07. E Z Funk
ヌメンチョ3:“E Z Funk”。これはマイケル・ジャクソンの“ブラック・オア・ホワイト”を彷彿とさせる感じですね。
木幡:“Tokyo Techtonix”でファンキーなことをやって、それが上手くいったっていう感触はあって。今、凄くファンク流行っていますよね。マーク・ロンソンとか。ダフト・パンクの“ゲット・ラッキー”が火付け役だったのかなとは思うんですけど。それで、ファンクっぽいことは今回もやりたいと思っていたんだけど、ファンクにもいろいろあるんで、みんな手を出していないことをやりたいなって。そう考えていた時に車の中で流れていたのが、某有名曲だったっていう(笑)。
ヌメンチョ3:曲中でヒュンヒュン鳴っていて、それがファンクに感じるんだけれど。
稲見:これは新しく買ったシンベで、去年の12月だっけ、『スター・ウォーズ』が公開されたの。俺らレコーディングで見に行けなかったから、R2-D2みたいな音を作って。
タイラ:そんなことしているなら、2時間くらい観に行きなよ!(笑)
稲見:俺の入れてるベースラインと同じことをしているんですけれど。
木幡:(スピーカーの)左が稲見で右が俺かな。ベースをアナログシンセに繋いで、ベースをトリガーして音を出していて。それは“Tokyo Techtonix”のギターでやったことで、ギターに合わせてシンセが鳴るっていう、それのベースもやっちゃった。節操がないですね(笑)。
稲見:エンジニアの人に『ガッちゃん』って言われました。『(Dr.スランプ)アラレちゃん』の。
タイラ:DJ的には美味しい曲ですね。
木幡:僕も自ら二回ほどかけました(笑)。自分でかけたいから作ったっていう。
08. 1994
タイラ:じゃあ次の曲に行きましょうか。
ヌメンチョ3:“1994”。これはリズム隊が際立っていて。二人に話を聞きたいですね。
稲見:これは新しいベースを買って、こういう音を出したかったんです。これと〝Vapor Trail″と最後の曲“Stranger”は、エッジが立っていて。“ブリード”って曲あるじゃないですか、ニルヴァーナの。あのジャジャジャジャジャージャって音、ずっとギターかと思っていたけれど、途中からベースが入ってきて、ほとんどベースなんですよね。ああいう音が作りたくて。
ヌメンチョ3:これベース? ギター?っていう。稲見流ベース論は、ただのベースじゃねえぜっていう。
稲見:ロックバンドなら、普通じゃいけないっていうか。元々あるものになったらダメじゃないですか。それが僕の場合はベースだったっていう。ハートに従っているんです(笑)。そこにいかないと、自分としてもOK出せないっていう。
長谷川:俺はリズムの感じが懐かしいので、泥臭いロックテイストを出そうかなと。ミッシェル(・ガン・エレファント)っぽいっていうか。
木幡:イントロのリズムのイメージは“世界の終わり”です。
ヌメンチョ3:ライブハウスでミッシェル聴くと胸が熱くなりますね。すんげー好きだったから。こういうカッティングも90年代っぽいですね。
稲見:俺は“楽園”のつもりでやっていたんだけど。イエモンの。
木幡:あとはライド。90年代のシューゲイザーですね。UKではこういうムーヴメントがあって、アメリカはグランジ。共通しているのはギターがめちゃめちゃ歪んでいて、シンプルなバンド編成っていう。ブラック・サバスの延長にある感じのグランジに対してビートルズとかサイケデリックな要素が強いのがUKっぽいですね。
ヌメンチョ3:90年代のUKとアメリカが繋がった曲なんですね。
タイラ:次に行きましょうか。“The World Is Mine”。
09. The World Is Mine
ヌメンチョ3:ジャパニーズ・ブルース・マツリサウンド・トライバルみたいな。
タイラ:それ、自分で作りました!?(笑)
ヌメンチョ3:アベンズのトライバルな曲って好きで。
木幡:このシャッフルビートは、何でもトライバルに聴こえるっていうか。10年くらい前にバトルスが、“アトラス”でシャッフルビートを復活させて。僕らも便乗して“Beats For Jelous Pluto”っていう、シャッフルビートを倍速にしたような狂った曲を作ったんですけれど。そういう予備知識があるからトライバルに聴こえるのかな。
ヌメンチョ3:メロディは昭和歌謡っていうか日本っぽい感じで、僕的には体に馴染むというか。
木幡:このビート自体がブルース発祥みたいで。でも、ただ土臭くしただけじゃ面白くないので、イントロも、ブルースなギターに、オートチューンのヴォーカルを被せて、テクノロジーとオーガニックを融合させました。そういうことはずっとやってきていたので。“Unknown Tokyo Blues”の時もそうでしたけど、最近は極端に出していこうと思っています。ブルースとテクノとか。
10. Stranger
タイラ:遂に最後の曲です。
ヌメンチョ3:“Stranger”。序盤は、レクイエムみたいな感じでアベンズ的には新境地なのかなって。後半またガラリと変わるんですけれど。
木幡:はっぴいえんどを意識したんです。ただ、はっぴいえんどフリークとかじゃないんで、自分の中でですけど。日本のロックの中ではパイオニアですし、最近はっぴいえんど的なものを耳にする機会も多かったので。
ヌメンチョ3:アベンズ的に、最後はこう締めようっていうのはあったんですか?
木幡:ただ曲を並べた感じじゃなく、終わりっぽくはしたくて。今回はわりとハッピーエンドにしたくなかった。はっぴいえんどの話をした後に、変な感じですけれど(笑)。ハッピーエンドなのかバッドエンドなのかわかんない感じにしたくて。俺、映画で「これは感動大作」とか言われるのが嫌いなんです。先に言うな、それは俺に決めさせろと。プロモーションの都合なのはわかるけれど、音楽や映画っていうアートに重要なものを消しちゃうじゃないですか、これはこうだって説明することで。それにはしたくなかったんで、突き放して終わる、答えを見せないっていうようにしたかったんです。
タイラ:それはアベンズの基本の概念かもしれないですね。誰にでもわかるものじゃなく、何処かに謎があるっていう。太郎くんって暗いんじゃないですか?
木幡:俺は意外と明るいですよ。暗い人って逆に明るい曲を書くんじゃないんですか?
ヌメンチョ3:意外と? “とにかく明るい”じゃないんですか?(笑)
タイラ:でも、こうして一枚を通して改めて聴くと、違う聴き方が出来ますね。
ヌメンチョ3:バックボーンを知った方が楽しめるんですよね。今って、紙媒体やライナーノーツで音楽の歴史を知る機会がなくなっていますよね。
木幡:そうだね。分析して聴くことをしないと、なんとなくその時の気分で聴くことになっちゃうから。良いものと悪いものを判断する基準がないというか。
タイラ:審美眼が磨かれますからね。自分の価値観がはっきりすることは、自分にとってもいいことでしょうね。
木幡:知らず知らずのうちにクソみたいなものにだまされることにもなるし。
タイラ:ぜひ、引き続き、アベンズの好きな音楽を知っていただく機会を作れたらと思います。
avengers in sci-fi
ギター、ベース、ドラムスという最小限の3ピース編成でありながら、シンセサイザー/エフェクト類を駆使したコズミックで電撃的なロックを響かせるavengers in sci-fi。“ロックの宇宙船”とも称されるこのバンドは、高校の同級生であった木幡と稲見によって02年にスタート、大学で長谷川と出会い現在の編成に。メロディック・パンクのカヴァーに始まりテクノ/ダンス・ミュージックへの傾倒を経て、数々のエフェクターを導入し独自の近未来的ロック・サウンドを展開。09年12月にメジャー・デビュー。それまでのロック、パンク、テクノ、エレクトロに加え、クラシック、オペラ、ゴスペルの要素も自由に操り更にパワーアップ。その高い音楽的IQが評価され、同年には木村カエラのシングル『BANZAI』をプロデュースや、CM曲の書き下ろしも手掛けている。2014年6月に5枚目のフルアルバム「Unknown Tokyo Blues」をリリース。2015年2月より新たな主催イベント”Unknown Tokyo”をスタートさせた。2016年4月20日に6枚目のフルアルバム「Dune」をリリース。
avengers in sci-fi official web
■6th Album『Dune』
2016年4月20日発売
VICL-64565 / 2,800円(税抜)
[ 収録楽曲 ]
01. Departure
02. Dune
03. Vapor Trail
04. New Century
05. No Pain, No Youth
06. Still In A Dream (feat. Mai Takahashi)
07. E Z Funk
08. 1994
09. The World Is Mine
10. Stranger
■avengers in sci-fi “Dune Walk Tour”
6月04日(土) 札幌 Sound Lab mole
6月11日(土) 仙台 enn 2nd
6月12日(日) 新潟 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
6月19日(日) 高松 MONSTER
6月24日(金) 福岡 Queblick
6月26日(日) 広島 4.14
7月02日(土) 名古屋 APOLLO BASE
7月03日(日) 大阪 Shangri-La
7月10日(日) 渋谷 CLUB QUATTRO
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