01. Depature
ヌメンチョ3:この曲は構成が洗練されていていいなあと。イントロで、アベンズっぽい宇宙っぽさが戻ってきたかと思いつつ、地鳴りのようなベースラインがきて、歌がはじまったら淡々としていて、最初から右往左往させられるっていう。この序盤の展開の解説をお願いしたいですね。
木幡:イメージしたのはケミカル・ブラザーズがアット・ザ・ドライヴインをフィーチャーしたような……あり得ない組み合わせですけれど、ほんとに好きなことをやらせてもらってすみません、っていう。結構イントロは豪華で複雑な構成ですけれど、Aメロ以降は一種類のコード進行で押し切ったんですね。コード進行を変えてサビとかを作るのはポップス的な方法論ですけれど、それはしたくなくて、サビで歪んだギターをぶっ込んで音圧を上げてサビを作るっていう。ニルヴァーナ的というかグランジ的な手法ですね。音楽理論的には、コード進行が変わっていないので、サビとは言わないのかもしれないですけれど。コード進行がそんなに劇的に変わったりしないというか、グル—ヴを崩さないことがいわゆるロックの質感だったりするじゃないですか、ちょっとドライな感じというか。劇的にコードチェンジしてさあサビです召し上がれっていうのがポップス的な感覚ですよね。でも、それはしたくなかった。
タイラ:確かにそうだけれど、ポップスになっていますよね。
木幡:そうですね。ポップスとして成立はさせたいんですよね、矛盾していますけれど。
ヌメンチョ3:あと、この曲はベースラインが効いていて、踊れるんです。
稲見:今作は全体的に、ダンスミュージックやヒップホップとかの重いベースを取り入れたいと思っていました。この曲の前奏のベースは、オクターブが入っていて。ケミカル・ブラザーズの“カム・ウィズ・アス”を知らないとつまらないかもしれないんですけれど、デデデデデデデデってはじまって、ベースがオクターブ下にゴゴゴゴゴゴゴゴってなる、当時その緊張感と圧迫感に衝撃を受けて。そこからドラムのフィルでバーっと展開していくっていう。僕の使っているシンセベースはそういう音が出るんで、さっき(ヌメンチョ3が)言った地鳴りのような音とのギャップが、自分が好きな感じに近くって。で、Aメロでオクターブのベースで支えてあげて、耳の緊張感が生まれるじゃないですか。
ヌメンチョ3:30ヘルツくらいなのかな? 体に感じる低音みたいな。
稲見:それは入れまくりましたね。こんな音を入れて喜んでいるのも、太郎とエンジニアの(三浦)薫さんくらいかな(笑)。
木幡:そういうサブオクターブっていうか、超低音みたいなものがやりたくて。そういうのは最近の流行りっぽいてすよね。
稲見:俺が最近聴いている音楽にはわりと入ってるのが多いのかな。
木幡:最近はアラバマ・シェイクスとかも古いブルースみたいな感じだけれど、打ち込みのめちゃくちゃ低音が効いたベースとかキックがレイヤーされてて、ダンスミュージックとしても成立しそうな音に仕上げてある。そういう音は、エンジニアの三浦薫さんも大好きなので。
ヌメンチョ3:前作から、非常にベースが際立っていますよね。
木幡:デンデンデンデンっていうベースは、ダンスミュージックでよく使われるような感じを意識してるんですよね。EDMとかにもありそうな感じ。ベースが前のめりで曲を引っ張っていくっていう。それが踊れる理由というか。だから、結構狂っているんですよね。ニルヴァーナとEDMが合体しているって、わりとあり得ないじゃないですか。
タイラ:それでもポップソングに聴こえるというところがミソかと。俺は新しいアベンズと今までのアベンズが上手く交わったところがあるんだなって、これって交わるんだなって驚いたっていうか。
ヌメンチョ3:これは、さっきも出てきましたけれど、イントロのイメージを知るにはケミカル・ブラザーズの“カム・ウィズ・アス”を聴いて欲しいですね。
稲見:“NAYUTANIZED”でも同じようなことをやったんですけれどね、知識が足りなかったので、こうはならなかったです。
02. Dune
タイラ:やっぱりハートの問題ですか?(笑)。
ヌメンチョ3:バクバクしちゃう。
タイラ:ライブだとめちゃめちゃ気持ちいい?
木幡:気持ちいいですね。
ヌメンチョ3:グランジ的な要素が強いのかなと思うんですけれど、サビはシンセがあって、トム・モレロ的なギタースクラッチが入ってきて、サビではデジタルなベースラインがあって、今風にアレンジっていうところも素晴らしいなって。
タイラ:褒めちぎりますね!
ヌメンチョ3:好きすぎて(笑)。引いてませんかお客さん? まあ、みなさんも同じくらい好きだと思いますが。前作だとギタースクラッチは“Tokyo Techtonix”に入っていて、あれはDJ的な要素でなんとなくわかりますけれど、“Dune”のような曲にギタースクラッチを入れてくるというのが素晴らしいなと。
木幡:ビースティ・ボーイズの“サボタージュ”の音色を目指したというか。あれはギターで出しているわけではないんだろうけれど、アナログシンセのノイズみたいなものと、ハードロックギターみたいなものを共存させているじゃないですか。それを目指したところと、サビでシンセが入ったり、デジタルな要素を混ぜたのは、異質なものの融合が、このバンドの一つのテーマなので。ただ単純に90年代リスペクトやオマージュやリバイバルにはしたくなくて、2000年代を通過しての90年代なものにしたかったので、俺にとっての90年代ってなんだろうなって思った時に、パッション・ピットとかのエレポップ感を入れてみようかな?って。グランジとエレポップって、まあまあ交わらないので、だったら俺がやろうと。だからあくまでキックは四つ打ちで。ギターのリフも、ニルヴァーナ的ないかにもなリフですけれど、意外とファンキーなカッティングで、全然違う音色で聴いたらファンクみたいになると思う。だから、ダンスミュージックになるように作ってあるんですよ。あくまでもダンスさせたい、というか。まあグランジとダンスミュージックの融合は、そうないんじゃないですかね。あってもダサいでしょ(笑)。
タイラ:まあ、やらないよね。っていうかやれないよね。
木幡:たまに“スメルズ・ライク・ティーン・スピリット”のダンスリミックスとかあるけれど、ことごとくダサい(笑)。
タイラ:なんでだろうね?
ヌメンチョ3:これは絶妙なバランスですよね。先生のサビ前のマーチングみたいなところも、意外性があっていいですよね。
長谷川:ありがとうございます(笑)。カントリー風にしたい、みたいな要望からだったんです。僕は元々吹奏楽とかやっていたので、マーチング的な要素が好きなんで、意識して、いい意味で田舎臭いような感じに叩きました。
タイラ:さっき太郎くんが言ったように四つ打ちなんだけれど、いわゆる四つ打ちの質感とは違うと思う。踊れるけれど、撥ね方が違う印象で。土臭さとかいなたさが残りつつ、方法論は四つ打ちっていう。それがいいところ、太郎くんの言葉を借りると異質なところなんじゃないかと思います。
長谷川:それは、まさにその通りなんじゃないかと思います。実際四つで踏んでいますけれど、四つ打ちの感じ方だけではない気がします。
木幡:実はレゲエっぽいんです。プライマル・スクリームの“ハイヤー・ザン・ザ・サン”っていう、デジタルレゲエ、シンセレゲエみたいな綺麗な曲があるんですけれど、そのドッドドっていうリズムにこの曲は近いんです。エイス・オブ・ベイスとか、90年代にはそういうデジタルレゲエみたいな曲がありましたよね。
タイラ:じゃあ次の曲、お願いします。
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