wacci × ごめん、音楽とイラストが織りなす相乗効果
8月20日、真夜中の12時にある動画が投下されました。それがロックバンドwacciの楽曲「別の人の彼女になったよ」のアニメーション版MV。この曲のオリジナルMVは昨年の時点で存在しておりましたが、今回はイラストレーターのごめん氏との共作により、完全オリジナルのアニメ作品として新たに誕生しました。原曲のコンセプトを踏襲しつつ、ストーリーとイラストは同氏による完全オリジナルです。この記事では、ごめん氏から頂戴したコメントをもとに、切なすぎるアニメ作品を探ってゆきます。
wacci 『別の人の彼女になったよ』Music Video animation by ごめん Ver.
原曲からして心がぐしゃぐしゃになってしまう内容なのですけれども、ごめん氏の解釈によってさらにこの曲は奥行きを増しているように思いますね。この2組に共通するのは、情景描写の巧みさ。ミクロな視点から普遍的なものへの接続が鮮やかなので、抗いようもなく動揺してしまいます。
別の人の彼女になったよ 今度はあなたみたいに 一緒にフェスで大はしゃぎとかはしないタイプだけど 余裕があって大人で 本当に優しくしてくれるの – wacci 「別の人の彼女になったよ」
吐きそうになる対比ですね…。身に覚えがありすぎて胃に穴が開きそうです。「個人的なことほど誰かの心に響くもの」とは、文学における定石でありますが、モチーフに何を選ぶのかに作者のセンスは宿りますね。そしてそのテクニックについては、ごめん氏も抜群です。こちら、同氏が昨年の夏に発表したイラストレーション。
しずかな夜に自転車の音と炭酸の泡、特別でもないことが特別だったことに気づくのはもっとずっとあとの話 pic.twitter.com/QUzyJ9qeNj
— ごめん(本が出ます) (@gomendayo) July 8, 2018
添えられた文章も大変良い…。こちらも「炭酸飲料+自転車の2人乗り+夏の夜」という、日常のワンシーンを切り取ったものです。そこにごめん氏は音楽からアイデアを引っ張ってくることもあるのですね。これまでにbacknumber、RADWIMPS、My Hair is Badなどをモチーフにイラストを作成。実は「別の人の彼女になったよ」のファンアートも過去に描いてらっしゃるのです。今回のwacciとの共作にあたり、彼らに共感する部分について、このようにコメントしています。
「wacci の曲はとても優しくてあたたかいのに、水色や青などの寒色が似合う不思議さがあると思います。それは多分、悲しいときに同じ目線で寄り添ってくれて、細かな視点から誰かの温度を感じることができるからだと思います。それがあたたかくもあり、切なくもなる wacci の楽曲の魅力であると感じています。私も作品を作る際、細かい部分で「その人らしさ」やその時の温度感を表現することが多いので、そういった点でも共感できます」
ここで本作の2コマをご紹介します。まさしくミクロの視点と、対比の話が結実しているように感じますね。
原曲になかったパンプスとスニーカーを持ち出して、対比させるわけです。原曲で歌われているフェスと映画は男性側のモチーフでしたけれども、こちらでは絵として靴を提示することで物語に含みを持たせています。ごめん氏も特につぐみの葛藤にはこだわったようで、こうも語っています。
「主人公であるつぐみの、過去を忘れていくことへのためらいや葛藤は特にこだわりました。大人になるということは良くも悪くも変わっていくということで、忘れていくということだと思います。つぐみは多分、過去を過去として切り捨てられるほど大人にはなりきれていなくて、そういう人は実際にも多いように感じます。無理してヒールがあるパンプスを履いてみても、まだ足が慣れなくて靴擦れしてしまうような。そういう不器用さが伝わればいいなと思い、服装の違いなどにも気を付けて描きました」
つぐみは祥ちゃん(元カレ)に負けないほど不器用なのであった…。原曲も女性視点のお話ですが、ごめん氏がもたらしたストーリーによって更に女性側の輪郭がはっきりしたように思います。そしてより明確に「決別」があるような印象がありますね。
最後に、ごめん氏の本作に関する総括コメントを紹介して記事を終えましょう。
「このお話は、数ある解釈のひとつとして描きました。この楽曲を好きな皆さんのひとりひとりの中に違った物語があると思うので、こういう視点もあるんだな、という気持ちで観ていただけたらと思います。その中にもし、少しでも誰かの心に寄り添うなにかがあれば、私はとても幸せです。『別の人の彼女になったよ』という曲が、さらに少しでも多くの人に届き、誰かの心を包んでくれることを祈っています」
■ wacci 公式サイト
https://wacci.jp/
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