5月13日に東京・新宿MARZにてavengers in sci-fi(アヴェンジャーズ・イン・サイファイ)の最新アルバム『Dune』のリリースを記念したイベント「avengers in sci-fi “6th Album『Dune』リリース記念公開インタビュー&LIVE” Supported by 旅と音楽、岩下の新生姜」が開催された。
このイベントではニューアルバム『Dune』を音楽的な側面から紐解く公開インタビューを、司会進行をタイラダイスケ(FREE THROW)、インタビュアーにavengers in sci-fiを古くから知る元スタッフのヌメンチョ3が担当。90分を超える公開インタビューをテキスト化し特別掲載します。
撮影:西槇太一 構成:高橋美穂
タイラダイスケ:お集まり頂いてありがとうございます。avengers in sci-fi、6枚目のアルバム『Dune』の発売を記念したインタビュー&ライブということで、『旅と音楽』と『岩下の新生姜』さんのサポートのもと、このイベントをやらせて頂きます。司会をやらせて頂きます、FREE THROWのタイラです、よろしくお願いします。そして……突っ込みどころが多すぎますよね(笑)。
ヌメンチョ3:@%&$#*。
タイラ:ジェイソンマスクで声がこもり過ぎてますよ!(笑)。
ヌメンチョ3:今日は13日の金曜日だから、それだけなんですけど(苦笑)。私は、avengers in sci-fiに関するコラムを細々と書き続けていたんですけれど、遂にこういう場所に駆り出されてしまいました。よく、こんなにお客さんが来てくれたなって。インタビュアー、ヌメンチョ3……誰!?って思うでしょうに。
タイラ:知る人ぞ知るということで(笑)。よろしくお願いします! さっそくメンバーをお呼びします。avengers in sci-fiの3人です!
3人:よろしくお願いします。
タイラ:ここから長い時間、『Dune』について聞いていこうと思います。コンセプトとかはあったんですか?
木幡太郎:そんなにコンセプトアルバムっていう感じではないんですけれど……音楽の面では90年代がテーマで。僕がロックを聴きはじめた頃に流行っていた音楽、ニルヴァーナとかブリットポップ、ダンスミュージックでも90年代的な、アンダーワールドやブレイクビーツやドラムンベース……。
タイラ:ファットボーイ・スリムやケミカル・ブラザーズとか?
木幡:そういうのがテーマでしたね。
タイラ:前作(『Unkown Tokyo Blues』)でもその片鱗は見えていて、今作で開花したような気もします。
木幡:そうですね。前作はバンドらしくなったというか、演奏していて楽しい曲が増えて。『Disc 4 The Seasons』の頃は、バンド感より音の緻密さとかを追求していて、ライブで演奏していて楽しいわけではなかったので。
タイラ:何も考えずにっていうよりは、いろんなことに気を配りながらのライブだった?
木幡:今も気を配ってはいるんですけれど(笑)、もうちょっと自由にセッションしたりしたいっていうのが、『Unknown Tokyo Blues』のカラーでした。
タイラ:今作も、そのカラーがしっくりきた?
木幡:そうですね。継承しつつ。
タイラ:こういう場所では、太郎くんがよくインタビューに答えるじゃないですか。だから、今日は他の二人にも答えてほしいなって思っていて。でも、さっき稲見くんに『いろいろ聞いていい?』って聞いたら、『結局はハートなんで、答えることはないです』って言われちゃって(笑)。
稲見喜彦:いやいやいや! 思っていることがあっても、言葉をあまり知らないから喋れないんですよ。ハートってそういう意味です(笑)。
タイラ:じゃあ、稲見くんにも今作について聞いてみましょう。
稲見:個人的なテーマで、自分が今まで音楽を聴いてきて血となり肉となった感覚を今作聴いて感じれるように、音、フレーズ、曲展開を作っていきたいと思ってました。ヌメンチョもそうだけど、太郎と俺は同じ釜の飯を食うように、同じような音楽を聴いてきたんでなんとなく感じかたは近いかと。
タイラ:そのへんはヌメンチョさん、聴いていてわかりました?
ヌメンチョ3:そうですね。高校の頃から同じような音楽を聴いてきたんで、ああ、わかるなあ!って、手に取るように。我々が90年代に聴いていた音楽の下地が、今作は色濃く出ていると思いましたね。
タイラ:ハッセはどうですか?
長谷川正法:前作からの繋がりは凄く感じて。『Disc 4 The Seasons』の頃と比べるとライブを意識していることもわかったし。僕的には生の要素をもっと取り入れて、なおかつ90年代の雰囲気に持っていきたいっていう気持ちをくみ取ったつもりです。全てに応え切れたかは何とも言えないんですけれど。
タイラ:そのへんは太郎くん、どうでしたか?
木幡:さあ、どうでしょう?(笑)。っていうか、全て応えなくていいんですよ。応えたらそのままになっちゃう。ケミストリーは裏切りから生まれるので。
タイラ:なるほど。聴いてみても、作品や曲に寄り添いつつ、でもハッセの色は見えると思いました。この2作でハッセは変わってきましたよね。
長谷川:変わりましたね。昔に比べてテンポもずっしりしてきて。昔はテンポが速かったから流し込むような連打系が多かったですけれど、タメを意識したフレーズが増えたと思います。
タイラ:あと俺が思ったのは、仲良くなった頃の太郎くんは、ダイナソーJr.のTシャツをよく着ていて。
木幡:着てました着てました(笑)。
タイラ:今作を聴いて、Tシャツは着なくなったけれど、やっぱり太郎くんの中にはダイナソーJr.がいるんだなあって思いました(笑)。
木幡:そうですね。ようやくここに辿り着いたなあって。中学くらいで初めてニルヴァーナを聴いたんですけれど、よく自分の代弁者って言うじゃないですか、ロックスターを。まさにニルヴァーナは思春期の頃の自分にとってそういう存在で、理由のないイライラをぶちまけるようなパワーがあって。だからギターを始めた頃はそういう音楽を作りたかったんですけど。ニルヴァーナ的なことをやるのは、日本人にとって難しいんですよ。日本語詞とのマッチングも難しいし、歌謡の要素が薄いんで。自分たちがやってもさまにならないと決めつけてるところがあって。
タイラ:今までも挑戦したい気持ちはあった?
木幡:ほんとの初期は取り組んでいたんですけれど、途中で、今やることは90年代的なものじゃない、時代が変わってんじゃんって。それこそ”NAYUTANIZED”とかを作った頃ですね。2000年代初頭って90年代のオルタナやグランジの、ギターの音圧で塗り固めるようなやり方はナウくなかったというか(笑)。
タイラ:当時は使い古されていて新しくなかったかもしれないですね。
木幡:もうちょっと隙間を感じるような音が新鮮な時代だった。フランツ・フェルディナンドだったり。
タイラ:ザ・ストロークスやアークティック・モンキーズもそうですね。
木幡:そういう時代の空気があったんで、自分的にも90年代のサウンドはちょっとオシャレじゃないなって思ったんで、だいぶ封印してました。
タイラ:でも、前作くらいから、やってもいいんじゃないかと思えるようになったんですよね。それは時代の風向きが変わってきたと感じたから?
木幡:そうですね。ニルヴァーナの再来、みたいなポップで登場するバンドも増えたり、そういうのを聴くとカッコいいなって思う自分がいたり。
タイラ:一周廻って新鮮に聴こえると。ヌメンチョさんはアベンズを初期から見てきたんですよね。俺が初めて見たのも相当前ですけれど、“NAYUTANIZED”は既にやっていたので、その前はどうだったんですか?
ヌメンチョ3:パンクというか、ハイスタというか、REACHというか。
タイラ:REACH好きそうでしたよね!
ヌメンチョ3:そこに宇宙の要素が入ってきた感じですよね。
タイラ:お客さんはREACHってピンときます? 素晴らしいバンドがいたんですよ。
ヌメンチョ3:すっげえ複雑なメロコアというか。
稲見:ステップアップするためには、REACHの存在はデカかったです。エフェクターを知るキッカケになりましたから。シーンに対する姿勢も好きだったし。
タイラ:じゃあ、ヌメンチョさんが見ていた初期はグランジという感じでもなかった?
ヌメンチョ3:はい。そこからザ・ストーン・ローゼスの方に行ったこともあって。
木幡:一回インディーロックに戻ったね。
ヌメンチョ3:だから、1stミニアルバム(『avengers in sci-fi』)は、ローゼズっぽかったり。今と一番近いよね。
タイラ:“不時着”好きだったなあ。
稲見:もう二度とやらないでしょうね(笑)。
タイラ:なんでなんでなんで!?(笑)。いい曲じゃん。
木幡:音が若いっすよ。今の俺がプロデュースしてあげたい(笑)。
ヌメンチョ3:前から共通しているのは、サウンドは変わってもメロディはキャッチーですね。そこは気持ちいいです。
タイラ:褒められ慣れていないからですか? 3人ともニヤニヤしていますね(笑)。
稲見:いや、一番褒めてくれるのはこいつですよ。いつも最初にアルバムをあげるんですけれど、必ず電話をかけてきてくれるので。
タイラ:そうですか(笑)。ここからは一曲ずつ話を聞いていきますね。ヌメンチョさん、褒めちぎって下さいね(笑)。では、1曲目の“Departure”。
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