デビューからまもなく20年。シーンを離れてより音楽性を洗練させた矢井田瞳の軌跡
矢井田瞳。
音楽というカルチャーが好きな人であれば、ほとんどの人が知っている名前だとおもいます。彼女は2000年のメジャーデビュー後、あっという間にチャートのてっぺんまで登り詰めました。しかしそれももう20年前。名前だけは知っていても、現在どのような活動をしているのかまでくわしく知っている人は多くないでしょう。
チャートシーンを走り続けた00年代前半、インディーズへと活動の舞台を変え、居場所を確立した00年代後半、再度メジャーシーンへと戻った10年代。存在感を増し続けた矢井田瞳の活動の軌跡を追います。
矢井田瞳のバイオグラフィー
1978-2005
矢井田瞳は1978年7月28日に大阪で生まれました。父親の音楽好きが影響して幼い頃から歌うことが好きだった彼女ですが、学生時代はスポーツに明け暮れていたそう。本格的に音楽に没頭していくきっかけとなったのは、19歳のときのあるできごとでした。
それはギターを弾いている友達を見たときのこと。「私にもできないだろうか」と考え、彼女はギターを購入します。それ以来、毎日のようにギターを触り、いつしかオリジナルで曲も作るようになりました。
やがて自作曲のレパートリーが増えてくると、「自分の曲をプロが聴いたらどう思うのだろう」という疑問を持つようになります。その疑問を確かめるために彼女はオーディションにデモテープを送ることを決意。そのデモテープが関係者の目に留まり、デビューへとつながっていきました。
メジャーデビューしたのは2000年のこと。「ダーリンダーリン」のフレーズでおなじみの2ndシングル『My Sweet Darlin’』もこの年に発売されました。ご存知のとおり、このシングルはスマッシュヒットを記録。これをきっかけに彼女はチャートシーンを駆け上がりはじめます。
さらに同年には、1stアルバム『daiya-monde』をリリース。このアルバムがミリオンセールスの大ヒットとなり、抜群の知名度を得るようになりました。
2005-2010
2005年以降はインディーズレーベル「青空レコード」に活動のベースを移します。継続的なリリースが中心だったメジャーレーベルでの活動と比較すると、ここからは積極的なライブ活動が中心に。それにともなって、有名ミュージシャンとの共演も増えていきました。そこには、小田和正、佐野元春、小曽根真、塩谷哲、弦一徹など、錚々たるメンバーが顔を連ねます。メジャーシーンを離れて、より密度の濃い音楽を発信するようになっていきました。
この時期には、結婚や出産も経験。「人間くさい唄が好き」と話す彼女だからこそ、この時期はその後の活動にも大きく影響を残す期間となったようにおもいます。
2010-2018
2010年からは、ふたたびメジャーレーベルへと活動のベースを移しました。この時期にはインディーズ時代に続けてきた精力的なライブ活動にくわえ、定期的なアルバムリリースも両立。さまざまな経験をしてきた彼女らしい活動が目を引きます。
東日本大震災の復興プロジェクトへの参加、初のミニアルバムリリース、塩谷哲と2人だけでおこなったビルボードライブや、子連れで参加できるライブの開催、さらには矢井田瞳のみによる弾き語り全国ツアーなど、新しいチャレンジも継続。オフィシャルウェブサイトに掲載されるブログ(2016年〜)や、ラジオ沖縄で放送されていた『yaikoの「素」』(2017年10月〜2018年9月)も注目を集めています。
2018年となった現在も引き続き魅力的な活動を続け、2020年にはデビュー20周年を迎えます。
矢井田瞳のディスコグラフィー
矢井田瞳はこれまでに、21枚のシングル(インディーズや共作名義を除く)、10枚のオリジナルフルアルバム、1枚のオリジナルミニアルバム、3枚のベストアルバム、2枚のライブアルバムを発表しています。
矢井田瞳の軌跡を振り返るならすべて聴いておきたいところですが、いまからすべての作品を振り返るのはなかなか大変。そんなとき便利なのがベストアルバムですが、実はベストアルバムのほかにぜひ聴いてほしい1枚があります。
それが2005年に発表されたライブアルバム『Sound drop 〜MTV Unplugged+Acoustic live 2005〜』。このアルバムは、2005年からのインディーズ時代にリリースされた最初のアルバムで、CDとDVDの2枚組となっています。
【CD】from MTV Unplugged
01.キャンドル
02.i really want to understand you
03.How?
04.マーブル色の日
05.fast car
06.ねえ
07.My Sweet Darlin’
08.ビルを見下ろす屋上で
【DVD】 from 矢井田瞳acoustic live 2005~オトノシズク~
・モノクロレター
・Not Still Over
・手と涙
・Life’s like a love song
CDには、2005年4月におこなわれたMTV Unpluggedの模様の一部を音声で収録。こちらのライブの模様は同日付でDVDとしても発売されています。もちろんこのCDだけでも十分に聴いてほしい内容なのですが、ぼくがおすすめしたいのはDVDのほう。
DVDには、2005年6月のアコースティックライブ『矢井田瞳 acoustic live 2005〜オトノシズク〜』の内容が収録されています。こちらは映像化されていないので、このアルバム以外でライブの模様を見ることができません。収録曲数は4曲とすくなめですが、選び抜かれた曲がすばらしい順番で収録されているため、1枚のライブDVDを見るより圧倒的に密度の濃い時間が過ごせます。矢井田瞳の音楽を知るなら絶対に手に入れておきたい1枚です。
CD、DVDともにサポートメンバーはまったくおなじで、ピアノに塩谷哲、バイオリンに弦一徹、パーカッションに田辺晋一を迎えています。演奏も抜群であることが、このクレジットからわかってもらえるでしょうか?
矢井田瞳のおすすめ曲
最後に矢井田瞳の広くは知られていないおすすめの曲を紹介します。
(※ここまでに紹介した曲や、Spotifyにアップされていない曲は外して紹介しています。)
手と涙
2001年発売、2ndアルバム『Candlize』収録。
Life’s Like A Love Song
2001年発売、2ndアルバム『Candlize』収録。
アコースティックアレンジになるとその魅力が2倍にも3倍にもなる、屈指のすばらしい楽曲。
モノクロレター
2005年発売、5thアルバム『Here today-gone tomorrow』収録。
.~period~
2008年発売、7thアルバム『colorhythm』収録。
矢井田瞳が好きと語る「人間くさい唄」を体現する1曲。
SURVIVE! 〜生き残れ〜
2011年発売、8thアルバム『VIVID MOMENTS』収録。
チャートを賑わせていたころの矢井田瞳を彷彿とするクセのあるロックナンバー。
20年近くを経て、改めて存在感を増した矢井田瞳の音楽性
インディーズでの活動、たくさんのライブ、結婚と出産。さまざまなステージを経て、矢井田瞳の音楽性は洗練されてきました。
チャートに出る音楽がすべてだとおもっていたあのころ。長い時間がたち、またそのころとは違った目で、耳で、音楽を感じることもできるはずです。この機会に改めて彼女の音楽に触れてみてはいかがでしょうか?あらたな発見があるかもしれませんよ。
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