03. Vapor Trail
ヌメンチョ3:“Vapor Trail”。聴いていてわかるように、まさに飛行機雲のような疾走感ですよね。急にハードコアな展開になって。ハイブリッドで、非常に面白いですよね。
タイラ:ビート感で言うと、メロディックパンク的な雰囲気もありますよね。
木幡:フォールズの“ホワット・ウェント・ダウン”みたいな。アット・ザ・ドライヴインっぽいというかポストハードコアっぽいと感じて、それをモデルに作りました。だからメロディックっぽいとも思われるんだろうし。これもグランジの方法論というか、歪んだギターでサビは埋め尽すっていう。面白いところは、そこにシンセを被せているところだと思うんですけれど。イメージしたのは一時期のスクエアプッシャーみたいなチープなシンセ。こういう曲にシンセって被ってこないじゃないですか。
タイラ:今まで話を聞いてきた中で思うのは、絶対に掛け合わせられないようなものでも、自分たちのセンスだったら何か新しいものを生み出せるんじゃないかなって思っているところもあるんじゃないんですか?
木幡:バンドカラーも考えるし、生音でやっても面白いんだろうけれど、それを僕らがやる必要はあるのか、と。なんとなくスペーシーなバンドと言われているじゃないですか。
稲見:ここも、シンベでやる必要は全くない。普通なら生音か歪みで、パンクバンドならダウンピッキングでやるイメージじゃないですか。そこは外していかないと、僕らのサウンドはOKにならない。
木幡:AメロからBメロにかけてのシンベは、俺はもともと生のベースでと思ってたけれど、稲見はどうもシンセベースでやりたいと。
ヌメンチョ3:ラストの展開が素晴らしいんです。
稲見:ベース4本くらい入っていますよ。
ヌメンチョ3:若々しいですよね(笑)。
木幡:僕らが10代の頃のパンクロックって、こういう展開ありましたよね。ラストで思いっきり変わるっていう。
稲見:レッチリとかあるよね。ずっと通して聴いていると、あとから同じ曲って気付くっていう。
タイラ:では、次の曲行きましょう。
04. New Century
ヌメンチョ3:“New Century”。アルバムの中で唯一落ち着いた、展開があまりない曲で。これはメロディが際立っていて、歌詞も素晴らしくて、天才だなって。メロディって、どういう時に浮かびますか?
木幡:基本的には、ギター弾きながら弾き語りというか、伴奏がないと出てこない。ゼロから何かが生まれることはないんで。あとは蓄えというか、テレビを見たり街を歩いている時に、大概クソみたいな曲が流れているけれど、そういう曲に交じって、名曲が流れてくることってあるじゃないですか。そういうものが耳に染み付いているというか。曲名も知らない曲だけど、昔のビルボードトップ40に入っていた曲とか。後々、これってシンディー・ローパーだったんだとかバグルスだったんだという感じ。誰でもそういう染みついている曲があると思うんだけれど、それが蓄えになっていて。
ヌメンチョ3:染み付いたものが出てくるからこそ、みんなの耳にも馴染みやすいという。
木幡:そういうものを目指したんだよね。だけど、あまりにも凄く良いメロディだったから、もしかしたらなんかのまるパクリなんじゃないかなって不安になりました(笑)。
タイラ:歌詞についても聞きたいんですけれど。太郎くんは、今回頑張って、歌詞を早く書いたそうですね。
木幡:そうですね。いつも歌入れギリギリまで上がってないんですけれど。歌詞から曲を作るってほぼほぼなくて、メロディができあがってからの歌詞なので。歌詞を考えている時は余裕がないんですよ。まだ悩んでいるし、死ぬまで悩むというか。自分の歌詞が出来上がった次の日に、また違う経験をすると、心情が変わるので。
タイラ:基本的に太郎くんの歌詞は悲しいですよね。
木幡:悲しいですよね。この曲の歌詞は自分でも泣きました(笑)。
タイラ:悲しさが出てくると、二人はどう思いますか?
長谷川:メロディの時点で泣けるとは思いました。
稲見:歌詞を見て音楽を聴くっていうことがあまりないんですけれど、太郎の歌詞は凄く好きですね。《大好き大好き》ばっかり歌われると気持ち悪いじゃないですか。もしそういう歌詞が出てきたら、究極にそういう気持ちになっているんでしょうね(笑)。
05. No Pain,No Youth
タイラ:では、次の“No Pain,No Youth”。
ヌメンチョ3:この曲はわたしのTwitter調べでは非常に人気が高い(笑)。アベンズ的なEDMですよね。それでいて、YMOというか久石譲というか、ジブリ的な音楽に仕上がってるのも面白いなって。
木幡:まあ、EDMっていうより、もっと古いプログレッシヴハウス、アンダーワールドみたいな、90年代のダンスミュージックを目指していました。EDMよりは品があるというか。“ボーン・スリッピー”が自分の中のベスト・オブ・ダンスミュージックだから、それを目指して。“ボーン・スリッピー”の特徴はキャッチーなフレーズですよね。ライブバージョンは出だしがドラムだけで1、2分続いてからの超キラーフレーズで、フロアが幸福感に包まれていく。そういう感覚を味わってほしかったんです。また“ボーン・スリッピー”を目指したんですけれど、久石譲やYMOっていうのもジャストな指摘で。エレクトロニック・ミュージックでも、和を感じるような旋律をミックスして。和風“ボーン・スリッピー”みたいにしたかった。
ヌメンチョ3:そのへんの狙いが上手くいっているから、人気があるんじゃないかと。
木幡:今回のアルバムの中では日本国内の音楽の気分には比較的近いのかな。歌も流行りを意識して、R&Bっぽい歌いまわしにしました。
タイラ:歌詞も今までになく、リアルな感じですよね。
木幡:メールやSNSって便利だけれど、実は振り回されているじゃないですか。現代のスピード感では、1時間メールを返さないと、何やってんだってなる。便利さと引き換えに一人になれる時間がないんですよね。メールしたらTweetしてね、Tweetしたら電話してって言ったでしょっていうやり取りって、凄く滑稽じゃないですか。よくそういうやり取りでケンカしている人はいますけれど、それを面白おかしく書いたというか。
06. Still In A Dream(feat.Mai Takahashi)
タイラ:次は6曲目。“Still In A Dream (feat. Mai Takahashi)”。
ヌメンチョ3:これは、はじまりは重たいと思わせつつ、だんだんガラッとキュービックな感じ、一気にポップに持っていくのが上手いなって。ゲストのタカハシマイさん(Czecho No Republic)の女性ヴォーカルも入っていて。
木幡:これは結構、ぶっ壊れている曲というか。スマパン(スマッシング・パンプキンズ)やブリグリ(ザ・ブリリアント・グリーン)の歌モノのオルタナ感に、ジャネット・ジャクソンみたいなザ・R&Bみたいなものを強引に合体させました。
タイラ:女性ヴォーカルは、そもそも入れようと思っていたんですか?
木幡:いや、たまたま女っぽいメロディだったので、男が歌うには気持ち悪いなって。
タイラ:マイさんはイメージに合った?。
木幡:やっぱり、マイちゃんはインディーロックとかが好きで、俺たちが聴いているものもよく聴いているから、歌も合うし、話が早いというか。
タイラ:レコーディングはどうでした?
木幡:スムーズでした。これ、難しい曲で、仮歌は自分で歌ったんですけれど、音程の高低差が激しくて全然歌えなくて、マイちゃんに歌わせるのが心苦しかったんですけれど、すんなりいい感じに歌ってくれて。ダメ出しするのってキツいじゃないですか。それもなく。ただ、もっと聴きたいからもう一回歌って!っていう(笑)。イントロはビョークの“アーミー・オブ・ミー”っぽいですね。トリップホップからの流れで、ダブとブレイクビーツがぐちゃぐちゃに合体したような曲って90年代に結構あって、この手のイントロって多かったんですよ。もうちょっとカラッとしているところだと、ケミカルの初期にもこういうベースラインが多いし、プライマルにもあるし。
タイラ:90年代の好きだった音楽の、このフレーズって言うよりは匂いっていう感じで取り入れたんですか?
木幡:90年代といっても一種類のムーヴメントで片付けてしまうのではなくて、いろんな90年代の要素を合体させてしまおうっていう感じでした。
ヌメンチョ3:ここからのジャネット・ジャクソンが頭おかしいですよね(笑)。
稲見:普通じゃね?(笑)。
ヌメンチョ3:自然に演奏していなかったらこうはならないですよ!
タイラ:次の曲に行きましょう。
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