大切なことは今この瞬間にある
ぽおる : 本当に、『IWGP』は何回見返したかわからないくらい好きなドラマなので。キングに限らず、窪塚さんは強烈なキャラクターを演じることが多いですよね。そういったキャラは、撮影が終わったあとに自分の中から抜くものですか?
窪塚 : 抜こうとは思うんだけど、やっぱ何かしらの影響は受けているんだよね。その前の自分と、その役を演じている時の自分と、終わった後の自分はちょっと違う感じは正直ある。のめり込んだ役ほど自分に影響を残していると思う。ペコ(『ピンポン 』)をやればペコっぽさが少し自分の中に残るし、安藤タカシでもキチジロー(『Silence-沈黙-』)でもそう。その繰り返しで今まで生きてきたから、これまでの作品がひとつでも欠けていたら、厳密には今の自分と違う自分だったかもしれない。でも自分の芯は変わっていないつもりだけどね。芯はしっかりあって、余白の部分にいろんな役が入って引き出しが増える感じ。
ぽおる : 個人的には映画『Laundry』がすごく好きなんです。窪塚さんは子どもの頃に事故が原因で脳に障害が残った青年・テルを演じていますが、あのキャラクターにもモチーフがあったんですか?
窪塚 : あれは若干だけど『ギルバート・グレイプ』でレオナルド・ディカプリオが演じた知的障害者の子がエッセンスとして入っているかもしれない。今やれと言われたら、もちろんやるけども、ちょっと難しい役のひとつな気がする。自分がもっとピュアだったからできた気がする。
ぽおる : 僕は『ピンポン』『凶気の桜』『GO』という順番に窪塚さんの映画を見たので、「アウトローで適合できずにはみ出して生きていく人」というイメージを抱いていたんです。そのあとで『Laundry』を見たら、それまでに見ていた窪塚さんのイメージとはあまりにもギャップがありすぎて、余計にこの作品を好きになりました。すごい振り幅だと思います。小説版も読みました。
窪塚 : 振り幅という意味では、自分がシンプルにゼロでいれば、アクの強いエッジの効いた役もその真逆にある役も、どっちに行くのも同じ距離感で行けると思ってる。だから当時は「役者はゼロであるべきだから、歌なんか絶対歌うもんじゃないし、ましてやプライベートなんて絶対に出すべきじゃない」とか言ってたんだよね。真逆になっちゃったけど(笑)。でもその気持ちはあんまり消えていなくて、全部さらけ出してしまえば、それはもう、まったくさらけ出していないのと同じだろうという気持ちがあって。インスタライブで泥酔なんてその最たるもので「ここまで見せたら、もう映画を見る時は忘れてくれ」みたいな(笑)。
ぽおる : やっぱり窪塚さんって、誰もが無視できない存在だと思うんです。役者というジャンルに興味がない人も気になる存在ですよね。
窪塚 : でも10代の子とかは知らない子が多いよ。こないだも街で「あっ、マジシャンの人やー!」「ホンマやー!」って言われたんだけど、誰と間違えてんだろう(笑)。そういうふうに時代は流れていくし、みんなが自分のことを知っているというスタンスでいたらどんどん時代から遠ざかってしまう。仕事を続けたいのならば、いつも自分自身を更新することが必要で、常に挑戦して今日をbrand new dayにする必要がある。
ぽおる : そうですよね。
窪塚 : 過去は過ぎ去ったもの。もちろんぽおる君のように俺の過去を知ってくれているからこそ話せることもあるし、それは嬉しいんだけど、でも本質的には関係ない。今この瞬間にいちばん大切なことがある。今になるべく集中して生きていられたら、自分が想像もしていなかった素晴らしい未来がやってくるんじゃないかなと思う。
未来を描くよりも大事なこと
ぽおる : 今さらなんですけど、過去作品について聞かれるのって嫌ですか?
窪塚 : ううん、全然。嬉しいよ。忘れてることもあるけどね。ぽおる君の方がよく覚えてるし。
ぽおる : でもやっぱり今が最新だし、今後も新しいことをやっていく展望があるわけですよね。
窪塚 : というより、さっき言ったように、未来を描くよりも、今この瞬間を最高に生きて1日の終わりに感謝して眠れるようにすることに重きを置いていると思う。
ぽおる : やっぱ、目覚め良いですか?
窪塚 : うん。腸活もしてるしね。
ぽおる : 腸活?
窪塚 : ちょっと話が逸れちゃうけど、腸と脳ってすごく相関関係があって、腸が疲れている人は脳も疲れているのね。いろいろな病気は腸が原因だとする説もある。もっと言うと、性格にも腸が関係しているという話もある。仲間って、だんだん似てくるじゃん? 夫婦も似てくるよね。あれは、お互いに菌を共有し始めるからなんだって。つまり、ぽおる君が触ったものを俺が触って食ったり飲んだりしていると、俺はぽおる君と同じ菌を身体に入れることになる。だから似てくるんだって。
ぽおる : なるほど……。
窪塚 : 性格ってことは、つまり運命なんだよ。それくらい、人間にとって腸は大事なんだって。だから腸活をしていて、具体的には根菜類と海藻類と発酵食品を中心に摂って、あわよくば1日1食の生活ができるように調整している。そうすると酒の燃費もすっげえ良くなるし、肌も綺麗になるし、10年くらい若返る感じがする。ファストフードやコンビニ弁当を食うのがロックだろじゃなくて、そこは健康でいこうよ、と。
ぽおる : 太く短い人生に憧れて、「27で死ねずさらす生き恥」みたいなラインを書いた時期もあったんですけど、今はむしろ「人生が足りない」と思うようになりました。
窪塚 : 間違いない。なんなら140歳くらいまで生きたいよね。でも年齢ってただの数字って気もする。もちろん先輩には敬語を使うし、かといって後輩だからといって舐めないでみんなフラットに接するんだけど、バケモノみたいに若い人って世の中に存在してるじゃん。やっぱり身体が資本だし、それが揺らぐとうまい酒も飲めなくなる。身体というベースがあった上で自分の表現や生き方があるんだね。そういうふうにもっと多くの人が思うようになれば、何かニュースがあった時に叩くようなことも減るんじゃないかな。ああいう奴らを見ているといまだにちょっと腹が立つこともあって。自分が迷惑かけられているわけでもないのに、匿名で、顔も出さずに、思っくそ石投げてるじゃん。あいつら絶対腸活できてねーんだろうな、とか思いながら見てる。
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