ロックバンド・the peggies(ザ・ペギーズ)の北澤ゆうほがゲストを迎え、東京の街を散歩しながら対談する連載『東京シティ散歩』。今回はそのスピンオフ企画として、BLUE ENCOUNTから田邊駿一との室内での対談をお届けする。
なぜ今回は外に出なかったのか。その理由は、双方のスケジュール的なこともあるが、何より音楽的に相思相愛でありながら、まだ一度も顔を合わせてじっくり話をしたことがなかったから。そこからどんな展開になるのか。互いに挨拶を交わした時はピリッとした緊張感が漂っていたが、いざ席に座ると二人の秘めたる想いが走り出す。大好きな寿司の話から熱い音楽談義まで、実に有意義な時間となった。
Photography_Keiichi Ito
Interview & Text_Taishi Iwami
「寿司で機嫌を取ってもらってる、寿司で釣れる女です(笑)」
――お二人は会話らしい会話をしたことがないと聞きましたが。
田邊 : こうやってちゃんと喋るのは初めてだよね?
北澤 : そうですね、ごあいさつ程度で。ちょっと前に会社(ソニー・ミュージックエンタテインメント)の近くにあるコンビニで見かけたことあって、話しかけようと思ったんですけど、眼鏡をされてなかったので確証が持てなかったんで止めちゃいました。
田邊 : その話、人伝いに聞いたよ。眼鏡をはずした田邊を見てる数少ない人だね(笑)
北澤 : なので今日はよろしくお願いします。
田邊 : よろしくお願いします。ゆうほちゃんって呼んでもいいのかな?
北澤 : はい、もちろん。
田邊 : 髪の色がよく変わるよね。今回もいい感じ。
北澤 : これまではピンクの範囲でいろいろ変えて遊んでたんですけど、今回はブルーにしました。
田邊 : もしかして、BLUE ENCOUNTに合わせて?ありがとうございます?
北澤 : しっかり伏線回収できましたね(笑)
田邊 : the peggiesは世代的にはどのあたり?
北澤 : 今24歳で、中学の時に結成したからも10年以上バンドやってます。メジャー・デビューは22歳の時です。
田邊 : よく聞かれると思うんだけど、同世代で仲のいいミュージシャンとか、いる?
北澤 : あんまりいないんですけど、BiSHのチッチ(セントチヒロ・チッチ)とはすごく仲いいです。バンドとなると、そうですね、他のメンバーの周りも合わせると、1つ下ですけどSIX LOUNGEとか、SHISHAMOとyonigeは一つ上ですね。あとはもっと上の先輩が多いです。
田邊 : 俺もそう、先輩と後輩ばっか。同世代のバンドとはフェスとかの会場で「今度飲みに行こうぜ」って言うんだけど行けてない、みたいな感じ。あ、そうだ!お寿司好きなんだよね?俺もめっちゃ好きで。
北澤 : はい、大好きです
田邊 : どんな寿司が好き?カウンターじゃなきゃ嫌とか?
北澤 : ご飯としてしっかり食べるなら、できれば回らないでいただきたいです(笑)。でも、みんながカフェに行ったりおやつを食べたりする感覚で、回転寿司にもよく行きます。お茶と2皿くらい。
田邊 : 酢飯でブレイクするのか。すごいな。食べるうえでのこだわりとか、ある?
北澤 : 回転寿司でたまに思うんですけど、なんでもかんでもシャリを大きくすればいいってわけじゃない。だったら海鮮丼食べますって。
田邊 : わかる。最近デリバリーの寿司も増えてちょくちょく使うんだけど、同じこと思うもん。
北澤 : だから「シャリ少で」って言うようにしてます。
田邊 : そんなの言えるんだ。今度試してみよう。ツアーとかでいろんな地方の寿司を食べたりはする?
北澤 : 寿司という一点だけで言えば、ツアーよりも作品を出したときに一人でキャンペーンを回るときが最高ですね。私が寿司好きなのをスタッフさんが知ってくれてるんで、寿司だけをひたすら食べられるんです。1日で石川から富山、新潟を回ったことがあるんですけど、各県で朝昼晩食べました。寿司で機嫌を取ってもらってる、寿司で釣れる女です(笑)
田邊 : そんな、簡単な女みたいに(笑)。北陸はいいよね。俺も金沢でライヴするときは、朝7時くらいに起きて朝市に行って、そこで回転寿司を20皿くらいっちゃって、リハで歌えないとかあるくらい。ネタは何が好き?
北澤 : 私、えんがわが好きです。
田邊 : いいね。それはあぶるの?
北澤 : どんなネタでもあぶらないほうが好きです。
田邊 : 今の若い女の子なのに?
――え?今の若い女性はあぶるんですか?
田邊 : この年齢の女の子とご飯を食べに行くことって、あまりないんでイメージですけど。今はあぶりのニーズがすごく高まっていて、店によってはせんぶあぶります、くらいの勢いで。
北澤 : ですよね。あぶりばっかり食べる友達もいますし。でも私はあまり好きじゃないんです。えんがわだとトロトロになりすぎて食感がなくなるし、そもそも寿司に香ばしさは求めてないんで、あぶるのは穴子くらいでいいですね。
――寿司の話で盛り上がっているところ申し訳ないんですけど、もう規定時間の半分まできちゃいまして……。
田邊 : もうそんなに?どうりで喉が渇くわけだ(笑)
北澤 : 私の企画なのに話を回していただいて、ありがとうございます。
田邊 : 寿司だけにね……あれ?
「the peggiesは、いいメロディを作ることとしっかり向き合ってる」
――おあとがよろしいようで、そろそろ音楽の話を(笑)。田邊さんはthe peggiesのことがすごく好きだとか。
北澤 : テレビでも言っていただいて。
田邊 : 今年出したアルバム『Hell like Heaven』がすごくいいなって。ストリーミングで「そうだ、僕らは」をたまたま聴いて、頭の"何処で間違ってしまったんだろう”の譜割りから、すげえなって。いいメロディを作ることとしっかり向き合ってると思った。ぜんぶメロディがいいんだよね。だからアルバムとして最後まで聞きたくなる。テレビでも、俺みたいなのがあんまりほかのバンドについて、ああだこうだ言っちゃだめだと思ってるんだけど、思いのほか熱弁しちゃった。
北澤 : メロディにいちばん力を入れてるって言ったら変ですけど、めちゃくちゃ苦戦するんです。自然と出てきたメロディをそのまま曲にする方もいると思うんですけど、私の場合はそれだといいものができないような気がして。浮かんだメロディをまず下書きしてから清書するみたいに、時間をかけるから、そこを見抜いてくださって褒めていただけるのは、ほんとに嬉しいです。
田邊 : 今年のリリースだと、シングル「スタンドバイミー」のカップリングに入ってた「DIVE TO LOVE」も好きなんだよね。
北澤 : 渋谷系な感じの。私たちって、やってることはわりと王道だから、ふつうにやったらあまり印象に残らない。そこでどうやったら1回聴いただけで覚えてもらえるかはいつも意識してます。
――北澤さんがBLUE ENCOUNTの音楽に出会ったのはいつ頃ですか?
田邊 : そんなに興味ないでしょ?言っちゃえ言っちゃえ(笑)
北澤 : そんなことないです!最初に知ったのは『≒』(ニアリーイコール) が出た時です。渋谷のタワーレコードの壁紙がぜんぶBLUE ENCOUNTになってて、新宿に行ったら大きなヴィジョンに流れてるし、すごいなって。
田邊 : メジャーでのファーストアルバムの時だね。
北澤 : 私は、ポジティヴであること隠さないというか、希望を惜しみなく表現することを心掛けてるんです。音源を聴いてくれた人たちや、ライヴに集まってくれた人たちと最終的には一緒に前を向きたくて。それは、私自身がそういう音楽に救われてきたからで、BLUE ENCOUNTは私のなかでまさにそういうバンド。"熱い”みたいに言われることが多いと思うんですけど、私はすごく人間らしいなって、思うんです。
田邊 : 嬉しいなあ。
北澤 : ほんとに、「だいじょうぶ」とか聴くと、いまだに何回かに1回は涙目になるんです。優しいんだけど優しいだけじゃない、不器用に背中を押してくれる感じと激しいサウンドの狭間で、精神状態によっては思いっきり泣いちゃうこともありますし。
田邊 : おお!もうこれは寿司行くしかないね(笑)
北澤 : 行きたいです!あとは音の壁がぎっしり埋まってるサウンドが好きなんで、そういう意味でもすごく刺激的です。
田邊 : ありがとう。埋めまくってるからね。
北澤 : 私もなるべく間なく埋めたいんで。
田邊 : 最初はELLEGARDENが好きで、上京してNICO Touches the Wallsに出会って9mm Parabellum Bulletにやられて、そこからはもうUKプロジェクトか残響レコードに入りたいって思ってた。ギター・ロックの洗礼を受けて目覚めた頃の感覚がずっと残ってるんだと思う。
――広く音楽シーンを見渡せば、今は引き算の流れだと思うんですけど、どうでしょう。
北澤 : 流れとしてはおっしゃるとおりだと思います。私自身もそういう音楽は聴きますし、雰囲気的な要素として採り入れることもあります。でも、自分が想いを伝えるためのエネルギーとして厚い音の壁があるんです。やっぱりいちばん気持ちよく歌えるんですよね。
田邊 : うん、要は気持ちいいかどうかだよね。それが俺らにとっても間を埋めることというか、でももしかしたら間が怖いのかもしれない。メンバーから「そこまで音数入れなくていいよ」って言われることも少なくないし、自分でも弾けないのにわざわざ必死に頑張って弾くとか。3ピースだとなお、そこ大変でしょ?
北澤 : 同期も使いますけどギターのバッキングを流すっていうのはちょっと違うし、その辺でいろいろ考えるのは好きですね。
田邊 : そういう、同期を使うこともいとわないっていうスタンスで、自分たちが気持ちいいところを探していったらいいんじゃないかと思う。この前、ジェイコブ・コリアーが来日してたから、メンバー4人で観に行ったの。もう最高で、演奏なんてそこにいる人たちだけのシンプルな音が鳴ってるだけ。その音にリズム感のある歌が乗ってみんなが魅了されてた。で、俺も「やっぱり世界はそうだし、自分の表現としてもやれなきゃいけねえな」って、家に帰って曲を作ったら、結局めっちゃ音数が多くなって。
北澤 : ありますよね。
田邊 : カッコいいと思う音楽はめっちゃいろいろあるんだけど、やってて気持ちいい音楽となると、それはさっき話したように、ギター・ロックに始まる通ってきた道だから。そういう部分で、なんかゆうほちゃんとはマインドが似てるような気がしていて。
北澤 : そんな、私なんてまだまだです。
田邊 : これはいつか対バンしたいね。BLUE ENCOUNTのお客さんにもthe peggiesを好きなは人いるし。
北澤 : ライヴ会場でもかけていただいてるって聞きました。ありがとうございます。実現できるように頑張っていきます。
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