UNISON SQUARE GARDEN(以下、ユニゾン)が6/7、Zepp Tokyoにて自主企画ツアー『fun time HOLIDAY 6』のファイナル公演を行った。本ツアーは、ユニゾンが不定期で開催している自主企画のツアーで、4年ぶり6回目の開催となる。4/21にthe pillowsをゲストとして迎えたZepp Sapporoを皮切りに、全国12都市を毎回異なるゲストを迎えてまわってきた。本記事ではそのファイナル公演の様子をレポートします。
Photography_Photo by Viola Kam [V’z Twinkle]
Text_Sotaro Yamada
Edit_司馬ゆいか
ゲストはクリープハイプ
この日のゲストはクリープハイプ。
演奏の前に、まずは尾崎世界観(Vo. & Gt.)から一言。
「最初にこういうこと言うのも何だけど、対バンツアーというのが苦手です。一緒にシーンを作っていこうという気持ちとか全くないし。だから時間がかかりました。(対バンをするのが)10年ぶりですよ……。でも本気でやってたらまた一緒にやれると思ってたんで、すごく嬉しいです。本当にユニゾンが好きで、ユニゾンを信じてるから、ユニゾンが信じたお客さんを信じます!」
クリープハイプ
そう宣言し、『左耳』からライブはスタート。ユニゾン主催のライブということで、ユニゾンのファンが大多数だったはずだが、多くのオーディエンスが手をあげて体を揺らしていた。ユニゾンとクリープハイプ、この両バンドにはもちろん音楽性に違いがあるが、通底するものはたくさんあることを再認識させられた。
クリープハイプ『左耳』
『ラブホテル』では大サビの前に軽いMCを挟み、尾崎が個人的に親しいというユニゾンの田淵智也(Ba.)をイジってオーディエンスから笑いを取る場面も。
その後、『イト』、『鬼』、『社会の窓』などの人気曲を前のめりの姿勢で演奏。このライブに対するクリープハイプのメンバー全員の気持ちの強さ、気迫のようなものを感じさせた。
『HE IS MINE』では、ユニゾンのファンとクリープハイプのファンで一斉に「SEXしよう」と大合唱。ある意味でとてもピースフルな場面だった。
最後に『傷つける』を演奏し、感動的な雰囲気でユニゾンにバトンをタッチした。
クリープハイプ『HE IS MINE』 2分35秒のあたりでオーディエンスによる「SEXしよう」が聞ける。
Ba. 長谷川カオナシ
Vo/Gt. 尾崎世界観
Dr. 小泉 拓
Gt. 小川 幸慈
UNISON SQUARE GARDEN登場!
少しの間を置いて、オープニングとしてイズミカワソラの『絵の具』SEが流れると鈴木貴雄(Dr.)、田淵智也(Ba.)、斎藤宏介(Vo. & Gt.)の三人が現れ会場からは歓声が。1曲目『フライデイノベルス』でライブが勢い良くスタートすると、オーディエンスの一体感は凄まじく、後方だけでなく二階席までのほとんどの人が手をあげて激しく身体を揺らした。
2曲目の『Silent Libre Mirage』になると、田淵が躍動。ユニゾンについて何かが語られるとき、田淵の技術の高さについて語られることが多いが、さもありなん、生で見るとやはり田淵の技術は圧倒的で、両手の指の速さを肉眼で捉えるのが困難なほどだ。
3曲目『桜のあと(all quartets lead to the?)』が始まると田淵はさらに自由にステージをかけめぐる。
激しくベースを弾きながら走り、飛び上がり、拳を突き上げ、足を高くあげる。その独特なパフォーマンスは一度見たら決して忘れることができない。
UNISON SQUARE GARDEN『桜のあと(all quartets lead to the?)』
『プロトラクト・カウントダウン』や『instant EGOIST』が息つく間もなく繰り出されると、『オリオンをなぞる』でオーディエンスの盛り上がりは前半のピークを迎えた。
田淵のパフォーマンスに注目してほしい。
MCで斎藤が「いろいろ喋ろうと思ったけど、クリープハイプのすごいライブを見てたら、良い音楽で返すほうが大事だなと思ったので、このままどんどんやります」と言うと、『デイライ協奏楽団』を演奏。斎藤が何種類ものエフェクターを使い分けて様々な音を鳴らすなど、3人それぞれの激しいソロパートを盛り込むアレンジでオーディエンスを盛り上げた。
その後、『徹頭徹尾夜な夜なドライブ』から『天国と地獄』という流れで会場はお祭り騒ぎ状態に。オーディエンスによる熱狂の渦が会場全体を振動させる。音に合わせて細かく変化する照明の効果もあり、場内は高揚感のあるトランス空間と化していた。
『徹頭徹尾夜な夜なドライブ』
『天国と地獄』
田淵智也(Ba. & Cho.)
アンコールでは、斎藤が「いっぱい歌ったんで喋りましょうか」と、クリープハイプとの繋がりを説明。10年前、正月気分も抜けない1/7に鈴木が主催した『箱庭フェスティバル』(斎藤によれば、動員81人、鈴木がロビーで餅を突き、餅食べ放題、きなこ付け放題の「伝説」の自主企画)のゲストがクリープハイプだったという。それからお互い動向をチェックしていたが、自分たちのライブには「今じゃないと」というタイミングで呼びたかったとのこと。「仲良しこよしはイヤ」という斎藤は、「ついに声をかけさせてもらって、10年ぶりに実現できて、めちゃくちゃ嬉しい。クリープハイプみたいなバンドは他にいない」と、久々の共演を喜んだ。
斎藤宏介(Vo. & Gt.)
そして『シュプレヒコール〜世界が終わる前に〜』と『アトラクションがはじまる(they call it “NO.6”)』を披露し、大盛り上がりのうちに『fun time HOLIDAY 6』ファイナル公演は幕を下ろした。
去り際に斎藤がニューシングルの発表と10月からの全国ワンマンツアー開催をさらっと発表すると、会場からは悲鳴に近い歓喜の声があがる。これには斎藤も驚いたようで、「そんな喜ばなくても普通にライブやってるから!」と笑い、「そんな喜んでくれるんだ! じゃそん時マジでめっちゃ頑張るから! また会いましょう」と爽やかに締めた。
鈴木貴雄(Dr. & Cho.)
ユニゾンが復活させる音楽の力
UNISON SQUARE GARDENというバンドは、今の日本の音楽シーンではやや特殊なバンドである。
ここ数年で、フェスという文化が日本に定着した。それ自体は良いことなのだが、一方では、「フェスで勝てないと生き残れない」というような暗黙の了解も浸透し、あからさまに「フェス仕様」の曲を作るミュージシャンや、それに対するカウンターとして「フェス嫌い」を公言するミュージシャンが同時多発的に発生した。
しかし、ユニゾンはそうした流れにはあまり影響されることなく、自分たちのスタイルを自然に貫き、しかも結果として「フェスで勝てる」バンドになった。
では、何がユニゾンをそうさせているのだろうか?
斎藤、田淵、鈴木、それぞれがいろいろなところで発言しているが、彼らはライブにおいて、オーディエンスが自由に楽しむことを望んでいる。
盛り上がるのはもちろん良し、棒立ちで聴いてもいいし、座って聴いてもいい。とにかく自由に見て聴いてくれればいいと、彼らは繰り返し述べている。その証拠に、彼らはオーディエンスに手拍子を求めたり、シンガロングさせたり、何かをあおるようなことは一切やらない。MCも少ない。ただシンプルに、自分たちの信じる音楽をやるだけだ。
それにもかかわらず、ユニゾンのライブが「絆も繋がりも一体感も」すべて感じさせる大盛り上がりのライブになるということは、とても意義深いことなのではないか。
UNISON SQUARE GARDENのライブを見ながら、「音楽の力」という、半ば意味を失いつつある言葉の重みについて改めて思いを寄せないわけにはいかなかった。
ある著名な作家が、「『音楽の力』という言葉が叫ばれることじたい、音楽に力がなくなってきていることの証拠だと思います」という旨の文章をかつて書いていたが、あれから時は流れ、ふたたび「音楽の力」が意味を持つ時代になってきたのではないか。それはUNISON SQUARE GARDENのようなバンドが台頭してきたことと深い関係があるのではないか。そんなことを考えたのだった。
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