3月から開催されているSKY-HIの全国ツアー『SKY-HI HALL TOUR 2017〜WELIVE〜』が、東京・日本武道館にてファイナルを迎えた。本ツアーは、1月に発売した3rdアルバム『OLIVE』のコンセプトに基づいて「LIVE」と「LOVE」をテーマにしている。ファイナルの日本武道館では5/2と5/3の2days公演となった。
本記事では、SKY-HIにとって初めての武道館公演(本人の言葉によれば「武道館バージン」)である、ツアーファイナル初日の様子をレポートします!
Text_Sotaro Yamada
Edit_司馬ゆいか
まずは、この記事内で紹介している曲のプレイリストを聴きながらどうぞ。
即日SOLD OUTしたというツアーファイナル初日。武道館は開演前から熱気に満ち、Tシャツ・タオルに身を包んだFLYERS(SKY-HIファンのこと)や、武道館限定グッズのフラッグ(旗)を掲げるFLYERSで埋め尽くされていた。
ステージ上のスクリーンにはオープニングSEとしてマイケル・ジャクソンやプリンスのモノクロ映像が映されていたが、開演時間になると照明が落ち、歓声があがる。スクリーンにオリーブの樹が映し出され、幕が落ちると「OLIVE」の文字をかたどったステージが出現し、中央に黒いスーツ姿のSKY-HIが現れる。
大声援が地鳴りのように武道館を揺らす中、「ひっくり返しに来たぜ!」とギター片手に『Double Down』でスタート。
存在感を放つSUPER FLYERS
続く『Ms. Liberty』『BIG PARADE』ではダンサーたちと息の合ったダンスを見せ、右から左へと広いステージを駆け回る。3Horns、2Chorus、1DJ、そしてバンドメンバーが情熱的なアレンジを加え、文字どおりSKY-HI & SUPER FLYERSによるビッグパレードが始まった。
最近のSKY-HIのライブで特筆すべきは、SUPER FLYERSのパフォーマンス。彼ら一人一人に強いキャラクターと存在感があり、バックバンドという感じがまったくないのだ。 たとえるならBruno Mars & The Hooliganのように、いやそれ以上に、SKY-HIとSUPER FLYERSが一体となり、互いが不可欠な存在として絶妙に融合している。
そうしたことから、本公演の看板にすべてのメンバーが登場していることは、仲間思いのSKY-HIによる心遣いである以上に、重要な意味を持つだろう。
高速ラップが炸裂!
中盤では、ラップメドレーで得意の高速ラップを披露。アルバムに収録されていない「ダンジョン・シリーズ」もコンプリート。後方に現れたスクリーンにはリリックと映像が映された。
ライブで映像を使うミュージシャンは多いが、今回のSKY-HIのライブが他と違うのは、スクリーンの下方に「LIVE」という文字が常に透けて見ていていたこと。ラップメドレーでこのスクリーンが現れたことを考えると、この世界をラップという技で「生きて(LIVE)」きたSKY-HIの自負を感じる。
こうして武道館公演を行うことは、彼がラッパーとして渋谷のクラブに足を運び始めた頃は非現実的な話に思われただろうが、彼にとっては「水の上を歩くように簡単なこと(『Walking on Water』)」だったわけだ(それにしてもこの言葉は含蓄に富んでいて本当にニクい)。
また、キレのあるダンスもSKY-HIの得意技のひとつ。随所にマイケル・ジャクソンへのオマージュなども挟み込むなど、惚れ惚れするようなパフォーマンスを見せた。
MCも調子が良く、気合いが入り過ぎて前日にハーフマラソンを走ってしまったことなどでオーディエンスを大いに笑わせた。
さらに、一部ですでに話題になっている『センテンス』と名付けられた寸劇。これはダンサーのKensukeを主人公にしたミュージカルダンスショー。家出をしたい少年と、息子を止めようとする父と母、そしてなぜか現れる警察官による4人のコミカルな物語が、舞台裏に退いたSKY-HIのラップによって語られる。ダンサーズはトップレベルのダンスと、これまたレベルの高い演技力で武道館を沸かせる。
物語終盤、FLYERSに会うために家を出ることになった4人に、「俺も混ぜてくれよ」と、茶色いセットアップに着替えたSKY-HIが合流。
そのまま『アドベンチャー』『How Much??』『Seaside Bound』と人気ナンバーを続け、さらには5月31日にリリースする新曲『Silly Game』を今回のツアーで初披露。武道館は熱狂に包まれた。
SKY-HIが語る「夢」
熱狂の中、MCでは、彼自身の壮大な「夢」が語られる。
それは文字にしてしまえば「世界平和」という簡単な四文字で表せる夢で、遠く離れたことのようにも感じる。
しかし、「ものすごく身近で一歩目は簡単なことだ」とSKY-HIは言う。なぜなら、すべての争いは人と人との関係性から生まれるからだ。
たとえば、友達と友達が喧嘩をしていたら、止めたいと思うのが普通だろう。同じように、日本ではない遠い国同士が争い合っているとして、その両方の国に友達がいたら、その争いをなんとか解決出来ないだろうかと、自分事として考えられるようになるだろう。
つまりは、今日よりも明日、友達や周りの人に優しくできたら?その友達がさらにその友達にもにも優しく出来たら?優しさは連鎖していき、世界平和の一歩になるのだと。
「だからその一歩として、俺は君たちに『幸せだ』と思ってもらわなければいけない。そうして今日幸せになったら、誰かにそれを連鎖させてほしい。お前のうしろに世界全部を見てる。だから俺はこれからも命をかけて曲を作り、歌います。今日は来てくれてありがとう!」
こうして語られたSKY-HIの「夢」は、何も昨日今日いきなり出てきたわけではない。『OLIVE』のコンセプトがすでにそうだった。ミーティアが行ったインタビューで、彼はこう答えている。
「ライフタイムサウンドトラック」って途中で(作品のことを)呼んでたんだけど。(中略)その人の人生において、通過する前と通過したあとで、通過したあとの方がいい人生になれるもの。
(ミーティア『SKY-HI『OLIVE』ニューアルバムに込めた生命力を語る』)
このインタビューで語られている「いい人生」を、「友達や周りの人に優しくできる人生」と言い換えてもいいだろう。
音楽を通して、それを聴いたり観たりしたあとでは、友達に優しくできるようになること。
それを通して、世界が平和になっていくこと。
音楽家としてライフタイムサウンドトラックを作り続け、人々の幸せに貢献すること。
そういったことを「世界平和」と表現することは、SKY-HIが以前から持ち続けていたポリシーとまったく矛盾しない。彼は以前から持ち続けていたポリシーをさらに明確に言語化し、武道館に集まったFLYERSの前で高らかに宣言したのだった。
感動的な雰囲気の中、『LUCE』『クロノグラフ』をキーボードの弾き語りで演奏。『カミツレベルベット』では照明をすべてライトアップさせ、天井から銀のテープが落ちてくる中、ステージからフロアに降りてオーディエンスに接近するなど大きな見せ場を作った。ラストは『リインカーネーション』。「転生」を意味する曲で、自身が何度でもFLYERSの前に現れることを印象づけた。
こうして大成功のうちに、SKY-HIにとって初の武道館公演(初日)は幕を閉じた。
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