ヘッドライナーも見えたか?スター性と造詣の深さを両立させたKygo
Avicii(アヴィーチー)がライブ活動を引退してから、そのポジションにすっぽり納まった印象のあるKygo(カイゴ)。実際ルーツにある音楽は共通しており、ふたりともソウルや80’sディスコへの深い愛情を持っていますが、Kygoのほうがより直接的かもしれません。
今回のDJセットではChicの『Good Times』をマッシュアップし、自身による『Sexual Healing』のリミックスをプレイしておりました。リスペクトに終始せず、しっかり自分の色を打ち出しているところにプロデューサーとしての矜持を感じます。古きを温めつつ、代名詞であるトロピカル・ハウス(ややスロウなテンポとメロウな曲調が特徴)として提示できる強い作家性。
けれども、最近ではトロピカル・ハウスの枠を超えたアプローチもあります。新曲の『Stargazing』がそうですね。
Kygo ft. Justin Jesso – 『Stargazin』
トロピカルという枕詞が外れ、直球のハウスを鳴らしています。Kygoの音楽性は「広い」というより「深い」と言うべきかもしれません。ジャンルを横断するような方法論ではなく、ハウス周辺の歴史を追求しているような感じ。そこにはもちろんAviciiも含まれていて、Kygoがかける『Without You(Aviciiの最新曲)』には特別なドラマ性を感じてしまいました。
ULTRA JAPANの3日間を通じ、Aviciiの曲は何度もプレイされましたが、最も正当性を感じたのはKygoのDJでした。日本でもAviciiのライブ活動引退の報は広く話題を集め、多くの人に惜しまれておりましたが、今の僕らにはKygoがいます。
オーディエンス・カラー ~Kygo編~
3日目では恐らく最も人を集めていたであろうKygo。先に述べたような音楽性の深さも相まって、年季の入ったハウスファンも多く見受けられました。様々な文化圏、年齢層によって構成されたオーディエンス。そのためイメージを集約させることが難しかったのですが、「落ち着いた雰囲気」をキーワードにするとこんな感じ。
狂乱のLIVE STAGE。Pendulm再始動
凄まじかった・・・。まさかULTRA JAPANの会場でモッシュが起きるとは思いませんでした。
2011年に事実上解散し、その間にKnife Party(ナイフパーティー)というDJユニットでの活動を挟み、実に5年ぶり。2016年の本家ULTRAで完全復活を果たしたPendulum(ペンデュラム)。彼らが出演した当時の様子はライブストリーミングで生配信されておりましたが、みなさんはご覧になりましたか?カッコ良すぎて笑いますよ、コレ。
(Pendulumのライブセットは37:10~)
ロブ・スワイヤー(Vo.)の歌声は相変わらずクリアだし、身体性が極めて高いバンドサウンドも少しも色あせてない。ベース担当のギャレス・マクグリレンの騒々しさにも、なんだかホッとしました。
ULTRA JAPANでも圧巻のステージを見せてくれたわけですが、方々で絶賛の声が上がっておりましたね。『Witchcraft』や『The Island』でオーディエンスのアドレナリンをあらかた放出させておいて、『Begin Again』と『Watercolour』で締めくくる。『Begin Again』はKnife Party名義のトラックですけれども、まるでPendulum再結成のために歌われているかのような物語性がありました。
オーディエンス・カラー ~Pendulum編~
日本の音楽シーンでは、「ファンの世代交代」とでも言うべき現象が存在します。国内ではバンプ・オブ・チキンが良い例だし、海外アーティストではoasis周辺でそれが起きています。世代に関わらず、ある一定の年齢に達すると吸い寄せられるようにそのアーティストの音楽を求める。バンプやoasisとは規模こそ違いますが、Pendulumにもそれが言えるかもしれません。予想よりもオーディエンスの層が若かった。
ネバーピークなUnderworld
「ダンス・ミュージックの中で」とか「この日出演したアーティストでは」とか、局地的な前置きなしで僕にとってUnderworldは最も愛するバンドの1組です。もう好きすぎて冷静に見られない。毎回、ライブ終わりが寂しくてステージの周りを無意味にウロウロしてしまいます。
すっかりベテランの域に入った彼らですが、その音像は今だフレッシュ。昨年リリースした彼らの最新アルバム『Barbara Barbara, we face a shining future』以降、何度目かの全盛期を迎えているように思います。ライブでは『Two Month Off』や『Born Slippy』などのクラシックも健在ですね。
Underworld – 『Born Slippy』
極めつけは『Downpipe』。ULTRA JAPANの前に開催された単独公演(大阪)では披露されることのなかったナンバーです。完全にULTRA仕様でした。この曲はアーミン・ヴァン・ブーレン(オランダの世界的なDJ)が主宰を務める『Armada Music(アルマダ・ミュージック)』からリリースされておりまして、普段彼らが鳴らすプログレッシブ・ハウスとは若干毛色が違うわけです。
彼らのライブにはイギリス公演含め何度も行っておりますが、この曲は今回初めて生で聴きました。それだけでも大満足ですが、特筆すべきはその近さ。こんなに近くでふたりを見られたのも初めてでした。
手を伸ばせば届くのではと思えるほどの距離で、『Rez』や『Cowgirl』が披露されるのです。往年のテクノファンも、僕のような若い層のファンも一緒くたになったLIVE STAGE。この規模感ですからお互いの熱を共有しやすく、アリーナクラスのライブよりもアットホームな質感でした。控えめに言って、最高。やはり終演後は寂しくて、ステージ周辺をウロウロしました。
オーディエンス・カラー ~Underworld編~
音楽に接する時間が長そうな人が多かったです。Underworld直撃世代は恐らく30代・40代でしょうけれども、僕のように音楽をディグるうちに彼らに辿り着いたファンの姿も見受けられました。やはりこの規模感がそうさせるのか、オーディエンスの雰囲気も終始良かったです。
記事の冒頭にも書きましたが、改めてULTRA JAPANは新しいフェーズに入ったように思います。やはりLIVE STAGEの登場が大きいのですが、初回の2014年から『ULTRA WORLDWIDE ARENA(アングラなDJが多数出演)』のようなステージはありましたから、当時からまいていた種が順調に育っていたという見方もできそうです。
メインストリームなダンス・ミュージックも年々多様化と深化を続けていますし、まだまだこのシーンは見どころが山ほどあります。次回はどのような姿で僕らを迎えてくれるでしょうか。
text_Yuki Kawasaki
illustration_ery
イラストレーター / デザイナー。1994年生まれ、東京在住。イラストやコラージュ、グラフィックデザインを中心に、ZINE、グッズ、展示と活動の幅を広げ中。主にinstagramでイラストなどを公開。好きなものはローラースケート。
Instagram
https://www.instagram.com/erikatoike/
■ULTRA JAPAN 2017
日程: 9月16日(土) / 17日(日) / 18日(月・祝)
開催地: お台場 TOKYO ODAIBA ULTRA PARK
<公式サイト>
http://ultrajapan.jp/
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