ブレインフィーダーやロバート・グラスパー周辺が好きな人たちへ
今年も良い音楽がたくさん出てきましたね。相変わらずブレインフィーダーやロバート・グラスパー周辺のアーティストはカッコ良くて、まだまだ新世代ジャズシーンの勢いは止まりそうにありません。いつの間にか、ジャズにヒップホップやテクノ・ミュージックが合流することが珍しくなくなった昨今。
まぁ昨今と言ってもこれは去年今年始まった動きではなく、2010年代に入ってから急激に広がった潮流です。その中心にいたのが、先述のアーティストたちでありました。
で、その大きなうねりの中には日本人アーティストも複数いるわけです。今回の記事ではそんなハイブリッドな才能をピックアップしてみます。
1. WONKの勢いが止まらなかった2017年
近年、やはりこの手の話題で無視できない存在がWONK(ウォンク)でしょう。彼らは今年何枚のアルバムを世に送り出したのか?9月にセカンド・ツインアルバム『Castor』と『Pollux』をリリースし、その後間髪入れずにセロニアス・モンク生誕100周年記念トリビュートアルバム『MONK’s Playhouse』に参加。さらにはニューヨークのフューチャーソウルバンド、ザ・ラブ・エクスペリメントとの共作『BINARY』をリリース。共作も含めれば計4作ですよ。
WONK – 『Economic Wonderland feat. Epic』
もちろん数を出せば良いってものでもないですけれども、今年の彼らは質を全く落とさずに良い音楽を量産できたわけです。『Gather Round』も『Midnight Cruise』も、それぞれのベクトルでそれぞれに素晴らしい。世界が彼らを知る日も近いのでは。ジャズシーンのみならず、今年最も輝いたバンドの一組でしょう。
2. bonobosの『FOLK CITY FOLK』をとにかく聴いてほしい。
昨年リリースされたbonobosの7枚目のフルアルバム『23区』。紛れもなく傑作でありました。このアルバムを年間ベストに選ばぬ音楽メディアは存在するのだろうか・・・?と思えるほどに。
で、そいつをさらに上回ったのが今年発売のEP『FOLK CITY FOLK』。本作には2005年にリリースされた『THANK YOU FOR THE MUSIC』をセルフアレンジ・セルフカバーしたものが収録されていますが、まさしくこのアレンジの仕方が彼らの現在地を指し示していたのです。
bonobos – 『THANK YOU FOR THE MUSIC (Nui!)』
泣きますがな・・・。現行ジャズは時に攻撃的な場合もあります(フライング・ロータスは今日も絶好調)が、bonobosはその流れを汲みながら圧倒的に優しく、オーガニックな印象すら受けます。特に本作の初めの二曲『PETRY & FLOWERS』と『Heavy Weather Flamingos』の切れ味は凄まじい。記事の末尾にSpotifyのプレイリストとしてまとめてあるので、ぜひ聴いて下さい。本当、凄いことになってますんで。
3. 年の瀬に現れたエイリアン、MELRAW
音楽に憑りつかれたエイリアン”MELRAW”。WONK擁する<エピストロフ>に所属するマルチプレイヤー、安藤康平によるソロ・プロジェクトであります。つい先日、ファースト・アルバム『Pilgrim』をリリースしたばかり。安藤はWONKのサポートメンバーとして知られており、彼らのライブを観たことがある人にはお馴染みのサックスプレイヤーです。
MELRAW – 『Through the Space feat. Ryohu & Matzuda Hiromu』
何となく「エイリアン」というコンセプトがしっくりきませんか?今の混沌としたジャズにピッタリな形容だと思います。今回のソロ・プロジェクトで、安藤康平はサックスのみならずギター、キーボード、MPCと様々な楽器を手に取り縦横無尽なサウンドを奏でています。呂布 from KANDYTOWNや吉田沙良 from “ものんくる“など、参加メンバーも豪華。この横の繋がりが見えるあたりもヒップホップらしくて良いですね。
4. POLPTOMのような才能がユラユラと浮遊するインターネットの大海
今年の2月ぐらいだったか、いつものようにSNSの大海から流れてきた音源を聴いていたら『京音-KYOTO- vol.2』というコンピレーション・アルバムに出会いました。その名の通り、関西の若手アーティストを集めたコンピレーションです。その中の一組がPOLPTOM。彼らは『傀儡のタイル』という曲で参加していたのですが、一聴して度肝を抜かれましたね。
POLPTOM – 『傀儡のタイル』
isagen(TREKKIE TRAX)名義で活動するトラックメイカー/DJの提坂智之と、ドラマー武田啓希とのバンド・プロジェクト(セイカレコードより引用)。
このサウンドをジャズの範疇に押し込むのはなかなかリスキーなことかもしれませんが、それこそブレインフィーダーの面々が当初はそのような存在だったはずです。このリスキーさでもって、新世代のジャズアーティストたちは邁進し続けている。
ちなみにPOLPTOMのアルバム『Mountain』は2017年12月現在、Bandcampにて無料ダウンロード可能です。
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