展示会で伝える上で意識していること・プロタダクト、詩について
――展示にあった、吊るされていたオブジェクトなども面白くて。今回の詩についても影響されたところはあるのでしょうか。
真夏 : 今回は、私含めた、ユニとひなちゃん。私たちと同じような感覚を抱えている人がいて、その人たちがそれを見て、どっかに石がコツンって当たるような感覚を大切にしていて、ひなちゃんのツイッターは最後まで見返したんですよね。ユニの歴代の彼氏とか家族構成とかも考えたし。そういう風にして、やっぱり恋愛のこととはいえど、この人たちが何を考えてて、何が気に食わなくて、何が好きなのかってことを研究したんです。それを自分が言葉で表現していくっていうことを考えてたんです。
凸版印刷にて印字された作品デサイン・意味合い
――凸版印刷にて印字された作品デサイン・意味合いと言ったところもお尋ねしたいなと思います。
真夏 : あれは、ギヨーム・アポリネールという詩人のカリグラムです。それを私の父が日本語に起こした作品です。今回の展示に男性のポエジーが入ってくると、何か1つ作品に広がりが出るなと思い、一緒に飾ったんです。額縁に飾ってたポエムは、妃奈子ちゃんのTwitterから引用した言葉とか、ユニが選んだ映画の台詞を元に工夫してたんです。言葉は自分で考えながらも、あくまでも<RinRin>として表現して、アレンジャーのような感覚で書き下ろしました。
――引用されたものなかには、皆様が出会う前からの部分も投影されたと思うんですがいかがでしたか?
妃奈子 : 私、すごいなって思ったのが、入ってすぐにあった「東京生まれ東京育ちだから」っていう詩。あれは、私もうずっと思ってたことなんです。
自分も東京生まれ東京育ちで。好きになる人とか友達とかが、お正月に帰省しちゃったりするじゃないですか。それがすっごいさみしいよねっていうことを別の友達と言ったりしてて。「東京」をテーマにした展示会もやりたいよね、って話してたくらいなんです。それをまなっちゃんが、今回書き下ろしてくれたのがいいタイミングで! 吸い上げてきてくれたなって。何も事前に言ってないのに、そこを引き出してくれて面白かったなって本当に思ったんですよね!
真夏 : 彼女はTwitterをベースに活動する作家だからこそ、そこにヒントがあると思ったんです。なので遡って全部読みました(笑)。
妃奈子 : さすがです(笑)。
――Twitterに自身について書くというのは、個人的な意図などあるんですか?
妃奈子 : 単純に昔から「好き」って感じですかね(笑)。でもなんかいいじゃない、言葉が残しておけるって。短文だからこそ、本当に思ってることがプルっと出るっていうか。
ユニ : 濾過される感じっていうか。
妃奈子 : そうそう、いいも悪いもそこに表現できるなって思うんです。
音楽と映画の文化をもとにした表現を心がける理由・思いは?
――映画を元にした出会いの台詞には、何がありましたか?
ユニ : 台詞って流れで読まないとわからないものなんですよね。でも今回は切り刻まれて表現したものもいくつかあって。エレベーターで出会って、来週またコーヒー飲みいこ、っていうシーンの台詞で。「今じゃなきゃダメ?」っていうのがあるんです。繋がってるものもあったんですけど、切ることで結果的に面白かったかなって。
真夏 : 映画の台詞でユニから貰ったものは洋画のものだったんです。それが翻訳されてるってのは唯一無二のポエジーですね。今回引用した中で個人的に好きなのは、『「愛してるよ」「昨日より、今日のほうがずっと?」「明日ほどじゃないさ」』(『運び屋』クリント・イーストウッド)。これって、翻訳台詞の魅力なんです。そういう言い回しがエッセンスとして入ってくることで、デザインと写真と、日本語のバランスが少し崩れるのが超いいなって思ってて。
ユニ : 「訳した〜!」みたいなのあるよね。
真夏 : そうそう! 外国人は「〜なのさ」って本当に言ってるの?っていう勝手な和訳感が、スイート感やかっこよさを増す部分あるなって。
――見た人たちによって色々な捉え方がありそうだなって思いますね。
ユニ : でもそれがいい。それでいいんです。
真夏 : 歌詞でもポール・サイモンとか、スティービー・ワンダーの歌詞とかも入れて、コラージュしていくみたいに言葉を作っていきました。思いつきで書いたものも沢山あったけどね。
ユニ : でも一見さんが入ってきて興味持ってくれたやつもあるよね。
妃奈子 : 「ラブ阿弥陀仏」とかね!
ユニ : あの抜け感がよかった!解放して楽しむってことができたかなと。本気で恋についてだけを語り尽くしてるなってことではなくてある種の抜け感が欲しかったのもあって。あれ持って帰ったもんね? 笑
真夏 : 持って帰った。笑
ユニ : 額に入れたままにしてね。
妃奈子 : 笑
クリエイティビティとポエトリーの化学反応について
――<RinRin>が心がけているような、互いのエッセンスを取り入れて掛け合わせていく制作が始まった理由ってなんだったんでしょう。
ユニ : 単純に私が“映画”方面で、真夏が“音楽”の人で。でも映画って、第七芸術と言われているもので音楽との共通点もあるのに、案外距離が遠いなと前から思ってたんです。だったら単純にやってみよかなって思ったのがきっかけで。
真夏 : 昔、ユニのつながりで映画「イン・ザ・ヒーロー」の挿入歌「 1500円のオトコ」という曲という曲の歌唱をしたことがあるんですよ。現場が映画愛に溢れてたのもあったんですけど、歌詞が本当に素敵で。その時の体験は大きかったかもしれないです。あと、エンドロールに自分の名前が入っていたのも感動しました。
ユニ : 泣いてたもんね。笑
真夏 : イヤイヤ本当!(笑)。関わった人たちの名前がクレジットされていくこととか、作っていくんだぞって思う気持ち自体には、ものづくりの魅力があると思ってるんです。これは大きな原体験でした。どのようなジャンルでも人に提供するってことは、苦悩もする。自分が音楽というドアを開けて、その先に違うプロダクトがあっても、シンプルにやりたいなって思えるような体験だったなって思います。
展示会で伝える上で意識していること・プロダクト、詩について
真夏 : あと、 <RinRin>イベントで毎回行うライブについては、絶対ライブハウスではできないもので、感動的なんです。
妃奈子 : あれすっごいよかったよ〜!
ユニ : めっちゃ後ろから二人で「あの曲やった?」とか言ってね!
真夏 : 毎回、展覧会用にセットリスト組んで、場所が持つ力の中で音楽をやらせてもらってね。あれはライブハウスではできないものなんです。世界観が既に出来ていて、アベレージが取れないところで音楽をやるって、私にとっても素晴らしい体験で。
ユニ : 今回は特にね、空間も特別だったしね。
妃奈子 : 個人的なテーマが「バイオロジー」だったのもあって、実際にライブでやってくれて本当に嬉しかった!
真夏 : 妃奈子ちゃんって、全然ライブハウスに行かないんです!!
妃奈子 : そうそう! 「o-nest」のライブも緊張しすぎて間違えてトイレに行っちゃったり! わかんないのよ、入り口が!
真夏 : 初対面のときに、初っ端から「ごめんね私音楽あまりわからないの!ライブハウスも行かないの!」って言われて笑。
妃奈子 : 最初にちょっと言っておこうと思って。人生2回目のライブがまなっちゃんのライブだったんだよね!
真夏 : 妃奈子ちゃんみたいにライブハウスに「行きづらいな」って思ってる人の話を聞いたら、自分の中にあった通常のルールがかなり閉じてたんだなってことに改めて気がつきました。現状の音楽シーンではない中にも、必ず音楽みたいなものを受け入れる幅があって、その幅を追求したいなって思ったんだよな。
妃奈子 : 私の友達は、ライブハウス行かないんです。でも、まなっちゃんの歌詞とかファッションとか好きだと思うんですよ。今回のメインビジュアルで作ったものとかも好きなんですよ。今回参加した展覧会を通して、まなっちゃんのライブを見て欲しいなと思ったのもあって、頑張ろって思ったんですよね。
ユニ : 土壌が離れている感じって、わかるかも。
真夏 : ルーティン化しやすい活動のルールに一個ずつ穴を開けることが大事だと思っていて。例えば今回ユニが架空の映画としてポスターをデザインしてくれたんですけど。映画のポスターの中には、かっこいいデザインが多く残っていて。そういうことなんかも、ちょっとずつでもこの活動を通して知ってもらえるような活動ができればいいなって思ってます。
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