前作の発売から3年。「仁王2」はかかる期待に応えられたのか
2020年3月12日、戦国アクションRPGとして好評を博した前作「仁王」に続くシリーズ最新作「仁王2」が発売となった。発売前から大きな注目を集めた同作は、フリークの期待に沿うタイトルとなれたのか。「死にゲー」「アクションRPG」という2つの観点から、同作がゲームカルチャーに残した爪痕を紐解く。
「仁王2」とは
「仁王2」は、コーエーテクモゲームスより発売されたアクションRPGタイトル。16世紀後半の戦国の世を舞台に、架空の主人公・秀の字と木下藤吉郎(のちの豊臣秀吉)の共闘の物語を描く。発売初週の売上本数は9.1万本。期待に応える上々のスタートを切った。なお、2017年リリースのシリーズ第1作「仁王」は初週売上が約9万本ながら、全世界の累計販売本数で300万本を突破している(2020年2月時点)。前作を超える初週売上を記録し、名実ともに2020年を代表するタイトルとなりつつあるのが「仁王2」である。
脈々と続く“死にゲー”の系譜
近年、耳にすることの多い“死にゲー”という言葉。マップや敵の配置、行動パターンを死にながら覚えていくことで、少しずつ攻略を進めるタイプの作品群を指す言葉だ。フロム・ソフトウェア開発のタイトル(「ソウル」シリーズや「Bloodborne」、「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」など)が有名で、2010年代以降、ひとつのトレンドとなりつつある。「仁王2」もまた、この“死にゲー”に分類される作品となっている。
こうして脈々と続いている“死にゲー”の系譜だが、ぼくは過去のこのコラムで上がり続ける難易度に警鐘を鳴らしてきた。プレイヤーの心を折ることが目的となった先に、ゲームの本当の面白さはないと感じたからだ。「やや理不尽とも言える難易度の上に成り立つ作品かもしれない」という危惧がある中で手にとった同作は、そのような不安を裏切る良バランスのタイトルだった。
今後は「Ghost of Tsushima」や「ELDEN RING」といった、おなじく“死にゲー”の文脈上にあるであろうタイトルも発売を予定している。同カルチャーがこれからどのような道をたどり、隆盛もしくは衰退していくのか。行く末を考えたとき、「仁王2」の持つゲームバランスはひとつの指標となっていくに違いない。
歴史パロディとして紡がれるドラマティックなシナリオと、自由度の高いゲームシステムの共存
アクションRPGというジャンルは、シナリオ重視の作品群とシステム重視の作品群に二極化している。前者は「キングダムハーツ」シリーズや「ニーア」シリーズなど、後者は「ソウル」シリーズなどが代表格だ。それぞれがシナリオあるいはシステムに強みを持っているが、トレンドのジャンルでありながら、双方を兼ね備える作品は数えるほどしかない印象がある。そのような中にあって「仁王2」は、ドラマティックなシナリオと自由度の高いゲームシステムを共存させた意欲的な作品だった。
「仁王2」では、歴史上の出来事を追体験する形でシナリオが進んでいく。登場するのはその時代を彩った実在の人物たちだ。「歴史パロディ」として、言わば二次創作的に紡がれる同作のシナリオは、ゲーム作品らしい演出や脚色を加えながら歴史絵巻のように結末へと向かう。戦国史を知れば知るほど、背景や人間模様に没入できるドラマティックなものだ。
開発元であるコーエー(現コーエーテクモゲームス)は、歴史もの、特に戦国史を描くシミュレーションタイトルで名を馳せてきたゲームメーカーである。「仁王2」は、アクションRPG版「信長の野望」「太閤立志伝」とも言えるのではないだろうか。当然RPGは、シミュレーションゲーム以上に濃密なストーリーを表現できるジャンルだ。コーエーの代名詞と言える歴史ドラマの集大成が、同作に盛り込まれたシナリオとなっている。
また、ゲームシステムの面でも妥協のない作り込みが光る。ステータスに数値を振ることでレベルアップしていく、近年の成功タイトルに倣った育成システムに加え、多彩な武器種のラインナップ、各種スキルツリー、ハックアンドスラッシュ要素(何度もマップ探索を繰り返し、ランダムドロップのレアアイテム収集を目指す)など、キャラメイクの幅を広げる仕様がふんだんに盛り込まれた。初見プレイでは把握しきれないほどの自由度の高いゲームシステムが、同作にゲームとしての奥深さを与えているのは間違いないだろう。何度も周回する(一度クリアしたにもかかわらず、もう一度最初からプレイする)プレイヤーが多い理由も、この点にあるのではないだろうか。
「仁王2」がぼくたちに教えてくれること
同作の物語では、歴史上、善とされる人間が敵となったり、悪とされる人間が味方となったりする。ストーリーが進むうちに立場を変えていく彼らに対し、持つ印象が二転三転したプレイヤーも少なくないはずだ。こうした印象の変化は、同作におけるシナリオの展開や演出に影響されている。つまりプレイヤーの見方次第で彼らの印象はいくらでも変わりうるということだ。
このことからぼくたちは学ぶべきなのかもしれない。もともと持っていた善悪の印象は、教わった歴史や創作物などから誘導されたものではなかっただろうか。「仁王2」に描かれたストーリーは、固定観念にとらわれる危うさを示している。
「物事の善悪は、見方次第でいくらでも印象が変わる」
同作を通じて得たこの教訓を、ぼくたちはいつも胸に刻んでおきたい。
仁王2
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