上も下もなく、左も右もなく、ただその「人と人」として出会うこと
ぽおる : そういえば、窪塚さんも学生時代にバンドを組んでいたことがあったと聞きました。
窪塚 : そうそう、高校時代にバンド組んでて、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTとかのコピーもやってたよ。『世界の終わり』とかね。
ぽおる : THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、良いですよね。チバ(チバユウスケ)さんがすごく好きで。
窪塚 : カッコ良いよね! コピーは数曲くらいで、その後すぐにオリジナル曲をやり始めて。高校を卒業してからは、みんなバラバラになってしまってバンド活動は止まっちゃったんだけど。
ぽおる : ヴォーカルだったんですか?
窪塚 : そう。楽器がまったくできないからね。ギターを多少練習はしたけど弾きながら歌うのは無理だなぁと感じて。懐かしいな〜。
ぽおる : 当時の友達や仲間とは今でも仲が良いんですか?
窪塚 : うん。今のマネージャーも3歳からの幼馴染みだし、当時仲良かった奴らとか、その後に繋がった地元の奴らで仕事を回したりもしてるよ。いま、昔は怖くて喋れなかった不良の先輩とYouTubeの番組をやろうとしていて。腸内環境と地球環境に良いことをやっている企業や団体や人を取材してるんだよね。いくつか撮りためていて、2020年末あたりに公開できればと思ってるんだけど。
ぽおる : おお、それはすごく楽しみです!
窪塚 : かつて不良だった人たちが、今“そういう意識”になっているのをすごく感じるんだよね。3.11の時なんて、救援物資をソッコーで持って行った人たちの多くがタトゥー入ってたとかさ。不良が一気に動いている姿を見て感動したんだよね。結局、有事にいちばん頼れるのはこういう人たちなんだと思った。俺もそういう人間でありたい。
ぽおる : そういう人たちって、すごく人を大切にしますよね。人として一本筋が通っている人が多くて。
窪塚 : そうそう。だから、本当に信頼できる人が、社会的にはあまり信頼されていない人だったということが結構あるよね。もちろん、社会的に信頼されていてなおかつ人間として信頼できる人もいるし、その逆もあるわけだけど。そういうのはフラットに見られるようにしなければと思うよね。俺は事故のあとは特にフラットでニュートラルでいることの大切さを痛感してきたから、今ではそのスタンスが刷り込まれていて、もうそういうふうにしか人と会えなくなった。「〇〇だから偉い」とかじゃなくて、実際に会ってその人を見ないとわからないよ。
ぽおる : 本当にそうですね。今日、窪塚さんと対談することになって、どんな感じで接してくれるか不安だったんです。初対面の人と会うのはいつでも緊張するし、ましてやずっと一方的に知っていた人だったから。でもいざこうして会ってみると、窪塚さんは本当にフラットに接してくれて、こっちもベラベラ喋れちゃうような雰囲気をつくってくれました。
窪塚 : 垣根なんかなくて「人と人」でしかないからね。たとえばさ、インドに1人で行って、たまたま入った寺院で偶然日本人と出会うとするよね。その時の感覚って、日本でその人と出会う時の感覚と違うはずだよね。でもその感覚を、日本にいても持っていた方が良いと思うんだよ。上も下もなく、左も右もなく、ただその人とその人として出会う。その方が自分も気持ち良いし、良い未来にもなるから。
ぽおる : すごくよくわかります。
窪塚 : 仕事でもそういった雰囲気づくりは大事だと思う。映画の撮影でも、カメラが回る前から現場の温度を調節することはある。有名な女優が脱ぐシーンを撮る時はすごく緊張感が走っていたりして、そういう時は「あれ? これ挿れちゃっていいんだっけ?」みたいにアホなことを言って少し温度を下げたり、逆に、本番直前なのにスタッフがうるさく喋ってたりすると、あえて嫌な奴になって引き締めることもある。そうやって良い温度をつくることが最初の頃は全然わからなかったけど、経験とともにだんだんわかるようになってきて。もしかしたらライブでもそういうことがあるかもしれないね。
ぽおる : あります、あります。
窪塚 : 何事も1人じゃできないし、みんなを巻き込んで、一致団結して良いものをつくりたい。今日だったら、ここにいるスタッフ全員で良い記事をつくりたい。そういった空気づくりは重要だし、それができる自分でありたい。
ぽおる : 曲をつくる時によく感じるんですけど、自分ではなく「曲がいちばん偉い」と思っているんです。チームで動く時は、作品を良くするための行動を取っている人たちがどれくらいいるかということが僕も気になります。
窪塚 : 間違いない。あえて誰がすごいかといえば、みんなすごい。「俺もすごいけどお前もすごい」って感覚でいられればみんなが力を出し合えるし、自分がやるべきことに集中できる。その感覚があれば良いものづくりができると思う。
ぽおる : その通りですね。
自分が戦うべき相手と戦い、生きていくべき道を進むエネルギーに
窪塚 : 最後にもう1回『No.1』を一緒に聴きたいな。このやり取りがあって聴くとまた印象が変わるかもしれないし。歌詞も一緒に表示してさ。
INNOSENT in FORMAL『No.1』MV
窪塚 : (聴き終えて)ブラボー(拍手)!!
ぽおる : (照)
窪塚 : 改めて歌詞を読みながら聴いてみたら、俺のリリックみたいだなと思っちゃった。歌ってる内容もそうだけど、英語とのバランス感覚とか、優しさと刺々しさのバランスがすごく似てると思った。
ぽおる : 基本的に人を傷付けたくないんです。ロックにもヒップホップにも、誰かを攻撃しがちな要素があるじゃないですか。そこに馴染みきれない自分がいます。最近の日本のヒップホップではバトルシーンがすごく発達していますよね。でも僕にとって、初対面の人をディスるのはちょっと……。プロレスだと思って観る分には楽しめるけど、自分はその土俵に立てないです。
窪塚 : 言いたいことすげえわかるよ。本当の敵を隠すような影響を持ってしまっているよね。目の前にいるのは、本当は仲間なのに。俺も自分でレゲエDeeJayをやるときに意識しているのは、音楽を通して元気になってもらうこと。ケツを蹴り上げられたり肩叩かれたりして、自分が戦うべき相手と戦い、生きていくべき道を進むエネルギーにしてもらいたい。
ぽおる : すごく共感します。
窪塚 : だからリリックが似ているというより、俺たちはきっと、もっと根本的なところが似ているんだね。
<撮影協力>
Bar LIBRE(バーリブレ)
http://bar-libre.jp/
〒171-0021
東京都豊島区西池袋3−25−8 相馬屋ビルB1F
TEL:03-5956-6406
デジタルシングル「No.1」
価格: ¥239+税 | 品番: COKM-42987
INNOSENT in FORMAL
公式サイト
http://innosent.net/
Twitter
https://twitter.com/innosent_info
Instagram
https://www.instagram.com/innosent_info/
窪塚 洋介
SHARE
Written by