水曜日のカンパネラの勢いがとまらない。
最近では、Chim↑Pomの個展「『また明日も観てくれるかな?』~So see you again tomorrow, too? ~」が行われている東京・歌舞伎町商店街振興組合ビルにてゲリラ的に「アラジン」のミュージックビデオを撮影、来年1月にはシンガポールで日本人初となる「Laneway Festival Singapore 2017」への出演を決めるなど、毎月話題に事欠かくことがない。一体水曜日のカンパネラの何が日本の音楽シーンにおいて新しかったのか、その魅力と革新性を一度まとめておきたい。
ワールドワイドな時代の空気感を捉えたセンスフルなサウンド
まずはサウンドの革新性。作曲と編曲を手がけているのは水曜日のカンパネラメンバーのケンモチヒデフミだ。彼のつくるサウンドは、まだ海外に比べあまり盛り上がっているとはいえない日本のダンスミュージックシーンを変えるひとつの大きなきっかけだ。Spotifyのチャート上位から一気に聴いてみるとわかるが、現在日本のメジャー音楽シーンと海外の音楽シーンの流行る音楽は、どんどんかけ離れていっている。海外ではBPM100~120を主軸にしたトロピカルハウスなどのチルアウトミュージック、メロウなポップミュージックが現在主流で、EDMのようにアゲアゲな音楽、ロックミュージックはほとんどチャートに入らなくなっている。
水曜日のカンパネラのつくる音楽は、海外チャートの途中にはさみこまれていても違和感がないくらいしっかりとワールドワイドな時代の空気を捉えたものに仕上がっている。ケンモチヒデフミが聴く楽曲の幅の広さ、センスの良さがなせる業だろう。ただ、周りを見てみると、水曜日のカンパネラと同じくらい時代を捉えた楽曲をつくっている日本人アーティストはたくさんいる。何がブレイクのきっかけになったのだろうか。
ただ無心に踊りだそう―コムアイの歌詞の魅力
曲とともに水曜日のカンパネラが秀でているのはコムアイの手がけるオリジナリティあふれる歌詞だ。たとえば「ツチノコ」の歌詞はこんな感じ。
派閥抗争
渋谷区原宿
代々木公園
歩行者天国たけのこ族
きのこ族
すぎのこ族
そして つちのこ族クロクビコブラ
アナコンダ
マンシャンハブ
カーペットバイパー
仲間達ジャワヤスリヘビ
メキシコパイソン
サンビーム
コースタルタイパン
お友達蠕動運動
対立抗争
蠕動運動
麗院宝 麗院宝とぐろ巻き
するに尺足らず
ウロボロス
するに尺足らず
ありがちな恋愛や友情などをテーマにした歌詞でも、メッセージソングでもなく、「ツチノコ」というタイトルキーワードから自由にコムアイが連想したような歌詞になっている。まさに”踊りだしたくなるような”、非常に軽やかな歌詞だ。ダンスミュージックは軽やかであることを求める。何も考えずにただひたすら無心に踊ることができる歌詞、コムアイのこのセンスが水曜日のカンパネラの魅力を何倍も高めている。
例えばこれまでロックミュージックの分野では、相対性理論やマキシマム・ザ・ホルモンなど独自の歌詞を発明してきたアーティストは多くいた、だが、ダンスミュージックにこの歌詞を乗せるということを発明した水曜日のカンパネラは斬新だったし、今後フォロワーを生み出し続けていくだろう。
おしゃれさとネタ感の絶妙なバランスとギャップ
サウンドと歌詞が新しく、センスフルなことはわかった。だが、水曜日のカンパネラにはまだまだ武器がある、ミュージックビデオとアートワークだ。
ミュージックビデオはおしゃれさとネタの見事なバランスがとられている。例えば上の「千利休」ミュージックビデオでは、ファッショナブルな服や着物を着て踊るコムアイのシーンのほか、随所にネタが差し込まれ、見事なギャップがつくられている。このギャップもまた水曜日のカンパネラの魅力だ。例えるなら、サカナクションのミュージックビデオと、ゴールデンボンバーのミュージックビデオがあわさったような新感覚。このギャップに惹きこまれたファンも多かっただろうと思う。
そして、アートワークも本当に素晴らしい。これは近々リリースされる新作『SUPERKID』のジャケットだ。
PC MUSICのSOPHIEやMAXOのような絶妙なアートワークだ。本当にかっこいい。ちなみにこの新作には上にあげた「松尾芭蕉」やインスト「アラジン」も収録される。
最後にもうひとつだけ、水曜日のカンパネラの最大の魅力は”変わり続けている”ことだ。変化を恐れず、変幻自在になること。これは今一時代を築き上げようとしている米津玄師の音楽に対する姿勢と通じるものを感じる。彼も毎回アルバムごとに新しいことに挑戦し続けているからだ。常にリスナーを楽しませ、びっくりさせようとする水曜日のカンパネラの音楽とその世界をこれからも楽しみにしていたい。
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