ネオ・ソウルの新星、Gabriel Garzón-Montanoの甘美な音に酔いしれる。
ニューヨークはブルックリンのマルチ・プレイヤー、ガブリエル・ガルソン・モンターノ。彼を一躍有名にしたのは、カナディアン・ラッパーのドレイクによるミックステープ『If You’re Reading This It’s Too Late(2015年リリース)』である。本作に収録されている『Jungle』という曲で、彼の『6 8』がサンプリングされた。
Gabriel Garzón-Montano – 『6 8』
世界規模で人気を博すラッパーに曲を使用されたことにより、突如としてスターダムへのし上がったガルソン・モンターノ。自身が有名になったことを喜びつつ、その心境は複雑であった。多くのインタビューで、「僕は、自分が”『Jungle』にサンプリングされたヤツ”として世間に認識されるのがイヤなんだ」と語っている。そして今年の1月、そんなレッテルを一蹴するかのように新作フル・アルバム『Jardin』を発表した。しかも今作は、今をときめく人気レーベル『Stones Throw』からのリリースである。前作の『Bishouné: Alma del Huila(『6 8』はこちらに収録)』も決して悪い出来ではなかったが、今度の一枚は全てのステータスが上がっている。
Gabriel Garzón-Montano – 『Crawl』
ディアンジェロとファレルの間を射抜くようなサウンドである。揺れるビートに乗せ、多重録音されたヴォーカルがメロディを引っ張る。そのうえジャミロクワイのように捉えどころがない。間違いなく、これから世界へ羽ばたくタレントの一人だ。
次世代ヒップホップ・シーンの最重要人物、Little Simzがついに降臨。
今回のTAICOCLUBにおける一番の目玉は、恐らくLittle Simz(リトル・シムズ)だろう。僕個人としても大変楽しみにしている。UK出身であるフィメール・ラッパーの彼女は、今や破竹の勢いだ。ファースト・アルバムの『A Curious Tale of Trials + Persons』は多くのメディアで軒並み高評価を獲得し、アメリカのピッチフォークは同アルバムに収録されている『Gratitude』を「Best New Track」に選定している。
Little Simz – 『Gratitude ft. The Hics』
のっけからフランツ・ファノンの言葉を引用し、「大事なのは世界を知ることではなく、変えることだ」と言い放つ。そしてその言葉通り、政治的で、ときに内省的なリリックを紡いでゆく。ケンドリック・ラマーも彼女に対して賛辞を送っているが、内省と政治性が繋がってゆく仕方に共感を覚えたのかもしれない。
Little Simz – 『Wings (Live)』
そして何より、今回のTAICOCLUBでは我らがKOHHと同じ地を踏むという事実。これ、ちょっと事件ですよ。今日ほど日本のラッパーの存在が海外に知れ渡り、名声を勝ち得た時代はなかった。その急先鋒にいるのがKOHHなわけだが、その彼と、次世代のトップをひた走るリトル・シムズが同じ日に同じ場所に居る。それだけで、後でこの日を振り返ったとき、重要な参照点として語られるような気がするのだ。その意味では、リトル・シムズの登場は期待を超えてスリリングですらある。
『Raw Cuts』シリーズを生んだ天才、Motor City Drum Ensemble。
世の中には、再販された瞬間に即売れするようなレコードが存在する。その一つが、ドイツ人DJのMotor City Drum Ensemble(以下MCDE)が発表した『Raw Cuts』シリーズだ。僕もこの記事を書くにあたり、手当たり次第探しているのだけれども、どこに行っても「SOLD OUT」の文字が目に入る。フィジカルでの入手はほぼ不可能だが、Spotifyにはシリーズをまとめた『Raw Cuts, Vol. 1』がフルで配信されている。
アブストラクトではあるが、彼がこれまで通ってきた道筋がはっきり見えるようだ。テーリ・テムリッツに代表されるダビーなアンビエントをまとい、ムーディーマンばりに黒いハウスを鳴らす。また、ファンクやディスコもルーツに持っており、そちらに寄せることも可能だ。まさに縦横無尽。そんなMCDEのキャラクターがよく出ているのは、2015年のDekmantel Festival(オランダのフェス)におけるギグだろうか。
Motor City Drum Ensemble at Dekmantel Festival 2015
先ほど挙げた音楽が全て集約されている。セレクターとして優れているのは言うまでもないが、彼の特徴はDJとしてのテクニックにも現れているように思う。これだけ大胆にカットインできるDJはなかなかいない。それでいて破綻もない。少々長いミックス音源だけれども、作業用BGMとしても優秀だろう。TAICOCLUBの予習としてぜひ。
■TAICOCLUB’17 公式プレイリスト
■TAICOCLUB’17
日程:2017年 5/27(土) 〜 5/28(日)
場所:長野県 木曽郡木祖村 こだまの森
<公式サイト>
http://taicoclub.com/17/
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