今年もこの季節がやってきた!世界最大のムービーアワード、アカデミー賞
ノミネートされただけで大きな影響力を持つ、映画界最大の権威『アカデミー賞』。今年は3月4日(現地時間)に開催を予定しており、それに際して先日1月23日に全ノミネート作品が発表されました。グラミー同様、毎年話題には事欠きません。これについては「審査員の価値観」という定量化できないものを基準に対象を選出しているため、ある程度仕方のないことだと思います。むしろショーレースの醍醐味はそこにあると言ってよいでしょう。昨年で言えば、やはりこのシーンでしょうか。
ケイシー・アフレックの主演男優賞受賞
昨年、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』で主演男優賞を受賞したケイシー・アフレック。作品と彼の演技は本当に素晴らしかったのですが、彼の受賞に対しては議論を呼びました。なぜなら、彼はこのときかつて同僚であった女性から性的嫌がらせを告発され、世間から冷ややかな目を向けられていたのです。プレゼンターを務めたブリー・ラーソンに至っては、彼にオスカー像を渡す際に拍手をしませんでした。上の動画の1:30から一瞬だけ引きの画でステージが映し出されますが、ラーソンはただ立っているだけ。名誉を受けた人物を立てるアカデミー賞において、彼女の行動は極めて異例でした。
もう一度言いますが、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』自体は本当に良い映画なんです。それだけに本筋とは違うところで汚点が生じてしまうのは残念ですね。ちなみにケイシー・アフレックは、今回のアカデミー賞授賞式には参加しないそうです(前年の受賞者はプレゼンターとして登壇するのが通例)。
映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』予告編
さて、今回のアカデミー賞の話に移りましょう。最多ノミネートは、ギレルモ・デル・トロ監督による『シェイプ・オブ・ウォーター』の13部門。次いで、クリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』が8部門で候補に挙がっています。前哨戦のゴールデン・グローブ賞の結果、そしてこれまでのアカデミー賞の潮流も踏まえ、今回のオスカー像の行方を考えてみましょう。
1. アカデミー賞の要、作品賞を勝ち取るのは?
■作品賞ノミニー一覧
『スリー・ビルボード』
『シェイプ・オブ・ウォーター』
『君の名前で僕を呼んで』
『ダンケルク』
『ゲット・アウト』
『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』
『ファントム・スレッド』
『レディ・バード』
『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』
作品賞に限り、第82回アカデミー賞からノミネートの対象となる映画が5枠から10枠前後に拡大されています。授賞式への関心を高めるための施策ではありましたが、ここへ来てその効果をもたらし始めるのでは。というのも、今回のノミニーはかなりレベルが高い。いつもなら脇目も振らずノーランの映画を激推しする筆者ですが、ちょっと今回は厳しいかもしれません。恐らく作品賞は『スリー・ビルボード』と『シェイプ・オブ・ウォーター』の頂上決戦になるのでは。海外メディアの評価を見るとやや『シェイプ・オブ・ウォーター』が優勢ですね。
映画『シェイプ・オブ・ウォーター』予告編
けれども、ゴールデン・グローブ賞で『スリー・ビルボード』は下馬評を覆しております。先日1月8日に開催された同賞でも前評判では『シェイプ・オブ・ウォーター』が最有力候補でしたが、蓋を開ければこの結果。まぁデルトロは映画界の功労者としての評価もありますから、依然として『シェイプ・オブ・ウォーター』が優位なのは変わりませんが、『スリー・ビルボード』のオスカー受賞も十分に可能性はあると思います。
気の毒なのは他の作品。『ダンケルク』はもちろん、『ゲット・アウト』や『レディ・バード』、『君の名前で僕を呼んで』も相当良い映画です。あのポール・トーマス・アンダーソンの『ファントム・スレッド』ですら、今回はノミネート止まりでしょう。間違いなく、平時であればいずれも本命候補だったはず。
2. 作品賞とセットで贈られることの多かった監督賞だが果たして・・・。
■監督賞ノミニー一覧
クリストファー・ノーラン『ダンケルク』
ジョーダン・ピール『ゲット・アウト』
グレタ・ガーウィグ『レディ・バード』
ポール・トーマス・アンダーソン『ファントム・スレッド』
ギレルモ・デル・トロ『シェイプ・オブ・ウォーター』
かつて監督賞と作品賞はセットで贈られることが多かったですが、ここ最近はそれにも変化があります。直近5年の間に、作品賞と監督賞を同時に受賞した例は、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥによる『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』の一度のみ。ここでもデルトロが優勢ですが、ありうるのはクリストファー・ノーランの受賞。
映画『ダンケルク』予告編
ノスタルジーでなく最高レベルの作品を作るために「あえてフィルムで撮影する」という革新性と、映像表現に対するあくなき向上心。それらを、3DやVRで溢れかえる現在において、完璧な「体験」として観客に提示して見せたのが『ダンケルク』です。しかも興行的にも大成功している。個人的な期待も込めて、監督賞の動向には注視したいですね。
3. ゲイリー・オールドマンが圧倒的な強さを誇る主演男優賞だが・・・
■主演男優賞ノミニー一覧
ダニエル・デイ=ルイス『ファントム・スレッド』
ティモシー・シャラメ『君の名前で僕を呼んで』
ゲイリー・オールドマン『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』
ダニエル・カルーヤ『ゲット・アウト』
デンゼル・ワシントン『ROMAN J. ISRAEL, ESQ.(原題)』
ゴールデン・グローブ賞主演男優賞(ドラマ部門)の他、様々なアワードを総なめにしているのがゲイリー・オールドマン。前評判では圧倒的です。『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』でチャーチルを演じた彼は、現時点でオスカー受賞をほぼ確実視されています。
映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』予告編
けれども、どうしても無視できない存在がひとり。『ファントム・スレッド』を最後に俳優業引退を表明している、ダニエル・デイ=ルイス。『マイ・レフトフット』、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』、『リンカーン』で三度(史上最多)もアカデミー主演男優賞に輝いている大役者の引退ですから、今回何かしらのサプライズが用意されてもおかしくはないでしょう。
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