモンの楽曲も、サンリオさんのご希望を踏まえて、HAMAとYugoなりのストーリーを曲に落とし込んでいくことで出来上がった曲なので、そうしたものも含めてご提案できるようなチームでいます。
――「ふれーふれーがんばれー!」や「しあわせのラベル」のお話であったように、オーダーは踏まえた上で、そこに作り手ならではの文脈を込めていくんですね。
釼持 : 僕らはストーリーを凄く大切にして曲を作ります。そこにどんなドラマがあるんだろう、そのドラマにつけるならどんな音楽が相応しいだろうって考えて作っています。
Yugo : 『SHOW BY ROCK!!』というサンリオさんのキャラクターコンテンツがありまして、そのゲームやアニメの曲を書かせていただいたんですけど、そこではキャラ同士がバンドを組んでいて、そのバンドの曲を書く時もストーリーは凄く意識しましたね。そのバンドにはどんな背景があって、どういう経緯でその曲を書くに至ったのかっていうことを想像するんです。
――脚本家のような考え方で、作曲しているとも言えそうですね。
Yugo : まさにそうですね。僕は作曲家なんですけど、このキャラクター達はどんな曲を書くだろうなって考えながら書くことが多いです。
HAMA-kgn : 僕も曲を作る時には、頭の中でそこにある物語を妄想しがちというか、背景を想定してその上にストーリーを書いていくように作っています。送られてきたアイデアからインスピレーションが生まれて、そのインスピレーションに引っ張られて書き上げた時に良い曲ができる感覚がありますね。
――釼持さんから見て、おふたりの楽曲の個性はどこにあると思いますか。
釼持 : HAMA-kgnは自身のルーツでもある、バンドのサウンドを取り入れている感じがしますね。ただ、そうやってバンド時代にやってきたことが如実に出ている一方で、彼は音楽理論オタクだったりするので、割とアカデミックなことも部分部分に取り入れていて。それによってちょっと幾何学的な楽曲になったり、複雑なアレンジが施された楽曲になっているのかなと思います。
――なるほど。
釼持 : なのでナチュラルな楽曲も作れるし、アカデミックな楽曲も作れるし、そうしたバランス感覚が彼らしさだと思います。制作において広い対応力を持っているクリエイターですね。
――Yugoさんはいかがですか?
釼持 : 僕は、彼を「天才」だと思っているんですよ。どうやってこの曲生まれたの? って思うような、背景が想像できない曲を書いてくるんですよ。
Yugo : それに関しては、本人もよくわかってないですね(笑)。僕はHAMA-kgnみたいにバリバリの理論オタクではないので、イメージを膨らませながら作っていくというか、コード進行もあまり正攻法ではなくて、冒険して組み立てているところがあります。なので自分でもこういう動き方をしたらどうなるんだろう?って想像しながら作っていくことが多いですね。
HAMA-kgn : その動き方が気持ち良いんですよね。
釼持 : 彼は音の記憶が物凄いんです。つまり、音楽には気持ちのいい和音っていうものがあると思うんですけど、彼はその気持ちのいい和音が身体に染みつき過ぎていて、おかしなことをやっていてもどっかの気持ち良さにはまっているっていう、そういう天才気質なんですよね。
――なるほど。最後にFelion Soundsが今後どのように成長していこうと思っているのかを聞かせていただけますか。
釼持 : 『セブンスコード』っていうノベル+リズムアクションゲームがあるんですけど、それに対してスピンオフの企画をメーカーさんに提案しまして。これはボイスドラマとゲームのサウンドトラック、それからゲームの世界の設定資料集をブックレットに付けるっていう、これまでにはなかったCD型のコンテンツになっているんですけど、そうやって世の中に対しての提案型の制作をもっとやっていきたいなって思います。
――制作にとどまらず、新しい音楽のあり方も提案すると。
釼持 : 音楽を楽しむ方法って、時代時代で変わってきていると思うんですよね。今までだったら、マネージャーがバンドについて、その人が何年か先までのロードマップを決めて来年には武道館をやろうとか、そういうのがあるじゃないですか。でも、そのやり方も既に変わってきていると思っていて、CDを売ってお金に代えなくてもYouTubeの再生回数でいいじゃないかとか、サブスクリプション・サービスでどれだけ聴かれたとか、Twitterでどれだけ呟かれたかっていうことを実績に何が売れるか考えたり、新しいものを出した時にその人の影響力はどれくらいあるのか?ってところにフォーカスを当てるようになってきているのかなと思います。
――なるほど。でも、だからこそ真ん中にある「音楽」は良いものを作るぞと。
釼持 : そうですね。元になるものがないと、その次にどんなアイテムに変換すればいいのかっていう発想が生まれないので。まずは「良い音楽を作る」というのが前提で、その上でいろんなグッズがあるよということですね。その内のひとつがCDですし、サブスクですし、動画コンテンツだったりするよっていう。僕らはミュージックカードを作ったこともあって、中にキャラクターコンテンツを入れて、そのカード自体がコレクション的なアイテムになるとか、音楽っていろんな形を取れると思います。
Yugo : 音楽をお金にするって難しいことだと思うんですけど、音楽は付加価値にもなるというか、動画に対して音楽がついたり、何かの物語に曲がつくことで、更に素晴らしいものになるんですよね。
HAMA-kgn : それに誰もがインターネットで好きな曲を探せて、機材も簡単に揃えることができる、それによって作る側も人に知ってもらいやすい環境があるのはいいことですよね。この時代じゃないと僕は仕事にできていなかったかもしれないし、まずはお金のことは置いといて、良いものを作っていきたいです。そこからどうやって稼いでいくのかっていうことが、求められていくのかなと思います。
釼持 : なので音楽にとどまらず、音楽から派生させていろんなものを作っていくことを目指したいです。僕らは音回りの面ではそれぞれ違う特色を持った人が集まっていますけど、3人とも「世の中を驚かせるものを作りたい」「新しいものを見せていきたい」という点は共通していると思います。
<撮影協力>
studioFine
https://www.studiofine.com/
『ふれーふれーがんばれー!/しあわせのラベル』シナモロール
アーティストサイト
https://www.47mon.com/artist/
CD予約・購入&配信サイト
https://lnk.to/cinnamoroll
ふれーふれーがんばれー!MV
https://www.youtube.com/watch?v=_I7uu0u0_J8
SEVEN’s CODE ZERO Vol.3
HALZiNA Weiß~The Blessing of Johannes 3 嵐の海を行け
オフィシャルWebサイト
https://felion-e.jp/svczero/
CD予約・購入サイト
https://www.amazon.co.jp/s?i=music-artist&rh=p_32%3ASEVEN%27s+CODE+ZERO
Felion Sounds
公式サイト
http://felion.co.jp/
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