その4:メタルフレームでも個性が死なない
ファッションとしてメタルフレームのラウンド型やティアドロップのメガネをかける女子は多いけれど、しかしあいみょんがメタルフレームのメガネをかけると、今風でも古の文学者風でもない「あいみょんがラウンド型のメタルフレームのメガネをかけている」という事実だけが際立つ。トレンドアイテムはアイテム自体が印象に残りがちだが、彼女の場合、あくまでもその印象はあいみょん自身だ。
— あいみょん (@aimyonGtter) 2019年8月4日
その5:赤リップがモードを超えてくる
テンプレではないが、時々赤リップのあいみょんの写真を見ると、これまたトレンドとは一線を画す表情を見せる。アルバム『青春のエキサイトメント』時のオフショルのオールインワンで寝そべり、スイカを手にするあいみょんの赤リップは鮮明な印象で、あの当時は若干モードよりに見えたが(スタイリングのせいもあるだろう)、最近は「女の迫力」みたいなものを感じさせる。ちょっと話が脱線するが、フルメイクより赤リップに重点を置くことでその人自身が際立つという意味ではCHAIの赤リップも共通するような。
その6:ジョン&ヨーコのTシャツ
武道館公演の後半であいみょんが着用していたのがジョン&ヨーコの「ダブル・ファンタジー」のジャケット・プリントだったのだが、これが似合ってしまうのは「どうせ死ぬなら」で“ジョンレノンのあの曲を聴きながら逝きたい”というリリックとも符丁するんだが、それだけじゃない。あいみょんに影響を与えた膨大な先人アーティストへのリスペクトがあるからだ。それが何を意味するか知らずにストーンズやニルヴァーナのシンボリックなTシャツを着る人に別に罪はない。でも、その人たちはファッショニスタではあってもおそらくアーティストとは違うセンスで服を着ているのだろう。
その7:一人武道館の背中
初の武道館公演を弾き語りというスタイルで成し遂げたあいみょん。可動式のセンターステージはむしろ表情が見える時より、彼女の背中を見ていたとき、14,000人の気持ちを一身に浴びながら、「ただ自分は今できることをやるだけ」という覚悟を感じた。ちょっとこの項目だけ、ルックスから論点がずれたが、武道館のセンターステージで弾き語りが成立するアーティストといえば、近年、星野源かあいみょんかというぐらい強く印象に残っている。
あいみょんは1stアルバム『青春のエキサイトメント』のインタビューで、「純粋に音楽を認めて欲しくて音楽をやってる上で、自分の人生なんてどうでもいいんです。家が貧乏とか、死んだ友達がとか、そんなこと言ったら誰でも売れてしまう」――自分の人生の背景なんてどうでもいい。アウトプットした音楽で判断して欲しいと言い切ったあいみょんのスタンスを約1年半後の武道館に一人で立つ彼女の背中に見たというわけだ。
だから結局中身なんでしょ?というのは正論ですが、あいみょん本人もコントロール不可能な身体性やビジュアルの部分で、彼女のアトモスフィアは変化しつつも確立しているのです。
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