満員の赤坂BLITZで見た一つの時代の幕開け
僕が会場入りしたのは開演の40分前だったので、ワンマンライブの取材としては割と早いほうだと思う。それでも4月9日の赤坂ブリッツには、この段階で相当な人だかりができていた。今のSHE’Sの勢いを象徴しているかのような光景である。彼らのことはルックスの良さを妬まれだした頃(つまりすごく前)から知っているけれど、今になってようやく彼らが目指す場所が分かった気がする。
そしてその答えは無論、ライブにあった。
「端正」と共存する「男臭さ」
Coldplayとかthe HIATUSとか、ピアノの旋律が重要な役割を果たすバンドは多くいるけれど、SHE’Sはそのどれでもないと思う。スマートで叙情的なサウンドに共通点を見出すことはできるが、それに加えて彼らには男臭い一面がある。それに一役買っているのが、ギターの服部だ。例えば『Freedom』や『Running Out』に顕著だが、彼はハード・ロック直系のサウンドを鳴らす。音楽に対する愚直なまでの思いは、ライブでこそ発露するのだ。
SHE’S – 『Freedom』
CDはパッケージものだから、どうしても楽曲をキレイにまとめなければならない。SHE’Sはそういうバランスの取り方に関しても長けているので、この「男臭くて熱い部分」がつい隠れてしまいがちだ。彼らに対して「イケメン」だとか「お洒落」だとか、その手のイメージしかない人にこそ主張しておきたい。
怒涛で、美麗で、エモーショナル。情感に富んだSHE’Sのライブ表現
昨今のバンドマンにとって、やはりライブの占める比重は非常に大きい。規模やジャンルに関係なく、今やライブを重要視していないアーティストは存在しないはずだ。オーディエンス側もそれに伴って、耳が肥えてきている。つまり、ライブがあまり得意でないバンドにとっては致命的な状況だ。
その点、SHE’Sは何の心配もないだろう。この日のライブでも、変幻自在にその世界観を変えていた。明らかにオーディエンスが参画できる余地を計算して作られた『Say No』や『Night Owl』では、盛大なシンガロングが巻き起こる。僕が初めて彼らを観たのは3年ほど前で、そのときは小さなライブハウスだったのけれども、当時から彼らはこの景色を見ていたんじゃないかと思う。でなければ、ここまで板についたパフォーマンスはできないはずだ。オーディエンスを巻き込みながら懸命に”I’ll be there. never retire”と叫ぶ井上(Key.Gt.Vo.)の姿には、ちょっぴりこみ上げてくるものがあった。
SHE’S – 『Night Owl』
『グッド・ウェディング』を初めて聴いたときはSHE’Sの新境地を感じたものだが、ライブでもその感想を新たにした。帰りの電車の中など、感傷的になれる場所で聴いてこそ映える楽曲だと思っていたが、ライブでも大いに輝いていた。軽妙だけれども力強い木村(Dr.)のタッチ、アンニュイだけれども確かに響く井上の歌声。個人的には最新アルバムの『プルーストと花束』の中では一番好きなのだけれど、更にその思いを強くした。ちなみに、この曲は「元カノの結婚式」という重くなりがちなテーマを、軽やかなポップス調で表現したものだ。
フロントマン井上竜馬の決意表明
SHE’Sのフロントマンである井上は、ライブのMCでこんなことを言っていた。「それがたとえSHE’Sじゃなくてもね、お客さんがライブハウスで出会ったバンドを好きになってくれるのは嬉しいですよ。そういう場所を残していくにはどうすれば良いのか、日々考えたり、まぁ時には考えられなくなったりしてます」。
僕はこの言葉に点が線になる印象を受けた。2016年にメジャーデビューするまで、彼らには多くの選択肢があったはずだ。あえてインディーズに残ることも出来たろうし、実際に今は多くのバンドがその方面で活躍している。そんな中、彼らはメジャーの道を選んだ。なおかつ彼らはルックスが良い。ロックバンドが「イケメン」であることは、時にネガティブな意味を持つことがある。彼らはそれを分かった上で、メジャーというフィールドを選んだのだ。その理由として、先の井上の言葉が当たるだろう。つまり、全ては自分たちが育った場所、延いては「音楽」のため。この言葉の後に披露された『Stars』や『プルースト』は、彼らの決意表明にしか聞こえなかった。
SHE’S – 『Stars』
余談だけれども、今のSHE’Sには『生春巻き』の頃のRADWIMPSに近いものを感じる。確実に何かが始まっていて、彼らをずっと追ってきたファンたちがちょっとドキドキしてしまうあの感じ。自分たちの足元を踏みしめるように、そして歌詞の言葉の一つ一つを咀嚼するように『Curtain Call』を歌うSHE’Sの姿に、国民的人気バンドの影が重なって見えた。真面目に、あると思います。
SHE’S – 『Curtain Call』
photography_西槙太一
text_Yuki Kawasaki
SHE’Sワンマンツアー『プルーストの欠片』 セットリスト(Over You未配信につき省略)
■SHE’S『Awakening』
発売日:2017年6月21日
品番:TYCT-60099
価格:税抜 \1,700-
収録楽曲:『Over You』ほか全7曲収録
■SHE’S Hall Tour 2017 with Strings 〜after awakening〜
9月29日(金)@東京・草月ホール
OPEN 18:30 / START 19:00
問:HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999
9月30日(土)@東京・草月ホール
OPEN 15:30 / START 16:00
問:HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999
10月13日(金)@愛知・名古屋市芸術創造センター
OPEN 18:30 / START 19:00
問:SUNDAY FOLK PROMOTION 052-320-9100
10月14日(土)@大阪・立命館いばらきフューチャープラザ グランドホール
OPEN 17:00 / START 18:00
問:サウンドクリエーター 06-6357-4400
料金:全席指定\4,320(税込) 一般発売:7月29日(土)~[e+/ぴあ/ローチケ]
・SHE’Sオフィシャル先行
ぴあ 2017年4月9日(日)21:00~4月17日(月)23:59
受付URL :http://w.pia.jp/t/she-s-of/ PC(スマホ) ・携帯共通
※お申込にはぴあ会員登録(無料)が必要となります、予めご了承ください。
※当選者は、受付期間終了後、厳選なる抽選の上、決定させて頂きます。先着順ではございませんので、期間内に余裕を持ってお申し込みください。
ツアー特設サイト:
http://she-s.info/shes-halltour2017
<公式サイト>
http://she-s.info/
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