長いコメントだった。けれど心打たれた。「米津玄師」が好きで好きでたまらない、そんな言葉が綴られていた。その終わりに、「以前の米津さんを知らない人にはあえてdioramaを聞いてもらいたい」と。「フローライト」で十分感動できた。けれど、言われるままに遡りながら聞き、もう一度初めに戻ってきた時、そのコメントがもっと鋭く深々とササってきた。「これから初・米津」という人は、まず「ゴーゴー幽霊船」からどうぞ。
すべてを自分でこなす圧巻の才能。それは同時に孤独でもある。
アーティストとしての前身は、「ハチ」だ。2009年からVOCALOIDを使ったロックサウンドを作り、ニコ動で公開、その優れた音楽性は刺激的なものだった。2012年、「米津玄師」として活動をスタートする。最初のアルバムが「diorama」だ。作詞、作曲からアレンジも打ち込みもひとりでこなしている。さらにはMVの動画に使われたイラストも、すべて彼の作品である。「驚異の才能」であることは確か。同時に、この頃の米津はある意味「孤独な天才」だった。「diorama」に収録された楽曲の中でも、「ゴーゴー幽霊船」と「vivi」のセンスには、本当に圧倒される。尖ったような突き放したような歌詞とイラストのコラボレーションは、奇妙に切なくて、寂しくて。やがてその世界観は、YouTubeでの再生回数が2200万回を超えて今もなお訪れるひとが絶えないMV「アイネクライネ」へとつながっていく。
「聴いてくれる人ときちんと向き合う」勇気とともに、一歩前へ
実は、彼がライブ活動を行い始めるのは2014年になってから。この年、彼は、さまざまなプライズを獲得し、多くの注目を集めていた。もっとも大きなきっかけになったのは、2ndアルバムに収録された「アイネクライネ」だ。初タイアップとしてCMに起用された時、彼は「聴いてくれる人ときちんと向き合う」ことを決意し、ワンマン公演に挑戦した。その頃、「人と一緒にモノを作るのが苦手」だと、告げている。ひとりでこなすことに慣れきっていた米津が、一歩、違う世界へと踏み出した瞬間だった。殻を破り始めてからの米津は、本当の天才としての輝きを、一気に増していった。2015年には3rdアルバム「Bremen」をリリース、オリコンチャート1位など、高い評価を受けた。このアルバムに収録されている「メトロノーム」も、彼自身のイラストによるMVが公開されている。切ないけれど、心温まる作品だ。
同じく2015年には、4枚目のシングル「アンビリーバーズ」が、やはりCMタイアップに起用された。スタイリッシュで軽快、元気な楽曲だ。2016年からは、全国10都市でのワンマンツアーもこなしている。ここで最後にもう一度、米津ワールドの別次元に誘ってくれたコメントを、紹介したいと思う。「よかったね。こんな音楽を生み出してくれる人になって。これが音楽的進化というのか人間としての成長というのかわからないけど、箱庭の中に住んでいたような孤独な天才がその才能を現実の世に活かせる術を見出した、その過程がこのアルバム、って思う。だからこれからがもっと楽しみ」。開かれた窓から、米津は大きく羽ばたき始めた。
2016年後半には、全国ツアーも予定されいる。
米津玄師 2016 TOUR / はうる
11月23日(水祝) 豊洲PIT
INFO:キョードー東京 0570-550-79911月28日(月) Zepp Nagoya
INFO:サンデーフォークプロモーション 052-320-910011月29日(火) Zepp Namba
INFO:YUMEBANCHI(大阪) 06-6341-352512月2日(金) 仙台PIT
INFO:ジー・アイ・ピー 022-222-999912月 8日(木) Zepp Tokyo
INFO:キョードー東京 0570-550-799OPEN 18:00 / START 19:00(全会場)
ファンの心を忘れない限り、米津玄師は「これからがもっと楽しみ」なアーティストであり続けてくれるであろう。
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